「宗教と道徳」.jpg「宗教と道徳――思うままに」(2002年8月)が文庫本としてこのほど出された。その時に読む感銘もあるが、後に読んでなお、臨場感があるのはすばらしい。教育基本法や靖国、そして皇室典範の現在の課題について、深い洞察から確たる見識が示される。従来から靖国をはじめとする梅原先生の考えには、人にも読むことを薦めるほどであったが、「哲学不在の時代」の起点に、廃仏毀釈を示し、ドストエフスキーの問題意識を示してくれているのは、なつかしさのなかに心を落ち着かせてくれる。

道徳は善の価値に関係するとしてカントの「実践理性批判」も提示するが、私が感ずるのは「生命に価値を置く」ことと、その表れとしての自他不二の菩薩的利他行動が根源的なものだと思う。基本的には梅原先生の考えにきわめて近い。
「大阪とノック知事」「新生という言葉の意味」「家康型人間への期待」「奇人の時代」「皇室について」など、一寸したことに至るまで、さすがだ。


80歳の 「妻へ、子へ、そして後なる人たちへ」という副題が付してある自伝だが、格調、見識、教養、哲学、文化、バランス――高潔な人格が全文を通して伝わってくる。凸版印刷の特別相談役、日本経団連常任理事をはじめとして、わが国を支えてきた鈴木和夫さんの自伝だが、感銘をもって一気に読んだ。

戦争をどうとらえ、そして戦後をどう考え、生きてきたかを知りたいと思ったが、日本が繁栄し、正道を歩んでこれたのは、こういう人たちがいたからだとの思いを深くした。

「人間と自然との調和、物と心のバランス(日本美)」「冷徹な市場優先主義批判」「天生我材心有用(李白)」「有志事竟成」「マイネッケの近代史における国家理性の理念(国家は常に権力衝動に動かされるが、野放しにこの衝動に身をまかせれば、必ず破滅の悲運に見舞われることは、歴史の教えるところである)」「日本海軍が壊滅したのは、米軍にたたかれる前に、内部崩壊していた」――。

写真集も本当に美しい。


「国家破綻はありえない」 .jpgたしかに「国の財政」「少子高齢社会」の両面から、日本は破綻寸前という論は多く、それにともない負担増の悲鳴が聞こえる。増田さんは、「現実を見よ」「現場を見よ」「凡人の良識を信頼せよ」という。底上げ教育による日本人の底力、製造業の"生もの"をつくる価値創造の底力、厳しいマーケットで鍛え上げられた日本の小売業、エネルギー効率のよい国・日本、内需が高い国・日本などを示し、官公庁依存であるゆえに、低い生産性になっている公共事業・農業にメスを入れよという。

国債についても低金利での借り換えや永久債、利便性の高い都市への集中、都市再生債、ピークロード運賃などを提唱する。

「凡人なりの結論」を忠実に実行することと、自力での生産性が不可能なほど脆弱化した産業へのメスを訴える。教育と良識と倫理をもつ真面目でキメ細かな日本人がこわれない限り、国家破綻はありえないということか。


「テレビ政治」.jpg「国会報道からTVタックルまで」との副題がついている。本にして論ずるには難しいテーマだが、よく論じている。政治にはしっかり論評できる新聞が最もふさわしいと思うが、間違いなく政治の場においてもテレビの影響力が他を上回るようになった。
民意が欲するところを番組にして、民意の欲する形で提示していると、醸成された空気から脱することができなくなり、政治的方向性がつくられてしまう。


「もっと他のことも扱ってほしい」「もっと落ち着いて論じさせてほしい」――我々政治の側からは映像の力を認識するからこそ、そうした気持ちが常にある。憲法論争というといつも「9条」、教育基本法論争というといつも「愛国心」。たしかに1時間の番組の討論ではそれ以外も含めて論じたらとても足りないし、深まらないし、どうしてもパフォーマンスになる。
星さんは、「メディアの立て直しが急務」というが、じつは、社会全体が、「面白さ」「深さ」「一体感」をどう育てるかという曲がり角に来ており、それほどテレビ、新聞の影響が大きい時を否応なく迎えている。


ダ・ヴィンチ・コード.jpg社会現象と思われるほどの作品――。今ごろになって手にとった。
キリスト教文化ということと、ロゴスの文化という異文化の世界を歩いた感がする。「聖杯伝説」「ダ・ヴィンチのモナリザと最後の晩餐の謎解き」「神の子キリストと人間キリスト」「マグダラのマリア」「シオン修道会、テンプル騎士団、サングリアル文書」――史実と巧妙なミステリーがどこで交わるかはよくわからないが、暗号、パズル、象徴、筋立ての綿密さ自体がロゴスの文化だ。

ミステリー好きの私としては、登場人物の心象風景、心情に迫りながら描く日本の世界との違いを感じた。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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