choon3.jpg禁門の変の後、幕府は長州残兵隊を追って捕縛、斬殺を続け、エゲレスなど四国連合艦隊は長州を攻撃。次第に「士民の気分を長州への同情、幕府への反感」へと変化させていく。幕府が次第に崩壊していくことを悟った弥一は、薩摩藩の御用商人・満井屋雅右衛門と面会し、富山の薬売りによる清国との直接交易を画策する。満井屋と清国との直接の干し昆布交易だ。「いまの倍の唐薬種が手に入れば、富山の薬は日本の7割を占めることができる」との戦略だ。懸命に工作。川上家の家訓「苦楽が合わさって、ひとつの人生になる」「人の幸不幸にも消長がある。それゆえに何事も時が至るのを静かに焦らずに待て」を思い、「一生涯見ていてあげる。安心していなさい」と、枕崎で月の声を聞く。

長州征伐に加わるように命じられた各藩も本音は迷惑で、なかなか腰を上げず、「禁門の変も会津と長州の喧嘩じゃないか」という声もあった。そんななか水戸の天狗党の乱で、三百五十人の尊王攘夷派の浪士が斬首され、「処罰のやり方がひどい。降伏してる者を」の声が上がるなど、幕府の威光は落ちてゆく。「一橋公がいつ将軍後見職を投げ出すかわからないのと同じく、各藩主も佐幕、勤皇、開国、鎖国という旗印をいつ変節させるかわからない」、日本中が右往左往している状況になる。

長州征討軍の引き揚げ、新撰組の台頭、朝廷の勤皇派と反勤皇派の暗闘・・・・・・。そして将軍家茂の死、慶喜が15代将軍に。しかし公武合体、攘夷思想、慶喜を信任する孝明天皇が突然崩御する。「これで何もかもがひっくり返る、と私は思いました」・・・・・・

大政奉還。「慶喜の大博打」ではある。「薩摩人は理では動かない」「まず朝廷を仰ぐ新政府を樹立して、この国の政体を正しい大義に復し、有力諸藩合議による政事で難局を乗り越えよう。これが安政のころからの倒幕論でございましょう。しかし、西大小(西郷、大久保、小松)の腹の内はそうではない。彼らにとっての勤皇は、徳川幕府をつぶすための方便なのです」・・・・・・

慶応413日、鳥羽伏見の戦いが起きる。江戸城無血開城、彰義隊の乱、白河の戦い、長岡の戦い、奥羽越列藩同盟、会津戦争、箱館戦争・・・・・・。明治改元、そして版籍奉還へ。「いったい誰が、この干し昆布を中心とした密貿易によって得た金子が徳川幕府を倒すことになると想像しただろうか」「富山藩がなくなれば、反魂丹役所も消えていくことになる。富山藩が富山県になろうとも、売薬は県の最重要事業であることは変わりはありません。売薬業に関わる者たちの数も四千人を超えようとしております」――。

「越中三人衆」――「それは私どものことでございますか」「そうだ。弥一と長吉と才児だ。あの政変の時代に、町人でありながら京、伏見、大阪、兵庫、摂津と奔走して、薩摩藩に情勢を伝達し続けて、禁裏では『薬隊』を編成して、周辺の町人たちを流れ弾から救った功労者」と富山藩反魂丹役所の緒方喜重郎は言う。

新しい時代、近代化が始まろうとしていた。 


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青空が広がり強い日差しとなった4月27日、地元最大の行事、赤羽馬鹿祭りが開催され、今年も多くの人が集いました。パレードも盛大。勢いのある交流ができ、街に元気が広がりました。役員、ボランティアの皆様に心から感謝です。

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王子では公明党の街頭演説。地元北区の大松あきら都議会議員が力強く演説。竹谷とし子代表代行が駆けつけてくれました。多くの人が集い、足を止めて聞い入ってくださり、本当によかった。ありがとうございます。

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seisyoku.jpgまずこの本は誰が語っているのかがわからないと一歩も進めない。「私がヒトを担当するのはニ回目ですが、オス個体は初めてです」「ヒトって本当に、これまで担当してきた中でも珍しい種です」「尚成という個体の担当になって」――。この本は尚成というヒトの個体に宿る○○目線の突き放した人間観察記ということになる。

(生殖器)が担当した尚成は同性愛個体であり、共同体との違和感を持ち続けていた。そのうち「同性愛個体を笑ったり気持ち悪かったりするのは"しっくり"くることなのだとなんとな~くの空気が読めるようになり、自分は同性愛個体であるという自覚と、同性愛個体は嫌悪されるべき存在であるという納得が、たったひとつの肉体の中で、何の矛盾もなく、両立していたのです」と語る。それが共同体内で生存していく上で必要不可欠だったのだ。しかしその後、故郷を離れて、大学に行き、就職をして暮らすうちに本当の"しっくり"を集めていくことになる。

