「世界の経済・金融はどう変わったか」「ドル基軸通貨体制はどうなるのか」「日本経済はなぜ停滞し続けたのか」「円安はなぜ起きているのか」「賃金はなぜ上がらないのか」「円の暴落からのキャピタルフライトは起こるのか」「AIと外国人労働者は日本の中間層を破壊するのか」・・・・・・。世界と日本の経済・金融の現在地を、極めて丁寧に鋭く縦横無尽に語り合う。
「外国人にとって、"お買い得な国"の裏側」――。「『割高感』は円安のせいだけではない。安い日本だが、おそらく『賃金の違い』がある」「日本の停滞が続いたのは、① バッド・ラック(不運=金融危機、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍など) ②バッド・ポリシー(まずい政策) ③ バッド・マネジメント(良くない企業経営=内部留保・賃金抑制)」と言う。
「なぜ働けどラクにならないのか」――。「日本は生産性が低いと言うが誤解である(1998年から足元までで30%ほど改善)」「賃金を抑え、雇用を守り非正規雇用依存。定昇のみでベアを凍結」「ジョブ型雇用で賃金が上がるわけではない」「四半世紀にわたって、実質賃金が全く増えなかった」「2022年以降の世界インフレに対し、金利差が開き、円安インフレとなった」「生産性が上がっても賃金が上がらなかったので、その分、物価上昇が抑えられてきた」「日本企業は、メインバンク制が崩壊し、内部留保を積み上げた」「大企業も労働組合も実質ゼロベア・ノルムに侵されてきた」・・・・・・。
「トランプ政権で、世界経済はどう変わる?」――。「『合理的な損得』よりも『物語としての公正さ』を優先」「アメリカは生産性を向上させてきた貯金があるので大丈夫だが、ユーロ圏経済は低迷、ドイツも低迷」「ドイツはロシアからのエネルギー供給と中国という巨大なお得意様(車など)という経済基盤を同時に失った」「トランプ政権からEUに押し寄せる防衛費拡大の波」・・・・・・。トランプ関税をはじめまさにアメリカに振り回される世界経済だ。「『ドル高修正』は段階的と思われるが、トランプ政権の大幅切り下げも警戒の内」・・・・・・。
「為替ににじむ国家の迷走」――。「2022年以降、日銀は異次元緩和を続け、金利差は広がり急激に円安が進んだ」「実質賃金は3要素(労働生産性・労働分配率・交易条件)で決まるが、分配は少なく、圧倒的に貿易条件が悪化し、実質賃金の足かせになった」「金利差だけで円安を解釈するのではなく、『どうせ利上げできない』『日銀は結局動けない』という円金利にまつわる思惑が長期的な円売りをあおった」と言う。
そして今、「見えない増税(インフレ税)」が始まっているとし、これは「所得や貯蓄の少ない人ほど影響を強く受ける」「超円安によって家計が苦しむ」と問題を示す。また、「危機的な状況になると円が買われる」だったが、「今は海外純資産の半分以上が日本から海外への直接投資の結果だから、危機的ムードが高まったからといって、海外工場などを売却して円に戻すという話にはならない」と言う。そして「貿易収支が趨勢的に赤字(経常収支は黒字だが)に陥ったのは2012年以降。貿易収支の赤字定着で円は"別の通貨"になった」と言う。「円安傾向は2022年以前から始まっていた」「海外展開が逃げになっていなかったか」と指摘する。
「日本からお金が逃げていく?」――。「インフレと円安のスパイラルで、長期金利は急騰し、メガバンクは格下げされると、外貨資金の調達に困難をきたすこととなる」「先進国とみなされているからはい日本の長期金利は低いが、そうでないとなると、日本国債は安全資産とみなされなくなる(戦後のイギリスで起きたことが、今の日本で起きている?」・・・・・・。ハイパーインフレの可能性について語り合っている。インバウンド黒字で稼いでいるが、新NISAを含めた投資も海外ものに向かうし、「GAFAMに支配される『デジタル小作人』から日本は抜け出せるのか」「新たな円安要因の『外貨建て生命保険」の大量資金の海外流出問題を指摘する。
「AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?」――。問題は「収奪的なイノベーション」になるか、大多数に豊かさをもたらす「包摂的なイノベーション」か。今のアメリカは、一部の高所得者層に集中しているのは事実だ。
世界の経済・金融大きな構造変化に直面しているが、本書はその中で、「人間を豊かにするための経済」「生産性の向上に見合った実質賃金の引き上げが当たり前に行える社会の実現」「富を分け合う『包摂的な社会』」を根源的、包括的に示している。そして「そもそも政党や議会という仕組みは、近視眼的な判断や、一時的なブームによる軽率な意思決定を避けるために、人類が積み重ねてきた知恵が背景にあったと思われる」と途中で言っている。現在、世界の経済・金融、政治で何が起きているか。それを丁寧に剔抉、整理し、何を警戒し、何をすれば良いかを意欲的に示す説得力ある対談、力作だと感じた。今年はこれに加えてイラン戦争などがある。激動は増している。
