人口減少・高齢化の急激な進行とAI、IoT、IT、BTの急進展という2つの足下の構造変化が、日本の生活現場で顕在化し始めている。2020年、東京五輪をめざすのではない。それ以降の日本、10年後、20年後、30年後の2050年の日本を想定して、時間軸をもって備えなければならない。まさに今、危機感をもて、それも今なら間に合う、そうした叫びが本書から聞こえる。微調整ではなく、「人生100年時代の制度設計」「年金・医療・介護・子育て支援」「義務教育も高等教育も」「公務員制度も含めた働き方改革」も・・・・・・。大石さんは「いわゆる"通説"に惑わされて思考停止になるな」「危機に対して"気づきの力"をもて」として「われわれが気づけば、豊かさは取り戻せる」という。
「問題は正しく提起された時、それ自体が解決である」とベルクソンはいう。また「日本人は科学的思考を放棄するリリースポイントが早すぎる」とある科学評論家はいう。本書を読んで浮かんだ言葉だ。
誤った"通説"は、思考と智恵が必要な社会の激変の時に最も危険なものだ。危機に気づかぬ危機だ。はびこる"通説"を打破しつつ「世界のなかで唯一経済成長しない国」「新自由主義経済学による日本破壊」「深まらない安全保障議論と憲法」「東京首都圏一極集中という危機」「先進各国に大きく遅れをとるインフラ環境」「揺らぐ日本の土地所有」「国家の根幹『公務員制度』の危機」「崩壊していく子どもたち」「人生100年時代の制度設計」などを論述する。
「御薬園同心・水上草介」シリーズ第3作。"水草"と綽名される水上草介は、薬草栽培や生薬精製に携わる小石川御薬園(おやくえん)の同心。吹けば飛ぶような外見をもつのんびり屋だが、人並みはずれた草花の知識をもち、親しまれ、周りの人たちの心身を癒していく。御薬園を預かる芥川家のお転婆娘で剣術道場に通う千歳との恋のやりとりをはじめ、心に秘めたものがゆっくり、つつましやかに漂ってくる。
幕末の大変動が始まろうとした時代。御薬園や町並み、庶民の暮らしには四季折々の風情がある。鳥がさえずり、蝶が舞い、赤黄茶の葉色に彩りの秋を終えて白く冷たい冬がくる。四季がはっきりし、人々の行事や振舞いが季節とともにあった静かな、貧しくとも心通う時代――。そんななかで起きる騒動、揉め事、病と薬草を、さわやかに優しく、江戸の生活が浮かび上がるように描く。
「高齢社会の成長戦略」が副題。人口減少・高齢社会が急速に進む日本。けっして暗くはない。高齢化に対応するイノベーションを進め、従来の規制を打ち破って展開すれば、需要もGDPも伸びる。高齢者向けイノベーションの経済学・エイジノミックスで日本は蘇ることができると提唱する。
高齢化が進む社会は、イノベーションの宝庫である。「病弱な人のための財・サービスのイノベーション(遠隔医療サービス、介護施設でのロボット活用、創薬・再生医療、高齢者向け住宅)」「健康な人のための財・サービスのイノベーション(自動運転、IoT・AI、旅行やデパートやフィットネスや学習などシニア向けサービス、シェアリングエコノミー)」そして「病弱な人のための制度のイノベーション(遠隔医療サービス、混合介護、見守りと市民後見)」「健康な人のための制度のイノベーション(シェアリングエコノミー、ハローワークやシルバー人材センター、就労モザイク)」の4つに分類、整理し、具体的に現場で今起きていること、挑戦していること、すでに実り更に進んでいることを示す。
「老いの期間を明るく過ごす――創薬とロボティクス」「高齢者の能力を拡張する――人工知能とモノのインターネット」は高橋琢磨氏、「介護は減らせる――脱『要介護』で稼ぐケア市場」「労働力を移動させる――誰もが働き続けられる社会」は高橋氏と岡本憲之氏が現状と方向性、戦略を詳述する。まさに今、踏み出す時だ。
多くの人が100年ライフを生きる時代が来る。2050年までには、日本の100歳以上の人口は100万人を超え、2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。世界全体が長寿時代に進んでいく。過去のモデルは役に立たない。長寿化時代には人生の設計と時間の使い方を根本から見直す必要がある。長寿を厄災でなく恩恵にする人生戦略だ。
今までは「教育→仕事→引退」の3ステージの人生だ。年金・老後の蓄え・住宅ローンなどの有形の資産に議論が集中するが、余暇時間の使い方、パートナー同士の深い関わり合い、友人関係のネットワーク、学習とスキルアップなどの無形の資産が重要となる。変身できるマルチステージの人生だ。レクリエーション(娯楽)を労費するのではなく、自己のリ・クリエーション(再創造)に振り向けることだ。快適なぬるま湯の外に出て行き、未来につながる道を思考する「成長思考」の持ち主になることだ。教育機関も企業もその大きな動きを課題として受け止め、前に進める必要がある。企業は「仕事と家庭」との関係に留意し、「年齢を基準にする」ことをやめ、まさに「働き方改革」に力を注ぐことになる。政府が取り組む課題は複雑・多岐、既存の分類は成り立たなくなる。
人生に単線型ではない新しいステージが現われる。選択肢を狭めず幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」、自由と柔軟性を重んじて小ビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」など選択肢は増える。そのためのエネルギー再充填と自己再創造の移行期間の確保と環境整備が重要となる。働き方改革を越えて、生き方改革という命題が横たわる。
ロンドン・ビジネススクール教授の著名な2人が訴えかける。