共同体への違和感、「絶対にバレてはいけない」はどこから来るのか。それは「学校、家庭、企業、地域、社会、国、世界――どの共同体も、崩壊や縮小を目指して活動していない」と言うことから来る。そこで「神を設定していないヒトの生息地では、共同体が目指すものも阻害する個体は"悪"とみなされるからです。その共同体から追放される恐れがあるからです」。周りと違うというそれ自体を恐れるより共同体を阻害する個体として「認定されること」「追放されること」を恐れていたということだ。

(生殖器)は、SDGsについても思うのだ。「完全に環境破壊の黒幕であるヒトが突然、"地球のために、できること"とか言い始めたのは、自分たちが快適に生息できることばっかり、ヒト主体の目標だった」と。そして「ヒトが絶滅さえしてくれれば、ほとんどの目標は達成される」と。「(マットを運ぶ)手は添えて、だけど力は込めず。これが、今の尚成の"しっくり"です」・・・・・・

そして今の「尚成にとって職場は、拡大、発展、成長の文脈から金銭を吸い上げてくれる媒介であり、別の仕組みの星であり、出稼ぎ先である」「均衡、維持、拡大、発展、成長のために自分を封殺してきた共同体に、貢献なんてしたくない」「拡大、発展、成長で動いている社会をサバイブするために、身をつけた技が、"手は添えて、だけど力は込めず"なのだ」――。

尚成は同僚の女性・樹の「子どもが欲しい?」との相談を受けたり、後輩の颯から「同性婚実現のために活動するNPOに行く」との話を聞いたりする。「同性愛個体の生産性」を語る国会議員の発言を問題視し自分自身の生きる意味を自問自答する。「多様性の時代」と安易に語ることにも複雑な感情がこみ上げる。「正直、このまま同性婚なんて実現してくれるなって思う自分もいる。その方がいっそ丸ごと諦められて、精神的には楽だ」「同性婚が実現しても、絶対に口外できない人とかどうしたってパートナーと出会えなかった当事者からすれば我慢の度合いが強まるだけ。制度が整っていくって事は、当事者間でも格差が生まれる」「誰にも言えない状況で、世間から隠れ続けて生きていたら、自分を差し置いて勝手に変わっていく社会にイラつくでしょうし、人類滅亡しろって思ってたかもしれません、俺も」「生殖医療が発展し、体外発生が可能になれば、異性愛個体にできて同性愛個体できないことは一つもなくなる」など、頭の中はぐるぐる回る。

そして、「異性愛個体から無意識的な特権意識が引き剥がされる未来に最速の体感でたどり着くべく、お菓子作りとダイエットを繰り返すことこそが、至上の幸福である個体の歴史、一個体分くらい残しておくべきですよ、きっと」とつぶやいている。違和感の正体に迫る令和の書。


choon2.jpgハリス来航以来、幕府は突然に朝廷の勅許を得ようと動くが、「幕府には天下を治める自信も実力もないのだ」と、全国の大名たちに思わせる結果となってしまう。「それに乗じて、とりわけ西国の神社の宮司や神官や尊皇派の国学者や水戸の学問に染まった武士や煽動者たちが活動を始めて、朝廷を擁する京で遊説を繰り広げたのでございます」・・・・・・。将軍継嗣問題は紀州派の勝利となり、井伊直弼は大鉈を振るい始め、安政の大獄となる。

お登勢を妻に迎え、薬売りとして一本立ちした弥一は、薬種問屋「高麗屋」の主・金兵衛から、京でニ、三年暮らして経験をさらに積むように言われる。安政から万延に変わる直前の33日、桜田門外の変が起きる。彦根藩は水戸藩に復讐しようとする。しかし尊王攘夷の勢いは増す。一方で、「公武合体 開国策」「和宮降嫁」が進む。そんななか島津久光が兵を率いて上洛し、天皇を奉じて幕府と対決するとの噂が流れ、京は騒然としていた。

「西国の激派の間では、いつの間にか尊王という言葉が勤皇に変わってたんだ。尊王は帝と朝廷を尊ぶことで、心の有り様ですが、勤皇は天皇に仕えることになり、幕府には勤めないという一種の反幕宣言になる。行き着くところは倒幕でございましょう」「久光様には、倒幕等という考えは毛頭ない」「薩摩藩をお取りつぶしにさせてはならない。藩士たちの軽挙妄動を未然に阻止するため、どうしたらいいか」・・・・・・。弥一、高麗屋の跡取りの半兵衛、京油小路の老舗薬種屋「一貫堂」に移った長吉、才児らは薩摩藩御製薬掛目付であった旧知の園田弥之助らと連携をとって情報収集をする。「時機はまだまだ熟していない。なんとしても、薩摩の過激派武士にことを起こさせてはならない」・・・・・・

勤皇攘夷の嵐はますます吹き荒れ、寺田屋事件、幕府の綻び、生麦事件、馬関砲撃、薩英戦争、八月十八日の政変となる。「勤皇攘夷派の諸藩士が去り、王政復古派の公卿が去った京には、一気に公武合体の機運が漲り、倒幕派の勢力は京から一掃されたのでございます」・・・・・・

