「トランプ大統領を誕生させたアメリカ社会の構造と亀裂」「民主党が政策も選挙戦術もいかに失敗したか」――。今、アメリカ社会で何が起きているかを剔り出し、日本は何を覚悟して未来に向かうかを提起している。
「トランプ時代の幕開け」「保守的なレトリックと中道の経済政策」「法人税率15%のインパクト」「意気揚々と撤退するアメリカ」「分断されるアメリカの深層」「共和党2010年当選組の苛立ち」「オバマ民主党で噴出した不満のマグマ」「ムスリム社会とラティーノ社会の摩擦」「誹謗中傷合戦と化した大統領選挙」「FBIによる落選の決定打」「トランプ現象の本質」「アメリカ社会における50年間の変化、20年間の変化、8年間の変化」「"普通の大国"としての孤立主義」・・・・・・。そしてトランプ現象はアメリカの閉塞感と国民の深層心理を踏まえて立ち上げられたものであり、これまでのアメリカ政治の構造を組み替える可能性を秘めている、という。
「変わりゆく世界の地政学」「"帝国の撤退"と世界秩序の行方」「日米関係の新たなる地平」「新・勢力均衡の時代」「TPPの挫折と東アジア経済圏」・・・・・・。日本は対話と協調を踏まえつつ、振り回されないで、自らの戦略で行動する時を迎えている。
「誰も語れない将棋天才列伝」と副題にある。たしかに、14歳で史上最年少のプロ棋士となって60年以上現役で戦い続け、あらゆる世代の棋士と対戦している加藤さんでなければ語れない将棋界の歴史、天才列伝だ。
関根金次郎、終生のライバル阪田三吉。木村義雄、花田長太郎。そして升田幸三と大山康晴。それを倒そうとした加藤一二三、二上達也、米長邦雄、山田道美、有吉道夫、内藤國雄・・・・・・。そして中原誠。さらに谷川浩司、羽生善治、佐藤康光、森内俊之、渡辺明・・・・・・。
「銀が泣いている」「たどり来て、未だ山麓」「勝負というのは一勝一敗、それなら成功」「前進できない駒はない」「"自分がよい手"ではなく"相手が嫌な手"」「いいときは焦らない、悪いときはあきらめない」「第一感で浮かんだ手は好手」「直感精読」「人間とソフトの最大の差は"大局観"」・・・・・・。「将棋界をつくった天才たちの求道心」が、率直に語られる。まさに"誰も語れない"将棋天才列伝だ。
田中角栄・中曽根康弘両首相は同じ1918年生まれ、政界デビューも同じ年。早野透・松田喬和両氏と私も同じ1945年生まれで、見てきた歩んできた政治の世界も共通している。強烈な二人の政治家の番記者の練達の対談だけに、実に面白く、時代を思い起こしつつ読んだ。
「時代が政治家を育てる」「いい政治家が記者を育てる」というが、早野・松田両氏は、時代と強烈な二人の政治家の空気と息づかいを身体いっぱいに吸収している。今の若い政治記者にとってはうらやましい限りであろう。
「高等小卒と帝大卒」「親・吉田と反・吉田」「角栄のテレビ時代と中曽根のテレビ政治」「戦術の角栄と戦略の中曽根」「日本列島改造論と日本改革論(戦後政治の総決算)」「角栄のすごさは"総理になるまで"と中曽根のすごさは"総理になってから"」、そして「"異端"の角栄、中曽根と"正統"の安倍」・・・・・・。
夢、信念、怨念、情と理、権力闘争等々、表に出ないエピソードまで迫って述べている。出色。
我々は今、大きな変化の渦中にある。どのような社会に推移していくかを見通せない。インターネットが我々の情報環境を大きく変えたが、いま人工知能の進歩は著しく、ビッグデータを駆使し人間の知的作業の多くを代替することになる。「ロボットの脅威――人の仕事がなくなる日」(マーティン・フォード)もあれば、「シンギュラリティ――人工知能から超知能へ」(マレー・シャナハン)のように、多くの人は仕事を失うかもしれないが、豊かに暮らすという楽観論もある。ニュートンは「リンゴはなぜ落ちるのか?」ではなく、「リンゴは落ちるのに、なぜ月は落ちないのか?」と誰も発しなかった問いを発したことを例示し、「人工知能は疑問を抱くことができるのか?」という。そして人間の「知識」というものの本質を指摘する。「知識は資本財の1つである」から「消費財としての知識」「知識を得ること自体に意味がある」「知識の獲得自体が目的化し、無限の喜びをもたらす」という思いを語る。知識の未来は新しい希望の世界に開かれていくとの指摘に、心が晴れやかになる。
「知の進化論」「知識の価値」を示す本書は「グーテンベルク」「インターネット」「人工知能」の時代を画した技術革新の歴史をたどる。「かつて知識は秘密にされていた」「百科事典は知識を万人に開放した」「インターネットで情報発信者が激増した」「検索という方法論」「SNSやキュレイションで情報拡散スタイルが変化」「知識は秘匿すべきか、公開すべきか?」「人工知能の進歩で知識への需要はどう変わるか?」とその内容を興味深い歴史的事件をも交えて解説する。「百科全書・グーグル・人工知能」が副題だ。
リスクに直面しても恐怖や不安を感じない人間、共感性が低い人間、平気でウソがつける人間、他人を傷つけても後悔も反省もないし、過去の経験から他人の気持ちを学ぶこともできない人間。表面的な魅力、不安の欠如、罪悪感の欠如、不誠実・自己中心的・親しい関係を継続して作れない、情動の乏しさ、プレゼン能力だけ異常に高い・・・・・・。そうしたサイコパスが1%、つまり100人に約1人いるという。
「精神分析の失墜と脳外科の台頭」のなか、「脳科学」がサイコパスの脳の謎を徐々に明らかにしつつある。カギは「扁桃体と眼窩前頭皮質および内側前頭前皮質とのコネクティビティ」。それらの活動が低く、「良心というブレーキがない脳」「倫理・道徳というルールを学習できない脳」だ。
歴史上の人物として排除されずにのし上がった「勝ち組サイコパス」と思われる人物として、織田信長、毛沢東、ピョートル大帝、マザー・テレサなどが上げられ、分析されているという。