私の後藤田正晴.JPG57人のつづった後藤田正晴への感謝ともいえる言葉。まさに戦後史そのものだ。日本が国難ともいうべき時、判断の難しい時、即座の判断が求められる時、後藤田さんがいた。後藤田さんという座標軸をもっていたこと、鍛え抜かれた判断力と、それを実行する存在感をもつ人が権力の中枢にいたことは幸せだった。

日中友好会館、日中を中心にお話をさせていただいたが、もっとじっくり話したかったと今も思っている。

「政治は目的実現のために権力を使いこなす。しかし同時に大事なのは国家権力の怖さを知り、権力を細心にして丁寧に慎重に扱うことだ」

「権力者は謙虚であらねばならない。職権は行使するより話し合いを第一に考えることだ」

「国家の基本をゆるがせにするな」――後藤田さんの魅力を次々と本書は示しているが、その魅力を感じる57人もおやっと思う感性を見せてくれている。

昨今の日本の政治家に「政策通はいても政治通がいない」ことが問題だと指摘する人がいたが、「政治家とは」ということを考えさせる一書でもある。


靖国戦後秘史.JPG「A級戦犯を合祀した男」という副題があるとおり、元宮司松平永芳氏を描いている。松平春獄直系の孫で、その尊皇精神の志と、師である皇国史観の平泉澄東京帝大教授とB級戦犯として処刑された岳父醍醐忠重海軍中尉の影響。松永氏自ら自負できるものは「A級戦犯合祀である」とし、「現行憲法の否定と極東軍事裁判の根源をたたく意図のため」といっている。

その前、じつに32年間の宮司・筑波藤磨氏のこと。さらには、「千鳥ヶ淵の攻防」「国家護持法」「祭神に祀り上げられた二人の皇族」など、戦後史のなかでのあまりに生々しい現実が描かれている。


空気と戦争.JPG「昭和16年夏の敗戦」。そのとき、戦ったら敗北することを提示した総力戦研究所があり、30代の若き精鋭が集った。

しかし現実に戦争になだれ込む。「数字を誤魔化すと国が滅びる」と猪瀬氏は、官僚システムの宿痾を示し、「空気」に捉われない「歴史意識」を磨き、事実に基づいての論理とデータに立つ屹立した1人の人間を求める。

「組織や時代の空気に流されずに生きろ」ということを、私は大衆社会、メディア社会のなかで、より痛感する。


暴走老人.JPG突然、怒鳴り始めた老人に出会った人は確かに多い。老人の暴走というより、若者よりも老人がキレるようになったことをどう解釈するか。まさに藤原さんは「人と人とのかかわり方の根底的な変化」を社会分析する。自分自身ではないかと危機感をもった。

1つは「時間」――「待つこと」の耐性に欠ける大人の増加。待つことが苦手、せっかちで先を急ごうとする。待つことのトラブルの増加。待つことが当然だった社会が「待たされることに苛立つ社会」になった。時間帯・スケジュール・帯グラフ人生、どうものんびりと日向ぼっこするおだやかな老人でなくなっている。競争社会を猛烈にスケジュールで来た、しかも指導的立場にあった人がリタイアしてもその感覚は身体に染み込んでいる。自分の時間を奪われることへの怒り。音楽、スポーツ、読書、情報、新しい態度を身につけないと、時代不適性の新老人となる。そしてそれはIT社会から取り残され、焦りと孤独を生む。

2つめは「空間」――地域社会が非地域社会となり、孤独、家自体も個室化する。臭気の攻撃で社会を攻撃するゴミ屋敷、騒音に対するイラダチ、家庭に居場所がない。

3つめは「感情」――社会のマナー、常識のコードが日々更新され、順応できない老人は情動を爆発させる。患者や生徒は「お客様」で医師も教師もサービス業になってしまった。サービス社会では笑いも表情管理、労働となる。クレーム社会だ。


少子化克服への最終処方箋.JPG政府・企業・個人の連携による解決策、総力戦の必要性をいっている。この種の他の本と違うところがある。それは、国内そして諸外国を徹底して調査してきわめて現実的、具体的な方策を示していることだ。子どもを産みやすく、育てやすい環境を創造するために、企業のネットワークによる子育て支援サービス、生活塾。そして企業としてワーク・ライフ・バランス戦略は「海外の両立先進企業から学ぶ(両立支援はハイリターンの投資)」「中小企業から学ぶ(中小企業の職場環境は遅れているというのは誤り)」などを示す。育児休業を取得したとき、日本では「所得ロス」「キャリアロス」「業務知識ロス」の3つが生ずるが、欧米企業はそうでないことも示されている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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