歴史と戦争  半藤一利著.jpg半藤さんの厖大な著書のなかから、重要な言葉・発言・対談・箴言を選び出してまとめた幕末以降の日本の著作集。半藤さんの著書をかなり読んできた私にとっても、改めてその深さと切れ味に感動した。ビシバシと短い発言が項目別に続くから、よりいっそう鋭角的に心に染み入る。

「幕末・維新・明治をながめて(勝海舟の幕末、海陸軍はかくて陸海軍になった・・・)」、「大正・昭和前期を見つめて("生命線"というスローガン、昭和3年荷風さんはすでに乱世と観た、新聞は"沈黙を余儀なくされた"わけでなく、2・26事件後の出版弾圧、陸軍が豪語する"中国一撃論"、"大政翼賛会""ぜいたくは敵だ"に荷風がいわく、16年1月の示達"戦陣訓"、16年春の石原莞爾の予言、山本五十六の無念)」、「戦争の時代を生きて(ガ島で日本兵は何を見たか、学徒出陣、インパール作戦とは、神風特攻隊について天皇は、東京大空襲の夜は北風が強かった、大田実少将と沖縄、"最後の一兵まで"は本気だった、シベリア抑留のはじまりは、なぜ日本人は"終戦"と呼んだのか、"一億総懺悔"は"一億一心"の裏返し、クラウゼヴィッツ「戦争論」の誤読、20年8月の石原莞爾、昭和天皇とマッカーサー)」、「戦後を歩んで("引き揚げ"の名のもとに、ルメイへの勲章、A級戦犯合祀問題、戦後日本の国家機軸は平和憲法だった、漱石と"あきらめ"が戦争を招く)」、「じっさい見たこと、聞いたこと」・・・・・・。

エリートの「無責任」など、考えることは多い。


教養としてのテクノロジー.jpg副題はAI、仮想通貨、ブロックチェーン。AI・IoT・BT(バイオテクノロジー)、ロボット等、テクノロジーの急速度の進展は、社会のあらゆる構造を激変させている。

伊藤穰一さんはMITメディアラボ所長。「AI等で社会がこうなる」などといっているのではない。変化の波をつなげ、新しいムーブメントを起こせるのではないかと動いている。しかも、AI等テクノロジーの進展が何を巻き起こしていくのか、提起される問題を「人間」「生命」「倫理」の次元から問いかけている。実践家の指摘はきわめて深い説得力をもつ。

「AIは労働をどう変えるのか」「アルゴリズムが社会を良くするわけではない」「『働く』とは何か」「あなたの労働に"人生の意味"はあるか」「新しいセンシビリティが必要だ」「仮想通貨は国家をどう変えるのか」「仮想通貨で国家から独立する」「投資家が資金調達手法ICOに熱を上げる理由」「仮想通貨をガバナンスするのは誰か」「ブロックチェーンは資本主義をどう変えるのか」「仮想通貨と自然通貨」「人間はどう変わるか」「人間の拡張と新しい倫理や美学の探究」「自動運転と倫理・責任の問題」「教育はどう変わるか」「ロボットを育てても意味がない」「アンスクーリングのムーブメント」「日本人はどう変わるべきか」「日本の"意思決定の遅さ""空気に支配される""ダブルスタンダード"の問題」「日本はムーブメントを起こせるのか」「パラダイムシフトは文化から生まれる」・・・・・・。

動体視力の確かさが、ストレートに伝わってくる。


宇喜多の楽土  木下昌輝著.jpg宇喜多直家の嫡子・宇喜多八郎秀家。仕物(暗殺)で名をはせ謀略の限りを尽くした梟雄・直家に比べ、育ちも良いが、凡庸ではない。時は戦国、西には毛利、東には秀吉・家康等に挟まれて苦難の連続。幼くして天正9年(1581年)に父・直家が病死、翌年には本能寺の変、紀州討伐、小田原征伐、朝鮮遠征、伏見城や杭瀬川の戦い、そして関ケ原、逃亡して薩摩、50年にもわたった八丈島。秀吉から寵愛を受けるが、晩年の秀吉は常軌を逸していたし、その後の家康の知謀・圧力はすさまじい。しかも「宛行」をめぐっての家中の騒動も激しい。

「強き者、弱き者にかかわらず、健やかに過ごせる。そんな楽土をつくる。民のために干拓する」――。父・直家の心を真っすぐに受け、秀家は濁流のなか懸命に走る。家康はいう。「わしは流されただけにすぎませぬ。流れに逆らった者はことごとく滅びます」「才覚ゆえではない。流れにだれよりも従順だった」――。秀家は「私は内府殿とはちがいます。この生き方は変えられませぬ」「父の直家もまた、流れに抗いつづけた人生だったではないか。その最たるものが、この干拓地だ」「宇喜多の領国のために戦う。豊臣家や秀頼を滅ぼさんとする流れに、全力で抗う」と誓う。

激流のなかで秀家は敗北の将でもあり、時流に抗い続けた人生に見える。しかし、策に溺れず情をもつ丈夫の生き方からか、いざ逆流の極みとなった時に、必ず守る人が現われるのだ。とくに正室となった前田利家の娘・豪姫の存在はゆるぎない。心の柱だ。


長く高い壁.png日中戦争の最中の1938年。当代きっての流行探偵作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京に派遣されていたが、検閲班長の川津中尉とともに、前線である万里の長城への移動を命ぜられる。その張飛嶺で待ち受けていたのは、第一分隊10名が全員死亡するという事件だった。

二人は、事件解明に直ちに着手し、関係者を聴聞する。「匪賊からの襲撃か」「分隊内での恨みつらみ、内輪揉めか」・・・・・・。そこには軍人のかかえる嘘と体裁、規律のゆるみ、親を殺され妻を辱められ焼き尽くされた中国人の憎悪があった。そしてたどり着いたのは「そもそもこの戦争には、大義がないのではないか」「戦いながら大義を探しているのではないか」「要するに日本は、わけのわからない、戦いの理由がわからない戦争をしている。そんな戦争の中で日本軍は軍隊としての正体をなくし、謀略がすっかり習い性になってしまった」という根源的なやり切れない闇だ。その闇と嘘の隠蔽の重ね役として、小柳は従軍作家として派遣されたことを悲しみのなかで思うのだ。感情を押し殺して・・・・・・。


子どもの脳を傷つける親たち.jpg

子どもの脳は、生まれてからずっと成長・発達途上にあり、我々が想像している以上に柔らかく、傷つきやすい。とりわけ最も身近で安全な場所であるはずの親から「攻撃」を受けると、深いダメージを受けてしまう。マルトリートメント(不適切な養育)が、外から見える傷はなくとも子どもの脳を"物理的"に傷つけ、変形させる。言葉のDVはより脳に大きなダメージを与えるという。

友田さんは小児精神科医として、子どもの発達に関する臨床研究を続け、「日常のなかにも存在する不適切な養育」「マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響」を示し、「子どもの脳がもつ回復力を信じ」て専門的な療法を提示する。親も子どもも専門的で粘り強い治療が大切となる。そして、「健やかな発育に必要な愛着形成」「マルトリートメントからの脱却」の新たな試みを示す。

私たちの子どもの頃は、もっとひどい体罰等が行われていたと思われるが、「愛着」という観点から見ると、今の親が孤立し、ストレスをため、子どもを追い込んでいること、また子どものレジリエンスを伸ばせないでいることも理解できる。本書での警鐘を真正面から受け止めたい。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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