061110チーム・バチスタの栄光.jpg2005年「このミステリーがすごい!」大賞受賞作の「チーム・バチスタの崩壊」。満場一致の受賞作らしい面白さ。
左心室縮小形成術である「バチスタ手術」の天才外科医に訪れた術中死。執刀ミスか医療事故か殺人か。
出世欲のない鈍な田口とインテリ・ヤクザで異能の白鳥、天才外科医の桐生、思慮深い病院長・高階と全ての人のキャラクターが個性豊かに林立する。


格差社会.jpg8年前、橘木さんの「日本の経済格差」は、ジニ係数を一般で使われる言葉にしてしまうほどの話題を呼んだが、今回の「格差社会」は、格差の現状と世界から見た日本社会の現状を、冷静に分析している。
こうした本は分析で終わることが多いが、第5章の処方箋は、かなりの分量を占めており、「税制における累進性」「雇用格差について貧困層を少なくする努力、同一労働・同一賃金、最低賃金制度の充実」「脱ニート・フリーターのための職業訓練への公共部門の関与」

「地域の力を引き出す街づくり戦略」「奨学金制度と公教育改革」「生活保護、失業保険制度の見直し(充実)」「税や社会保障制度の所得再分配効果の低下への対応」などを提起している。少子高齢社会、日本型慣行、雇用情勢の変化など、激変とせめぎ合いのなかで、国民の選択に委ねられるが、それであればあるほど、政治がどう提起するかだ。


職人ことばの「技と粋」.jpg「切羽詰まる」「段取り八分」「石の声を聞く」「切れ味を耳で聞く」「ゆうれい線」「木殺し」「靴の殺し」「糊十年、染十年」手筋」――。
日本の職人たちの匠の技と心意気。そして文化や伝統の奥ゆきと深さ。働くことの深さ。そうしたことを旋盤工として生きた小関さんがまとめている。こうした世界をまさに「生かす」か「殺す」か。それは文化と伝統、そして社会自体の深さを「生かす」か、「殺す」かでもある。


061019安倍政権の日本.jpg朝日新書が発刊され、興味深い何冊かが出版された。「自民党新政権」をテーマにして、新政権、安倍首相のポジションを複眼的にとらえた緊急ドキュメント。

渦中にいる私としては確認であったり、覚え書きのような面もあるし、広井良典、李鍾元氏との対談もいい。


迷走する家族.jpg戦後家族モデルは「大多数の男性労働者の職の安定、収入増」を前提として、「夫は仕事、妻は家事で豊かな生活をめざす」というモデルがつくられ、しかもこれが多くの人にとって実現可能であったがゆえに、家族の安定をもたらした。
しかし、それは今、「男性の職の不安定化」「戦後家族モデルの魅力が低下し、相当の努力を払ってまでして到達したいものでなくなった」

「欧米型平等モデル(夫婦がフルタイムで働き、経済的豊かさの中で、家事・育児を分担する)も、自己実現家族モデル(好きな相手と結婚し、好きな仕事をし、豊かに生活する)も、ともに魅力はあるが、実現可能性が不十分である(男女ともに職の不安定がある)」ことから迷走状態にある。家族に関しての閉塞感が出るゆえんだ。それは、本書第6章の「若者家族の空中分解」「勝ち組家族と勝ち負け先送り家族と負け組家族に分解」にも描かれる。

男女共同参画を進めても「勝ち、負け」は結婚を考えても出るし、「家族の絆を!」と叫んでもなんともならない社会全体の構造変化がある。最後に山田さんは、(1)若者の将来にわたる経済基盤の強化(2)社会制度から「漏れた」人々への支援プログラム(3)多元的で誰でも実現できる「家族モデル」の創造――を危機感をもって対策として訴える。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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