サッカー少年だった主人公神谷新二が、高校に入って短距離の陸上選手になる。すぐれた身体能力と努力の部活、青春の日々が爽やかに、まさに「一瞬の風」のように描かれる。ひねりもなければ、裏もない。真っ正直な青春小説で第28回吉川英治文学新人賞、2007年本屋大賞をとった。
スポーツは「どんな練習も、とにかくひたすら反復なのだった。頭でわかっても、身体がわからないと意味ない。自動化と呼ぶのだが、考えなくてもできるように身体が正しい動きを完璧に覚えこまないといけない」――そのとおりだ。
友情、克己、悩み、家族愛、恋心は、今も昔も同じなんだと思わせてくれる小説だが、4人の短距離リレーを最も大切にし、考えもしない走りをする青春の一体感を描ききったところに、この小説の良さがある。
※写真は第1部
「日本の戦争力」の第2弾。核を持つことで国際的な発言力をもって瀬戸際外交に走る北朝鮮の「戦争力」、そして中国の「戦争力」の実態。日本版NSC(国家安全保障会議)の必要性。
大事なことは敵基地攻撃論や核武装論という空理空論が独り歩きしない。「日本は自立した軍事力はもてない」「戦略投射能力なき軍事力を日米同盟で補う」こと。「中国との友好関係の維持」「日本は核軍縮を進める」「米は日本を世界での唯一無二、かつ最重要な"戦略的根拠地"と見なし、日米同盟を結んでいるという日米の特殊な関係をよく踏まえよ」「集団的自衛権の不毛な論議ではなく、日本モデルを提示せよ」―――など。
日本の防衛論は穴だらけで、最も防衛に重要なリアリズムが欠如していることが浮き彫りにされる。