1787147922157.jpg2007年、47歳の若さで亡くなった文筆家、哲学者の池田晶子さんの47のエッセイ。全てが「生死」について易しい言葉で綴られていること自体すごい。「考えずに流れてくるものを鵜呑みしている」「本質を考えようとしない」現代人に突き刺さる言葉が続く「考えさせられる」哲学エッセイだ。

「生死事大。大事な問題は決まっている。生死こそが、人間の最も本質的な問題だ」「年齢も経験も現在の状況も関係ない。生死することにおいて、人は完全に平等である。すなわち、生きているものは必ず死ぬ。癌だから死ぬのではない。生まれたから死ぬのである。癌も心不全も脳卒中も、死の条件であっても死の原因ではない。すべての人間の死因は生まれたことである。・・・・・・自ら考え、納得する人生でなけりゃ、しょうがないでしょうが」「精子と卵子が結合する確率は何十億分の一である。これは奇跡的な確率である。私の存在は奇跡的である。・・・・・・なぜ、その生命体が、この自分なのか。その生命体であるところの自分は、どのようにして存在したのか。これはどう考えても理解できない。なぜこんなものが存在しているのかわからない。だから、奇跡なのだ。・・・・・・生きることが奇跡なら、死ぬことだって奇跡である」「永遠的循環の中の、一回的人生。今生きているということ自体が奇跡的なことである」「人生の一回性、喜びも悲しみも一回きりの経験である。そういう経験の総体としての人生というものそれ自体が一回きりのものである」「『生と死』と分けて考えるところから、面倒が生じる。生がなければ死はなく、死がなければ生はない。言葉以前のこの存在を指して『存在』と言うことにしている。『人がなぜ生きるのか』と私に問う人がいる。私は、『存在するから』と答えるのを常にしている。なお『なぜ存在するのか』と問われたら、『さあねえ』と答えますね。よほど正直でしょ」・・・・・・

今の時代、闘病生活までブログで上げる人がいる。「この人何を勘違いしているのだろうと私は思った。なんで他人に見せることが優先されるのだろう。人は人生で一度しか死ねないのである。死ぬということは、人が本質的にものを考え始める絶好のチャンスなのである。人とは何か、自分とは何か、宇宙が有るとはどういうことか。それなのに、絶好のチャンスすら、こういう人は他人に自分を顕示することに浪費してしまうのである。・・・・・・(今で言えばイイネなど)この世代の『共感』らしい。大事な時に、大事なことを深く徹底的に語り合う友というのを、この世代の人々はしないのだろうか。まぁ要するに、そういうことを黙って独りで考えることができない人類の出現である」「我々は便利な通信機器のおかげで、言葉の力をすっかり見くびっているのである。言葉の力を侮ってはならない」・・・・・・

団塊の世代にも厳しい。「団塊の世代が還暦である」頃のエッセイだ。「あの世代の人の一般的特徴とは一言、『ものを考えない』、これに尽きると私は思う。ご本人たちのいわく『社会変革の理想に燃えた世代』。ウソをつけだな。社会批判とものを考えるということは全然違うこと。考えるというのは黙って一人で反省する、内省することをいうのである。『俺たちの死に方を若者に見せるのが、俺たちの務めだ』などと言うがどこまでも勘違い。死とは、それについて一人で考えるものであって、他人に見せるものではないのである。だって死ぬのは自分なんだから」・・・・・・

「アンチエイジでサルになる」――。「老いへの恐怖は裏返し、若さへの執着である。若さは快楽の源泉だからである。楽しむだけ楽しんだら人生に用はないとしたらサル、動物的生存である。快楽のために若さに執着し、中身は無内容のまま年老いたそのような人にこそ、『老醜』という形容がふさわしくはないか。存在と時間、時間の時熟。この味わい、この思索が何ともおいしいのである」「人生の一回性。老いるというこの一回限りの経験も貴重なものだと思えるはずではないか。健康の時の経験も、老いて病んだときの経験も。老いを拒絶し、思索も知らず、若さと健康の快楽にしがみつき続ける人間とは、早い話がサルである」「生きるとは加齢すること老いること以外の何ものでもない」・・・・・・。「お肌に出てきたシワやシミは、そっくり心の襞や翳だ。襞や翳は人生の味である。それこそが人生の味わいである。どうしてわざわざ心を若く保つ必要などあるだろう」・・・・・・

「現象をそのまま受け取り、次の現象に流されていく『ものを考えるということをしない』現代社会」――。「私には、本質的にしかものが考えられないという、どうしようもない癖がある」と言う池田晶子さん。今生きていたらまだ66歳、そう思ってしまう。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