「人文科学と経営科学の交差点」をテーマに活動する著作家、パブリックスピーカーの山口周さんと、世界史データベースなどを展開するCOTEN代表取締役CEO深井龍之介さんの対談。
「古今東西、時代を通じて成功するリーダーには共通点がある。それは正確な現状認識ができているということ」――。そのためには「世界を理解するための見取り図」「自分の内部に『判断の基準』を持つこと」が大事だ。その「複数の視点を獲得することが人文知」であると言う。私たちが社会や自分たちを客観視、相対化する「メタ認知」が大事だと言う。生成AIの「正解」を求めてしまう現代社会では、幅広い知識や教養、哲学を持つべきだと言う。「オープンAIの初期の支援者のピーター・ティールも哲学科出身、ジョージ・ソロスも哲学の修士号、IBMの2代目社長、トーマス・ジョン・ワトソン・ジュニアも哲学科出身」、そして山口周さんも哲学科出身だ。正解が溢れるAI時代では、「問題を解決する能力よりも『問題を発見し、他者に提起する』能力の方が重要になっている」と言う。
この時代、「技術革新が、社会のゲームルールを変えると思っている(深井)」と言い、「古いルールの勝者であり続けることに固執するのではなく、技術が変えてしまった新しい環境に適合した『新しい倫理』をいち早く実装することが、これからの企業の生存戦略になる」「社会の技術や生産のあり方が変われば、規範もそれに合わせて変わるもの」と言う。
歴史的な視点に基づいて、世界や日本を考えると・・・・・・。「ナンバー1がナンバー2の戦略をマネたら負ける」「復古主義的な動きは衰退フェーズ」「変化を無視した成功体験の再現は失敗する」「衰退論が流行るのは絶頂期」「大国は『過剰拡大(軍事費など)』で衰退する」「組織や文明は内部分裂で滅びる」「既得権益の固定化が衰退を招く」・・・・・・。
日本の未来――。「『空気を読む』スキルは、世界で活かせる」「『魔改造』が日本の伝統」「ダブルスタンダードに耐え続けているのは日本だけ」と言う。確かにそうだ。それはダブルスタンダードというより「デュアルスタンダード」と松岡正剛さんは言ったと言う。仏法の「中観」をあげて、「主観にも客観にも偏らない、外側の世界と自分の内面を関連性で捉える、と言うのかな(深井)」と言っている。諸行無常ではなく、諸法実相、如実知見だと、私は思う。「矛盾を引き受け決着させるのが経営者の責任(深井)」「理性を信仰しすぎると間違える可能性が高い(山口)」と言うが、同時に「投資家や金融機関はもっと『意志』と『気概』を持って欲しい」とアメリカのベンチャーキャピタルのロマンティシズムとスピリッツと、日本の違いを指摘している。そして「変化に気づかない組織やエリートは退場し、新たな組織や個人にとって変わられる。現状や環境を理解できる『人文知』を持った人、エリートが求められている」と言っている。
「人文知は役に立たない」などと私は思った事は一度もない。役に立つとか立たないとかと思ったこともない。ベルクソンの「問題は正しく提起されたときに、それ自体が解決である」「浅きを去って深きに就くは丈夫の心なり(日蓮)」は、若い頃から大事にしてきた言葉である。
