2日、2021年度予算案が衆院本会議で可決、参院に送付されました。一般会計の総額は106兆6097億円。コロナ克服へ様々な予算を計上、生活や企業・事業主を守るとともに、コロナ禍で落ち込む景気の底上げをはかります。歳入は税収が減り、57兆4480億円にとどまっています。新規国債の発行額は約3割増の43兆5970億円で、財政運営は厳しい状況となります。
この予算では新型コロナウイルスへの対策を中心にして、コロナ対策の予備費として5兆円を計上。もっとも多い社会保障費は35兆8421億円に達しています。また、防災・減災に重要な公共事業費は6兆695億円、防衛費は5兆3235億円になります。コロナ対策に万全を期すとともに、国民生活を守り、防災・減災、デジタル化や脱炭素、不妊治療、公立小学校の35人学級への取り組みを加速させるものとなっています。
憲法の規定により、予算案の年度内成立が確実となりましたが、新型コロナウイルス感染症に対処するためにも予算案の速やかな成立と、迅速かつ着実な執行が大事です。
2021年度予算案の衆院通過を受け、菅義偉首相の表敬を受けました。
「日本は1995年をターニングポイントして世界から劣後・衰退している」「日本再興のためには、日本とは、日本人とは何者であるかを、しっかり認識する所から始めよう。リアリズムを取り戻そう」「それには、日本国土の自然・地理的条件、そこから生まれた日本特有の歴史観、死生観、感覚と思考形態を『国土学』から解き明かそう」「浮き彫りにされるのは、大量の紛争死を繰り返し経験してきたユーラシア人の『紛争死史観』と、紛争ではなく地震・津波・風水害等の大災害で命を失ってきた日本人の『災害死史観』の根源的ともいえる大きな違いだ」と、広範な具体例を引きつつ毅然と論述する。副題は「紛争死史観と災害死史観の視点から」で、我々の世代が共有する「後の世代にいい日本を残したい。日本再興」の願いがある。
「ユーラシアの『紛争死史観』と日本の『災害死史観』」――。「日本の国土条件の9の特徴」「繰り返し起こる集中的災害」は、いかに日本が災害列島であるかを鮮明にする。とくに日本の国歌「君が代」と欧米の"戦闘的な国歌"の違い、都市城壁・秩序感覚・宗教観と虐殺の規模、死の受容の仕方。さらには「駅伝」「土地所有概念」など日本と欧米の相違が明示される。
「世界と異なる日本人の感覚と思考」――。「顔見知り仲間の民族」「ドアに見る安全保障概念」「小集落民と峠(結界)」「自然災害のため長期的戦略思考にならない」「我々の思考欠陥は、仕組み・ルール・やり方を変えられないこと」等を指摘する。とくに「情報収集は死活問題であるユーラシア人に比べ、メディア情報へ依存する日本人」「ユーラシア人の"積み重なる過去"と日本人の"流される過去"」が語られる。「言語感覚と日本語の乱れ」に論及、「言葉の大切さへの理解は、グローバル人材として絶対的な条件」「後継者の条件とは、大きなビジョンを持って、人を奮い立たせられるか、そのための言葉を持っているかということ(鈴木貴子エステー社長)」等をあげる。言葉が軽くなっている政治家の心すべきことだ。
「国土学が問う現代日本の危機と再出発の道」――。「1995年というターニングポイント」「誤りの財政破綻論」に触れ、「リアリズムを失った時に国は滅ぶ」ことを例示する。
世界のなかで生き抜くためには、「思考が流され」「長期的戦略思考ができない」「ルールを変えづらい」「情緒的で科学的思考をすぐ放棄する」等の日本人の弱点をよく見詰めて克服し、自然と人間の共生、平和思考、駅伝等の結束の力をもつ日本人、異文化を取り込む、吸収し応用する力をもつ日本人の力を、今こそ鍛え、発揮しようという声が本書から聞こえる。日本再興へ。大変分かりやすいが、骨太の優れた著作。
2月28日、東京北区のUR神谷掘公園ハイツに備蓄倉庫が完成。岡本みつなり衆院議員、古田しのぶ区議会議員らと視察しました。
この地域は北区のハザードマップによると、水害時に最大3階下の5メートルまで浸水の危険性があります。この倉庫は12階につくったもので、非常用電源、赤ちゃんのオムツ、マスク、体温計、タオルなど災害時に必要な多くのものを収納することができます。
一昨年10月の東日本豪雨では、荒川、隅田川の水位が大変上がって緊迫した状況でした。私は「集会所や防災倉庫の多くが1階にあるため、浸水時には使えなくなる。ハザードマップの水位の上に集会所や防災倉庫をできるだけつくる体制を」とURや都営団地に提唱してきました。これを受けての第一歩が、今回のハザードマップの水位の上につくった防災倉庫です。
これをきっかけに、災害・浸水に備えていく公営住宅にするようさらに頑張ります。
両親が弟を溺愛し、母の連れ子である自分には食べものを満足にくれず、殴られ続けた女性・三島貴瑚。その義父が介護となれば全ての世話を押しつけられ「こいつが病気になればよかった。こいつが死ねばいいのに・・・・・・!」と母から罵られた貴瑚。その地獄から救い出してくれた親友の牧岡美晴とアンさん(岡田安吾)。抜け出して大分県の小さな海辺の町に来た貴瑚は、母に虐待され言葉まで失った「ムシ」と呼ばれていた少年・愛(いとし)と出会う。虐待され、凄絶な辛い過去を背負い、愛された記憶もない二人の魂は邂逅し共鳴していく。
生きることが苦しい貴瑚らの心に沈潜する「奥底の寂しさ」が、息苦しいほどに伝わってくる。そこに手を差し延べるアンさんや美晴の力、一條の光なくして、人は生きていけないことが追い込まれるように描写される。「魂の番(つがい)って知ってる? ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも、絶対いるんだ。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守ってあげる」――。アンさんが貴瑚に、貴瑚が言葉がしゃべれないゆえに52と呼ぶ愛に「魂の番」を語るのだ。
52ヘルツのクジラ。普通のクジラと声の高さ、周波数が全く違う52ヘルツで鳴くクジラ(普通は10~39ヘルツだという)。世界で一頭だけの最も孤独なクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは、存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。「本当はたくさんの仲間がいるのに、何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ、孤独だろう」・・・・・・。