注目のニ人の対談だが、どう噛み合うのか。これが人間の根源、日本文化を掘り下げていったところに広がる宇宙・自然、生死の諸法実相の世界を語り合うことで融合している。「デジタルネイチャー(計算機自然)の世界」「計算機自然の『自然』は『じねん』でなければならない」「即今の道具、道具は使い込まれると自然になる」「民藝、宗教なきデジタル社会」「デジタルネイチャーと死生観」・・・・・・。興味深い対話が次々と繰り出され展開される。
「アイデンティティを失った日本」――「(YouTubeの再生回数)問題は数字という基準が社会を論じる際の『第一の価値基準』に踊り出たことで、何を我々が失っているかを知って欲しい」「国家像の第一の規準を金銭的豊かさに求めることは正しいのか」「三島由紀夫の言う『空っぽな国』」「自己同一性を取り戻さなければいけない」「コンピュータを文化全体の中に位置付けるためには、国家の全体像を考えることが大事」「霞ヶ関文学(政策)はこの世の全てが書いてある。優先順位こそが大事。まず税、社会保障、デジタルの一体化が優先順位第一。マイナンバーカードの紐付けこそ(落合)」「政府の政策にデジタルが入っていないと化石になっちゃいますよ」と言っている。
そして「今、日本に必要なのは『人材』ではなく『人物』。デジタルに精通するのは手段であり、私的成功だけでなく、公的な事柄に関わること、自分以上の価値観を支える役割を担うことの実感の中にしか人生はない」「鉄腕アトム、アニメ、ラーメン・・・・・・日本が生んだ文化として誇っていい」「(イーロン・マスク----)経済合理性の平面しか出てこない。新しい民主主義などと言うが、そうした民主主義は全く新しくない。人間や社会を担保するのはある種の倫理性」「人間と対峙する自然の側が高速化して、人間が追い切れないシンギュラリティを超えたデジタルネイチャーの時代、宗教なき規範はできるのだろうか」・・・・・・。落合氏は「宗教が規定しなくても従来からの自然観に結びついた道徳がある。デジタルネイチャーにおいても、人間は意外と穏やかに暮らせる気がしていて」と言う。
「日本の『無思想』が強みになる」――。「今は『プラットフォーマー帝国主義』の状態で、日本は『デジタル小作人』になっている」「ソニー、任天堂・・・・・・。日本も世界トップの『プラットフォーム』を持っている」「日本には無思想性ゆえの融通無碍さがあった」「自然主義文学もSNSもドーパミンカルチャー。それと最も相性が良いのが政治。安価で刺激的娯楽。それは『生の衰弱(先崎)、だが『止められない(落合)」「最近のあやふやなカルチャーとあやふやな言語に基づいて、SNSばかりやっている浮ついた時代を見ていると根なし草って人がすごく増えている。平賀源内の根なし草感って教養に支えられている(落合)」と言う。
「パンクな『民藝』、『新古今』はエロチック」――。「本居宣長の日本文化を貫く一本の太い線の『もののあはれ』(先崎)」「それと『エモい』は近い」・・・・・・。
「デジタルネイチャーを生きる」――。「自然とは人為と自然が一体となって切り離すことのできないエコシステム。そこにコンピュータが加わっても自然というエコシステムであることに変わりはない」「圧縮(縮み志向)と定型こそ日本文化。情報を圧縮したコンピュータ」「民藝も圧縮文化」・・・・・・。ここで「『純米大吟醸的』AI生成物で価値転倒」の論議となる。「AIは本質的に雑味のないものを出してくる。人間が手間ひまかけて作ったものこそが良いのだと言う。従来の価値観が崩れる可能性がある。人間性を消し去ったところにこそ、純然たる美があるとか、味わい深いものがあるといった考え方が出てくる(落合)」に対し、「純粋な美、純粋な自由、純粋な世界・・・・・・この純粋はおそらく真水のようなものではありえない・・・・・・人間の社会というのは、本来は、もっと雑味があるものだ。人間は純粋と魔女の虚無の間で、ギリギリの緊張感を生きるべきものだ(先崎)」と言う。そして「テクノロジーによって人間は超人化なんかしなくて新しい外部環境を自然のように捉えるだけ。