男が痴漢になる理由.jpg満員電車で日常的に痴漢が横行する日本。その汚名を返上し、誰もが安心して電車に乗れるようにするためには、「なぜ痴漢をするのか」「痴漢をすることで何を得ているのか」「どうすればやめられるか」を実態を把握して対策に乗り出すことが不可欠だという。

痴漢をする男性の多くは人間関係を苦手としている。「コミュニケーションが不得手で他者を尊重できない性質が、ストレスのはけ口を弱い者に求め、相手を征服、支配したいといった形で露呈するのが痴漢行為」だという。「平成28年中、東京で強姦は約140件、強制わいせつは約800件、痴漢は約1800件発生」と警視庁はレポートするが、数字に表われるのは氷山の一角。被害女性の9割近くが泣き寝入りをするというのが実態のようだ。

痴漢のリアルな実態は「四大卒で会社勤めをする働き盛りの既婚者男性」「痴漢は依存症。アルコール、ギャンブルと同じ」「痴漢を突き動かしているのは性欲だけではない。多くは勃起していない」「仕事、人間関係などのストレスがきっかけ、ストレス対処が下手」「痴漢はいじめに似て、女性がいやがることをし、追い詰め、傷つけ、征服し、優越感をもつ、男尊女卑の価値観がある」「"痴漢をしてもOKの女がいる"という歪み」「スリルとリスクがともなう"ゲーム"性を求める」「痴漢は"派手めの女性、勝ち気そう、頭がよく仕事ができそうな、毅然とした女性"を敬遠する。"逆らわない、黙っていそう、幼い感じの女性"をターゲットにする」「厳しく取り締まり、迅速に逮捕する有効な手段を社会全体で考えるべき」「逮捕されても"実刑にならない""示談ですむ"と再犯が多い」「痴漢は再犯率がずば抜けて高い」「"失敗した""家族等に迷惑をかけた"と反省しても被害者に申し訳ないと思い至っていない」「集中的治療プログラムの必要性」・・・・・・。再発防止の治療計画等を具体的に示している。


未来の年表2.jpg前著「未来の年表」は、少子高齢社会にあって西暦何年に何が起きるかを「人口減少カレンダー」を作成して俯瞰した。統計は、データのとり方によって異なるものだが、前提も含めて相当綿密に分析してカレンダーに仕上げる力業に感心した。今回は違う。人口減少・少子高齢化が人々の暮らしにどのような形で降りかかってくるかを、生活に即して明らかにしている。そして、あわせて「今からでも始められる対策」を提示した。

焦点は、「高齢者の高齢化」「独り暮らしの貧しい高齢者」の急増、女性高齢者の増加だ。しかも年間出生数は100万人を切ったのに比し、死亡数は134万人(2017年)。2040年頃には167万人に及ぶ予測だという。「あなたの住まいで起きること(家庭内事故の増大、大都市のマンションの廃墟化・スラム化)」「あなたの家族に起きること(8050問題、貧乏定年)」「あなたの仕事で起きること(中小企業の後継者不足、親が亡くなると地方銀行がなくなる)」「あなたの暮らしに起きること(人手不足、商品が届かなくなる、灯油難民)」「女性に起きること(定年女子が"再就職難民"に、高齢女性の万引き問題)」・・・・・・。

戦略的にどう縮むか、そして人口減少・少子高齢社会、AI・IoT・BT・ロボットの急進展、エネルギー・地球環境問題の3つの構造的変化にどう立ち向かうか。


黙過.jpgきわめてパワフルな力作。ミステリー性も面白い。テーマはしっかりして、問題提起が読後も残る。臓器移植、積極的安楽死、動物の生命と人間の生命の差異、異種移植というこれからの重大問題・・・・・・。要するに生命倫理をどう考えるか、それをサスペンスとして人間の究極の愛と生命の問題として問いかける。

