脳力のレッスン2.jpg脱9.11への視座と表題にあるとおり、9.11後の世界の劇的な変化。まさに脳力(物事の本質を考え抜く力)でそれを見る時に、日本がいかにズルズルと対応のみに終始し、理念もなく、時代を見抜く力もなく、漂流してしまっているかを描いている。大局観をみず、そして現実の変化を如実知見できずして、どうしてこの時代の、そして日本のカジ取りができようかという問いかけだ。


「脱9.11の時代を誤るな」「ベルサイユ講和会議の示唆するもの」「吉野作造と渋沢栄一」「核を保有せず、平和主義に徹し、武力をもって紛争解決をしない国としてのメッセージを発せよ。理念こそ現実的な戦略的時代が来ている」「力こそ正義ではなく、国際協調と国際法理を求める全員参加型秩序に向かう世界が始まっている」「分配に対して神経質になり始めた都市サラリーマンが既得権益を拒絶する心理をもった」「滅私奉公の時代を否定して成立した戦後社会に生きたために、公共とか社会に関わることにためらいを感じて育ってきた団塊の世代。
そこには経済主義と私生活主義への埋没がある」――思考停止を打ち破るには、理念と未来志向と責任、そうした強い意志が不可欠。 


公共の役割は何か.jpg社会資本の整備を、経済が停滞し、財政が赤字で、しかも国民から既得権益への批判が出ている時に、どう考えたらいいのか。維持更新費を節約し、新たな経済活力をもつためには、「具体的に将来計画を立て、国民に示して、理解を得ることに本気で取り組まなければならない時期に来ている」という。従来、公共投資は「国民所得の最大化と地域格差の是正」をめざしたが、今の時代の理念は「まだ模索されている段階だ」という。

「市場は広域的で長期的なことは苦手」であり、「住民は将来の住民、他地域の住民に考慮が及ばない」というジレンマがある。
大阪が2008年度のオリンピックに立候補し、破れた時、IOCの調査国は大阪圏の交通基盤の弱さを指摘しており、世界の都市は大きく変化しているのに、日本は大都市への投資に80年以降油断とぬかりがあったと思われる。

コンパクト・シティ、街づくり、まさに少子高齢社会のなかで、グローバリゼーションの国際競争のなかで、新しい都市構想と公共の役割りをもっと考えなければと思う。


思い切なれば必ず遂ぐるなり.jpg政治家が書いた自叙伝や政策・ビジョンは読書録にのせていない。しかしこの野呂田先生の本は、まさに野呂田先生の日頃からの薀蓄がそのまま出ている見識の本だ。
私は、野呂田先生が演説の時、短い挨拶の時、仲人の時、少人数での懇談など、いろいろな場面に接して、スキのない、キチッとした深さと温かさと意思をもった話に感服してきた。


2万冊を読むなどということは、常人にはできるものではない。しかも、メモまでとって。激しい政治活動をし、しかも国会議員でNo.1の世界各国を回った人で知己も多い。
ここに描かれているのは、野呂田先生の数十分の1、氷山の一角にすぎないがゆえに、さわやかだ。


官僚政治から国民による政党政治へ.jpg官僚制を歴史的にたどり、現在のいわゆる"官僚政治"の弊害を浮き彫りにしている。
しかし、私が感じたのは、そうしたことだけではなく、むしろ政治を行う者の人格と志、その中核にあるグーテンホーフ・カレルギーの哲学だ。パン・ヨーロッパ運動の提唱者であるグーテンホーフ・カレルギーの「友愛」は鳩山兄弟に受け継がれるが、私自身、カレルギー伯が来日した時の講演を学生時代に直接聴いた。


カネがあることでは、尊敬されない日本。グーテンホーフ・カレルギーが「西欧と違って、清らかこそ美的価値であり、倫理的価値でもあるという日本人の特異性を、人類共通の価値にまで高めようとした」ことにふれ、「美的な生き方を尊重する文明こそが未来に希望をもたらす」とカレルギー・池田大作対談(「文明・東と西」聖教文庫)の言葉を明示する。
崇高な理想とその実現が、ますます求められている。


仕事文の書き方.jpg高橋さんと新年会の会場でお会いした。
静かで自然で、あたたかで、柔らかな人柄が、この本ににじみ出ている感じがした。
一文一義。短く、明快に、わかりやすく、読み手を疲れさせないように、そして説得力に磨きをかけようと、丁寧に示してくれている。本当にそうだ。心がけなければならないことがいっぱいあり、もっと磨きをかけなければと、恐ろしささえ感じた。 

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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