3月15日に産業再生機構が4年の歴史の幕を閉じた。400億の利益を出し、41社の復活、出口を見出した。
政府、メインバンクそして対象企業。そして官と民。摩擦は当然であったし、必要なのは現場力ともいうべき現場の力業だ。使命感ともいうべき熱と力がなければ成しうるものではない。
「逆風と血の雨をくぐりぬけて、『日の丸ファンド』はこうして日本をよみがえらせた。
"失われた10年に終止符を打て!"と、小泉内閣が命運をかけて挑んだ戦いのドキュメント」とあるが、バランスシートを考える銀行と、企業を復活させるという考えに立つ人とは迫り方が違う。世界のなかでの金融と企業を考えなければやっていけない時だ。
高木新二郎産業再生委員長、斉藤惇社長、富山和彦COOをはじめとする若いメンバーの頑張りがあってできたが、引当金などの制度改革、そして経済が再建されてきたというさまざまな要因があっての成果だと私は思う。
サッカー少年だった主人公神谷新二が、高校に入って短距離の陸上選手になる。すぐれた身体能力と努力の部活、青春の日々が爽やかに、まさに「一瞬の風」のように描かれる。ひねりもなければ、裏もない。真っ正直な青春小説で第28回吉川英治文学新人賞、2007年本屋大賞をとった。
スポーツは「どんな練習も、とにかくひたすら反復なのだった。頭でわかっても、身体がわからないと意味ない。自動化と呼ぶのだが、考えなくてもできるように身体が正しい動きを完璧に覚えこまないといけない」――そのとおりだ。
友情、克己、悩み、家族愛、恋心は、今も昔も同じなんだと思わせてくれる小説だが、4人の短距離リレーを最も大切にし、考えもしない走りをする青春の一体感を描ききったところに、この小説の良さがある。
※写真は第1部