4篇と最後の一篇で成る。別々と思わせて4篇が最後の「究極の選択」に合流し、どんでん返しとなる。構成も刺激的だ。

第一篇の「優先順位」は臓器移植問題。意識不明の患者が病室から消えるという衝撃的な謎。次の「詐病」は厚労省事務次官が、"パーキンソン病"を演ずる。消極的安楽死ではなく、積極的安楽死問題が提起される。第三篇の「命の天秤」。舞台は感染対策をしっかりやっている養豚場。ところがある日突然、母豚の胎内から子豚が消えてしまう。動物愛護団体と種による命の選別問題。そして次は「不正疑惑」。真面目な学術調査官が「人間として赦されないことでした」として自殺に至る謎。そして最後の「究極の選択」。「異種移植は人類史上、最も罪深く、最も希望を孕んだ医療だろう」「命の倫理とは一体何だろう」と、真実の追求は、生命倫理、医学、家族愛等々の根源的問題へと収斂していく。


生命科学の静かなる革命  福岡伸一著.jpg「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」の福岡伸一さんが、ロックフェラー大学のノーベル賞受賞者たちと「生命科学」の最先端について対談する。そして最近の「社会的利益を実現し得る学問」への偏重に警鐘を鳴らす。そして、「生命科学の本質に立ち戻れ」「生命科学の本質は、生命とはいかなるものか、生命とはいかにして生命たりえているのか、そのHOWを解き明かす営みにあるはずだ」という。対談等のなかで、黙々と気の遠くなるような実験・研究を繰り返す研究者の日々が浮き彫りにされ、その謙虚、自然体、正確へひたむきな追求作業と科学の限界ギリギリを見つめて格闘する真摯な態度に感銘する。

対談は印象深い。「ロックフェラー大学という『科学村』の強み」「誰もが公正に扱われるチームづくり」「将来のリーダーを見つけ出す嗅覚」「科学における最大の障害は無知ではなく、知識による錯覚」「どれだけ目立って、インパクトを与えられるか」など、いずれも傑出した人間の境地を感じさせる。

テーマは「生命とは何か」「生命科学は何を解明してきたのか?」だ。生命科学史上、20世紀最大の発見はジェームズ・ワトソン、フランシス・クリークのWCによる「DNAの二重らせん構造の解明(二重とは相補性による情報の担保)」。「遺伝子の本体はDNAである」としてその端緒を切り開いたオズワルド・エイブリー。そして脳がどのように世界をコード化しているかという大発見に至ったデイビッド・ヒューベルとトーステン・ヴィーゼル(HW)。

「奔放で真摯な研究姿勢は、今の私の身体に深く染みついている」と福岡さんは語る。そしてGP2(グリコプロテイン2型)遺伝子を追い、ついに生命を動的平衡と捉えるに至った戦いの歴史を語る。膵臓、消化酵素、情報の解体たる消化、消化管は生命の最前線・・・・・・。じつに興味深い。


外国人労働者をどう受け入れるか.jpg「『安いの労働力』から『戦力』へ」が副題。2016年、日本で働く外国人の数が初めて100万人を超え108万人となった。最も多いのが日系人や日本人の配偶者のいる定住する許可を得ている外国人で41万人(38.1%)、続いて留学生(就労目的で来日)で24万人(22.1%)、次に技能実習生21万人(19.5%)、そして専門的・技術的分野の在留資格をもつ高度人材19万人(18.5%)だ。いずれも厳しい生活・労働環境だが、とくに技能実習生、そのなかでも繊維・被服関係や農業・漁業関係では不正行為が頻発した。

日本は人手不足時代。低賃金・重労働の業種では外国人の労働力なくしては日本の産業は成り立たない。しかし、「使い捨て」「人権無視」は断ち切ることが大切だ。もう「安くて都合のいい労働力としてアジアの人材を使い捨てる時代は終わった」「外国人を日本人と区別することなく『労働者』として処遇していくこと」「"実習生""留学生"として覆い隠されてきた建前をとり、単純労働者が"労働者"として認められること」、さらには日本に住み、働き、税金を納め、家族を養って、二世も住み続けられる日本での「共生社会」の時代が来るという現実を直視することだ。

この数年で日本の体制は大きく変わった。建設関係で直接、仕組みづくりに携わったが、今が改革の時だ。「使い捨て」「人権無視」でなく、「共存」「共生」する日本の社会をめざして。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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