新しい価値を生み出したりする役割はマタギみたいな人たちが担うようになるのではないか(落合)」「定住的・農耕的すなわち大企業所属的な生き方は、今後はAIが担うようになる。よりクリエイティブな仕事、芸術的感性に基づく仕事をする人が、現代的に言えば生き残る人たちだろう。マタギ的な生き方(先崎)」・・・・・・。さらに、「日本人の死生観は一気に変わる」「100年後、じいちゃん、ばあちゃん、先祖代々の情報を学習したAIとスマホで家族会議をして、生きているのは自分だけなんだけど、違和感なく喋っているというケースはきっと出てくる。人工冬眠を真剣に研究している人もいる(落合)」・・・・・・。
イーロン・マスクと落合さんと先崎さんの思考と立ち位置。この対談の立ち位置が私には重要だと思える。
現代の揺らぐ「結婚」についての5つの物語。他人が一緒に生きるのだからすれ違い、わかり合えないのは当然といえば当然。結婚、同棲、婚約、不倫、同性婚、離婚、慰謝料、家庭、家事の分担、金銭感覚、世代間格差、それぞれの生育環境・・・・・・。社会が激変し、あまりにも違う男女が縁によって結び合い、「婚姻制度」の過程の中で生ずる軋みや葛藤、すれ違い、衝突、癒しと安定、愛と幸福・・・・・・。それを5つの物語として、心のひだに添うが如く実に見事に描写する。リズムもユーモアもあって引きつけられる。
「Thank you for your understanding」――家族の期待に応え、ついに恋人とお正月に帰省する決意を固めた小暮華、38歳。華は大手食品会社で課長に抜擢されていた。結婚しようとしていたのは同じ女性の樹だった。それを聞いた家族の驚き、それまでの華の悩みと葛藤がぶつかり・・・・・・。
「Beautiful Dreamer」――。地方出身で大手食品会社の派遣社員の花織、27歳。同じ会社の中嶋恵斗と付き合って1年。結婚したいと思って迫るが、煮え切らない今風の恵斗。他に付き合ってる彼女がいることがわかり・・・・・・。派遣の不安定と弱さ。「わたしは今夜も夢を見る。愛する人と結婚したい。マイホームが欲しい。キッチンは広いといいな。・・・・・・ささやかで、ありふれた、わたしの夢」・・・・・・。
「小鳥たち」――。離婚して郷里に帰り、実家の書店を継いだ佐々木一葉。そこで偶然、初恋の人・越智に出会う。越智は家庭内不和で奥さんは子供を連れて出て行ってしまい、3年ほど別居中。職場もストレスが溜まり、適応障害で休職中だった。二人は語り合うようになり・・・・・・。「結婚という船は転覆した」「マサハルの浮き輪は妻子に投げられわたしは波間に沈んでいく」「慰謝料は減額しません」「ふっと肩から力が抜けて、素直に涙が零れた。----浮き輪を投げてくれる人がわたしにもいる」・・・・・・。浮き輪も、止まり木も人生には必要だ。
「Position Talk」――。大手食品会社の小暮課長のもとにいる佐々木律。同じ会社に勤める朱里と婚約中で入籍目前。結婚後のことを朱里は次々迫る。「東京で余裕のある結婚生活を送りつつ、子供に満足のいく教育を受けさせたいと思ったら、ダブルインカムの一択しかないでしょう。でも妊娠出産て何が起きるかわからない」「結婚はエンジンがニ馬力になると同時に、トラブルも倍に増えるシステムだ。考えるほどに疑問が浮かぶ」「(会社でも)なんで女ばっかりこんな目に遭うの・・・・・・結婚したら、家事も育児も絶対に平等に分担して。出産したら一日でも早く仕事に復帰させて。保育園が見つからなかったら律が育休を取って」・・・・・・。ついに決定的な衝突になるが、昭和の男だけでなく今も男はやっぱり甘いようだ。
「C'est la vie」――。47と42の年増不倫カップルの花江祥子と坂元伸一郎。ミシュラン二つ星シェフのコンビでもある。伸一郎には妻子があり、「しんちゃんは週の半分をわたしと過ごし、残りを自宅で過ごす」。仕事も恋も魂を分け合ったニ人だが、そこにシェフとして若い渚が侵入してきた。「お花畑」はいつまでも続かない・・・・・・。
ままならない結婚----。特にセクシュアリティ、ジェンダー、共働き社会、パワハラ、セクハラ、企業文化の激変もあり、男女問わず大変な時代を生きている。
