教師力の再興――使命感と指導力を.jpg「教育の深さが日本の未来を決定する」「教育は人格の完成を目指す」「学校教育は一人ひとりの子どもの未来を、そして我々の社会の将来を創る仕事であり、それを責任をもって担う存在こそ教師である」――。教育費の負担軽減は環境づくりとして大事なことだが、何といっても問われるのは教育の中身、教師の質だ。

本書は教育改革国民会議、中央教育審議会などで主要な役割を果たし、現在も新しい時代のなかでの教育、学校教育の再建と推進に熱く働き続ける梶田先生の「教師力の再興」への思いの込もった書だ。「なるほど、教師は使命職」「教師はさすがに人の心を耕し、鍛え、育むプロ」との思いがつのる。そして教師だけではない。各界のリーダー的立場にある者、そして父母保護者も参考になり、考えさせる。

「師道の再興を」「今、教師に求められる資質・能力」「確かな授業、熱意を込めた魅力と迫力ある授業」「真の授業力とは」「内面性の教育で確かな学力と豊かな心を」「加賀千代女、松尾芭蕉の句から何に気づかせるか」「開示悟入の教育の実現を」「"外れ"教師問題、"教えない"先生問題」「教師の不易の資質・能力とは」・・・・・・。柔軟で深く、どっしりした人間教育への指針が伝わる。


肉弾.jpgあの圧倒的な力作「颶風の王」の著者・河﨑さんの第2作。

心を閉ざした息子・沢キミヤと父は、猟銃をかつぎ、とりつかれたように森林の中へと突き進む。北海道の、人も全く通わぬ奥深きカルデラの山中――。そこで狙った熊に逆襲され、群れをなす野犬にも襲われる。その獣との凄絶な戦いはすさまじい。いや北海道の開拓史には常にそうした言語絶する厳しい自然と野生動物との格闘があったことを想起させる。

父は倒され喰われるが、息子は戦い生き残る。凄絶な戦いには、人間もない、知性も理性もない、思考する暇もない。土壇場に立った時に噴出する野生の無限のエネルギー。ヒトと獣の生きる、食う、生殖――それは過酷な自然のなかで生命を繋ぐ残酷な結晶ですらある。人肉を喰らう極限の残酷さだ。「何でもよい。生きよ!」との声が原野に地響きのように聞こえてくる。まさに「肉弾」、むき出しの肉弾だ。

武田泰淳の「ひかりごけ」、コッポラの映画「地獄の黙示録」を思い出した。現代文明のなかで、人は何層にも分かれて生きるようだ。しかし究極する所、その生命の根源の所には生への執着と、とてつもない野生のエネルギーがあるようだ。北海道の原野で今も生き抜いている河﨑さんならではの野太い、荒削りの「生きる」「自然・動物と共に生きる」小説に、今回も"浴びせ倒され"た。


日本史の内幕.jpg日本史にはたくさんの謎が潜んでいるし、勝者の歴史となっていることは否めない。磯田さんは、「日本史の内幕を知りたい。そう思うなら、古文書を読むしかない」と、15歳の頃からずっと古文書を見つけ、解読してきた。きわめて面白い。

「沼津市にある高尾山古墳は卑弥呼と全く同世代の"初期古墳"(初期古墳を護れ)」は、国交大臣の時の話で私もかかわった。「秀吉の天下統一に本願寺が協力」「『殿、利息でござる!』の浅野屋甚内と穀田屋十三郎の感動的な"慎み"」「三方ヶ原の戦いでの織田援軍の人数」「豊臣の金銀の行方」「水戸は"敗者復活"藩」「築山殿と家康の関係」「井伊家と松下嘉兵衛と秀吉」「秀吉は秀頼の実父は疑わしい」「庶民が実学を学んだ"寺子屋"文化の財産」「我々は『本が作った国』に生きている」「龍馬の書状発見」「"民あっての国"山田方谷(総じて天下のことを制するものは、事の外に立って事の内に屈してはならない)」「日本の人口が世界シェアの最高になったのは綱吉の時代(6億人中3000万人)」「中根東里と司馬遼太郎」、そして「災害と日本人」・・・・・・。いずれも興味深く、「日本人と歴史」の重さがじわっと突き上げてくる。


教養としての社会保障.jpg人口減少・少子高齢社会、人生100年時代に本格的に進む今、日本の社会保障制度は大きな曲がり角に差し掛かっている。社会保障は「民生の安定」と「経済の成長」の両面を担う。安心社会の基盤となり、社会経済の変化に柔軟に対応し、社会の発展・経済の成長に寄与できる社会保障制度をどう構築するか。

内閣と厚労省で直接、この問題と格闘してきた香取さんが、きわめて丁寧に、幅広く、そして歴史・理念・哲学をも踏まえて「人口減少社会を乗り切る持続可能な安心社会」のための社会保障制度の方向性を示す。「一億総活躍」「働き方改革」「全世代型社会保障」など、安倍内閣・自公政権の行っていることの意味が、より鮮明に浮かび上がってくる。

「系譜、理念、制度の体系――ギルドの互助制度を基本としたビスマルク」「基本哲学――共助やセーフティーネットが社会を発展させた」「日本の社会保障――『皆保険』という奇跡」「変調する社会・経済――人口減少・少子化・高齢化で『安心』が揺らぐ」「産業としての社会保障――GDP5分の1の巨大市場」「国家財政の危機――次世代ツケまわしの限界」「目指すべき国家像――社会を覆う"不安"の払拭」「新たな発展モデル――知識産業社会と労働、安心と成長の両立」「改革の方向性――安心社会への改革」・・・・・・。現在の最大の課題、経済、財政、社会保障の位置と役割がよくわかる。


騙し絵の牙.jpg激変する社会のなかで変化を迫られる出版業界。しかし、編集作業、編集する頭脳は人間のなかでも根源的ともいえる最重要のものだ――。「自分は何のために編集者になったのか」「昨今の出版業界の移り変わりを前に『このまま何もせずにいていいのだろうか』『現在この業界に本当に必要な存在とは何か』との問い」「思考を続ける人間には、真贋を見極める目が備わっている。本物を、上質を選ぶ慧眼を身につけることが、情報の波にさらわれない唯一の対抗策だ。思考の源は言語だ。言葉を探し、文化を育み続けることこそ、出版人の使命だ」――。

読者の活字離れ、激震の出版業界のなかで生き抜くことを迫られる雑誌の編集長・速水輝也。軽妙な会話、人を惹きつける力、心を通わせての信頼の獲得、好感度抜群、やり手の速水は、懸命に雑誌を守ろうと奔走する。しかし、社内の軋轢も加わって社を去ってゆくことになる。

しかし、やられっ放しと思いきや大逆転が待っていた。はたして速水の本性はどこにあり、その牙ともいえる執念は何によって築かれてきたのか。情報社会の急進展、変化を余儀なくされ、もがく出版業界のなかで、出版や編集の意味や人間の文化を問いかける。そのなか人間の泥臭さを交えて描く傑作。大泉洋を写真で使い、小説に映像を組み込んだ新しい試みまである。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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