「長州激派の御所に火をつけ帝を長州へ連れ去る。一橋公と会津侯を殺す」との計画に驚愕した会津藩、桑名藩そして新撰組は「65日に三条木屋町の旅籠『池田屋』で、首謀者たちが集まる」ことを突き止め襲撃。池田屋事件だ。そして禁門の変。「薩摩藩には恩がある。我々にはどんなことをしても薩摩藩経由の唐薬種が必要だ。尊王攘夷、佐幕開国。そんなことはどうでもいい。・・・・・・全国津々浦々で何十万、いや何百万もの人々が、富山の薬を待ってくれている。富山の薬と、『先用後利』という商いの方法はニ百年近く、この日本を支えてきたのだ。その富山の薬を支えてくれたのが薩摩藩だ」・・・・・・。「京の大火は下京のほとんどを焼き尽くしました」・・・・・・

動乱の京都を命をかけて走る富山の「薬隊」。火の粉の中を右往左往、逃げる庶民の姿は生々しい。 


minaminoharu.jpg大阪の繁華街ミナミを舞台に、痛みや後悔、愛憎を抱えながら乗り越えようとする男女、親子の温かさが描かれる。いかにも大阪を感じさせるド庶民の人情の機微がとても魅力的。中心となるのは、姉妹の漫才師「カサブランカ」のチョーコとハナコ。笑いと涙が交錯する6つの連作小編。

「松虫通のファミリア」――。妻を亡くした吾郎は、娘の春美を妻の願ったピアニストにしようと懸命に育てるが、チョーコに憧れ漫才師になると出て行ってしまう。ハルミとヒデヨシの漫才コンビ「はんだごて」はスベりまくって空回り、逆に見捨てられていく。「大げさな身振り手振りでアピールすればするほど、客席は冷めていった」――なんだか今の政治の難しさを考えてしまう。1995年、阪神淡路大震災で春美は亡くなり、5歳になる孫の存在を、元相方のヒデヨシから知らされる。「閑古錐」――先が丸くなって使えなくなった錐。しかしそれは円熟。若いうちが全てではない、歳をとってできるようになることもある。

「道具屋筋の旅立ち」――優美の恋人は学生の誠。学祭の「大食い」に出てくれと優美に頼む。誠は大食いの「カサブランカ」のハナコの大ファン。子供の頃激太りしていた優美を罵倒していたくせに・・・・・・。「八角磨盤空裏走(はっかくのまばん、くうりにはしる)」――ありえないことが起きる。

「アモーレ相合橋」――。杉本昭彦が作曲した「アモーレ相合橋」を柿原登が歌って大ヒット。その1曲のみで足を洗った昭彦は今は模型作家。柿原は事業にも失敗。借金だらけのなか死ぬ。売れない歌手ちづると一緒に住んだ昭彦は、やっと会心の1曲「千羽鶴に乗って」を作曲してちづるに送ろうとしたが、そんな時、柿原が来て・・・・・・。「壺中日月長し」――涙なしには読めない感動的な話。

「道頓堀ーズ・エンジェル」――。ガンの告知を受けた夫の隠し子疑惑が発覚し衝撃を受けている女・橋本喜佐、結婚詐欺に遭って一千万円盗られた女・田島都、彼氏に捨てられて絶望している女・西本サエ。「男運のない女」がたまたま出会い明け方までしゃべる。チョーコに八つ当たり。

「黒門市場のタコ」――。翼の母の再婚した相手は船場の福永耳鼻科医院の2代目。父は人も羨むほど大事にしてくれるが、翼は苦しくなる。チョーコも父親から過保護、過干渉で苦しみ、一方で妹のハナコは「毎日寂しくて、惨めで・・・・・・お父ちゃんとチョーコを恨んだ」と言う。翼は会いに行くと、ハナコは「一笑すれば千山青し」ととりあえず笑うことを勧める。チョーコは「親は愛情で子供を壊せる」「自分を助けられるのは、自分だけや」「あんたはうちみたいにならんようにしい」と言う。

「ミナミの春、万国の春」――。2025年、万博の春にハルミの娘・彩は結婚を決める。ヒデヨシとハルミの「はんだごて」は、誰よりも「カサブランカ」のチョーコ・ハナコに憧れた。その王道漫才に。結婚式にサプライズがプレゼントされる。

「才能のない人間は、素直に流行に乗ればよかったのだ。MANZAIブームで生まれた有象無象の芸人たちのように、くだらないプライドなど放り捨てて、まずはウケることだけを考えればよかった。だが、ニ人とも間違えた。『はんだごて』は『カサブランカ』のように、王道の漫才で頂点を取るのだ。自分たちならできる、と」・・・・・・。王道を歩む漫才師、芸術家、政治家、そして人生道とは・・・・・・。大阪の繁華街ミナミを舞台にした「浪花節だよ、人生は」の傑作。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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