無電柱革命.jpg

「電柱林立国家」「電線病」の日本を変え、街の景観を一新させ、安全性を高める。景観と防災、「安全、安心、広々感、美しさ」だ。


電柱の総数は1987年に3007万本、そして2012年には3552万本。無電柱化を進めてきたにもかかわらず、毎年7万本が新設されている。ロンドン、パリは100%、ベルリン99%、ニューヨーク83%。日本で進んでいる東京は7%だ。無電柱化が進んでいるのに、電線数が多いと感ずるのは、国道や都道で地中化が進み、より身近な市区町村道が進んでいないからだ。


課題は明確だ。「どこで無電柱化工事をするかの住民の協力、事業者、自治体との合意形成の向上」「安全性・美観・利便性が必要という国民の意識改革(工事への理解が不可欠)」「費用負担を下げるための努力」「事業者の調整、工事推進への配慮」「直埋、共同溝など既存ストックの活用、地域の条件により柔軟に対応(金沢方式など)」――。


より根本的にいえば「生産効率追求型社会を、生活のアメニティ(快適さやそれをもたらす環境)重視社会へと重心移動させる」との指摘は正しい。



はじめての福島学.jpg
「"福島問題への絡みにくさ"が増大し、大きな壁が私たちの前にそびえ立ち、固定化されたようになってしまっている」「要は思考停止している」――。それは「福島問題の政治化」「福島問題のステレオタイプ&スティグマ化」「福島問題の科学化」にある。"過剰反応"する人と"無視"する人の増えるなかで、開沼さんは「過剰反応でも無視でもなく、アップデートされたデータ・知識を取り入れながら、"適切な反応"をしていくこと」「まず"普通の人"が福島の問題を考えるためのベースを獲得してもらうこと」が重要だとし、福島の実態はこうなっているというデータを提供する。それが丁寧に冷静に語られているだけに、イメージと実態のズレがいかに大きく、また固定化されているか、鮮烈に浮き彫りにされる。「どこのフクシマの話ですか、データを見てから言いましょう」ということだ。それはまた、今、福島に、そして日本に大切なことは何かを鋭く示している。俗流フクシマ論は、そのまま思考停止と不毛の俗流日本社会論でもある。


末尾に、「福島を知るための25の数字(答え)」と「福島へのありがた迷惑12箇条」がまとめられている。痛烈で、本書を頭の中で2度読むような思いにかられる。


日本経済を「見通す」力.jpg

日本経済は今、世界経済は今、日本企業は今、アベノミクスは今――どういう状況にあり、どの段階にあり、どう動いているか。そして何を踏まえ、どこへ向かうべきか。この広範囲の課題を、じつにわかり易く解読している。2014年秋に慶應丸の内シティキャンパスで行った5回の講義をまとめたもの。


まずは、「アベノミクスはステージⅡに入った」「世界には長期政権への期待感がある」「アベノミクスのチェックを怠るな」との基本認識がある。そして5回の講義のテーマは「アベノミクスの衝撃を見通す」「経済再生と財政再建を見通す」「変わる日本の産業構造を見通す」「TPPとグローバル経済を見通す」「日本経済を見通すための政策論戦」だ。世界経済は動いている。それを凝視し、生き残りをかけて戦略的に対応することが重要だが、それには経済・社会全般への基礎教養が不可欠だ。しかも、本書は現場がよく踏まえられており、「これから」を考えさせてくれる。


稼げる観光.jpg

「30人31脚走全国大会」「クリスマスにチキンを食べようキャンペーン」などを手がけ、「葉っぱビジネス」の徳島県上勝町を成功に導き、さらに「いろどりコミュニティ」を提案した鈴木さん。参詣旅、ネット誘導の旅をはじめ、観光を観康、観口、観好、観交、観興、観購、観攻、観講、観耕、観工、観巧などの切り口から「稼げる観光」を説く。


「この町には観光資源なんか何もない」などというが、本書を読めば、どこにも資源はある。地方が生き残る観光を育てる具体策に勇気づけられるはずだ。副題に「地方が生き残り潤うための知恵」とある。


従属国家論.jpg

「日米戦後史の欺瞞」と副題にある。戦後の日本の基本構造はいつ、どのようにして作られ、そして今日まで続いているのか。そこにある日本と米国との価値観の違いと相克と軋轢と思惑を描き出す。


「戦後レジームの基本は、平和憲法と日米安保体制であり、そのもとでの経済成長路線だ。そして、この基本構造を生み出したのは、占領政策におけるアメリカであり、それを固定化したのはサンフランシスコ講和条約だ」「この"アメリカ的価値"へのほとんど無意識の従属こそが、"戦後レジーム"を根底で支えるものだった」「戦後日本の公式的価値とは何か。あの戦争を侵略戦争と見なし、敗戦を、連合国による日本の軍国主義からの解放と見る。そして占領政策をへて、日本は民主国家、平和国家へと再生したという歴史観・・・・・・。民主主義と平和主義こそが戦後日本が誇りとすべき価値であり、それにまさる価値は存在しない」「そのアメリカ的価値を普遍的なものと受け入れたのが戦後日本の歴史的および思想的構造だった」・・・・・・。


佐伯さんは「非対称的な二重構造」が「無意識の自発的従属」をもたらすことを示し、「何よりもまず、われわれを就縛している戦後レジームの構造を知ること」が大事であるという。根底には「西洋的合理主義」と「日本的精神」の相克があり、両価値に引き裂かれる日本人の姿が、浮き彫りにされる。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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