8年前、橘木さんの「日本の経済格差」は、ジニ係数を一般で使われる言葉にしてしまうほどの話題を呼んだが、今回の「格差社会」は、格差の現状と世界から見た日本社会の現状を、冷静に分析している。
こうした本は分析で終わることが多いが、第5章の処方箋は、かなりの分量を占めており、「税制における累進性」「雇用格差について貧困層を少なくする努力、同一労働・同一賃金、最低賃金制度の充実」「脱ニート・フリーターのための職業訓練への公共部門の関与」
「地域の力を引き出す街づくり戦略」「奨学金制度と公教育改革」「生活保護、失業保険制度の見直し(充実)」「税や社会保障制度の所得再分配効果の低下への対応」などを提起している。少子高齢社会、日本型慣行、雇用情勢の変化など、激変とせめぎ合いのなかで、国民の選択に委ねられるが、それであればあるほど、政治がどう提起するかだ。
戦後家族モデルは「大多数の男性労働者の職の安定、収入増」を前提として、「夫は仕事、妻は家事で豊かな生活をめざす」というモデルがつくられ、しかもこれが多くの人にとって実現可能であったがゆえに、家族の安定をもたらした。
しかし、それは今、「男性の職の不安定化」「戦後家族モデルの魅力が低下し、相当の努力を払ってまでして到達したいものでなくなった」
「欧米型平等モデル(夫婦がフルタイムで働き、経済的豊かさの中で、家事・育児を分担する)も、自己実現家族モデル(好きな相手と結婚し、好きな仕事をし、豊かに生活する)も、ともに魅力はあるが、実現可能性が不十分である(男女ともに職の不安定がある)」ことから迷走状態にある。家族に関しての閉塞感が出るゆえんだ。それは、本書第6章の「若者家族の空中分解」「勝ち組家族と勝ち負け先送り家族と負け組家族に分解」にも描かれる。
男女共同参画を進めても「勝ち、負け」は結婚を考えても出るし、「家族の絆を!」と叫んでもなんともならない社会全体の構造変化がある。最後に山田さんは、(1)若者の将来にわたる経済基盤の強化(2)社会制度から「漏れた」人々への支援プログラム(3)多元的で誰でも実現できる「家族モデル」の創造――を危機感をもって対策として訴える。