61mhDSXQhbL._SX230_.jpg天正10年6月2日(1582年6月21日)、本能寺の変。その時、各武将は何を思い、どう動いたか。「決戦!関ヶ原」「決戦!大阪城」に続く、7人の作家による決戦シリーズ第3弾――。武将たちの野心、怨念、死生を立体的に描く。面白い。

「覇王の血 織田信房 伊藤潤」「焔の首級 森蘭丸 矢野隆」「宗室の器 島井宗室 天野純希」「水魚の心 徳川家康 宮本昌孝」「幽斎の悪采 細川幽斎 木下昌輝」「鷹、翔ける 斎藤利三 葉室麟」「純白き鬼札 明智光秀 冲方丁」――。

「我に叛意あり」・・・・・・。なぜ明智光秀は、天下人目前の織田信長を討ったのか。それぞれの業が描かれる。


新・所得倍増論.jpg「潜在能力を活かせない"日本病"の正体と処方箋」が副題。「所得倍増」といっているのは、「日本のGDPは世界で3位」「日本の輸出額ランキングは世界で4位」などといっていないで、「1人当たり」で見よ。「日本の生産性は先進国の中で最も低く(27位)、それに比例して所得も最下位」という現実を見よ。潜在能力はある。やるべきことをやり、それを発揮すれば、貧困、国の借金、社会保障問題も解決する。"人口ボーナス"のあった時代の意識を変え、「生産性」を高めよ。人口減少の時代でも経営者が意識を変え、意欲をもって進めば、「生産性」は格段に高まる――そういう。

「農業の1人当たり総生産が異常に低い」「最大の問題点はサービス業の生産性の低さ。IT活用による生産性改善が失敗している。そこで多く働いている女性は、もっと"同一労働"をすべき」「女性の非正規がふえており、同一労働をさせない経営者が問題で、女性の生産性向上は不可欠」「低学歴で安い労働者を中心に移民を迎えると失敗する」「1億人の人口維持のためには"生産性向上社会"しかない」「失われた20年は、人口減社会のなかで、国をあげて生産性改善に踏み切るのだという気概を失っていた」「"流れ"に任せる。マニュアル化。ルールが好きで融通がきかない、縦割り行政は、人口増社会の副産物」「"中小企業かわいそう"現象。企業が多いとオーバーヘッドという固定費が増え、社員という労働者にしわ寄せが向かう」「生産性を上げることは、賃金を上げる経済をめざすこと。それは期待できる追加需要が発生し、国も公共投資ができることになる」――。そして「日本の潜在能力にふさわしい1人当たり目標を計算する」「輸出は3倍に増やせる」「農産物は8倍に増やせる」「GDPは770兆円まで増やせる」「生産性を上げるカギは首都・東京だ」という。生産性や経営者の意識改革を訴える。


九十歳。何がめでたい.jpg日本人が脆弱になっている。相手にばかり気を使って、ストレスをため込んでいる。親は子を甘やかして、どやしつけないし、教師も叱らない。マスコミも変で軽薄すぎる。おかしなこと、おかしな事件も多いが、どうも世の中は変だとも思っていないようだ。そんな時代にズドーンとストレート球を投げる。そして世の「正論」「・・・・・・したらまずいんじゃない」のたぐいを打ち砕く。痛快。思考・感性の原点、原像を呼び起こしてくれる。

「『文明』は我々の暮しを豊かにしたかもしれないが、それと引き替えにかつて我々の中にあった謙虚さや感謝や我慢などの精神力を磨減させて行く。・・・・・・もう『進歩』はこのへんでいい。更に文明を進歩させる必要はない。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力である。私はそう思う」・・・・・・。

「来るか?日本人総アホ時代」「人生相談回答者失格」「子どものキモチは(司法と責任、賠償)」「妄想作家」「蜂のキモチ」「覚悟のし方」「懐かしいいたずら電話」「思い出のドロボー」「平和の落し穴」「老残の悪夢」「いちいちうるせえ」「答は見つからない」「テレビの魔力」「おしまいの言葉」――全二十八編、面白い。


コンビニ人間.jpg子どもの頃から風変わりな女性、古倉恵子。36歳、未婚、大学卒業後もずっとコンビニでバイトをして18年目。恋愛経験もなく、食事もコンビニ食。同窓生から不思議がられてもマニュアルの存在するコンビニでの「部品」としての日常が安定をもたらしている。そこに新入りの男性・白羽がやってきて、奇妙な同居生活に至り、周りからは、やっと"人並み"と祝福を受けるが、恵子の違和感はぬぐえない。

この社会で"異物"として、はじき出される人間とは。"普通"とは、"正常"とは。制度化され、マニュアル化され、部品となる人間の同調と違和感をくっきりと描き出すとともに、個性と病理のはざまをも王手飛車のようにあわせて描いたきわめて面白い作品。


トランプ思考.jpgトランプ大統領が誕生するや、批評・解説のトランプ本が多数出ている。本書はトランプの肉声、しかも最近のものではないから大統領選挙用に脚色されていない。トランプ自身のウェブサイトに書いた記事を中心に49篇がまとめられたエッセイ集であり、2010年9月にPHP研究所より刊行された「明日の成功者たちへ」を改題し、再編集したものだ。

「自分自身と自分の仕事に噓をつくな」「人生で成功するには常識とハードワークが必要だ。大事なのは新しい刺激に目をとめること、頭と五感を開かれた状態にしておくことだ」「即断力を養うために学ぼう。即断力は訓練と自己鍛錬によって身につく」「環境の変化はめまぐるしい。ついていけなければ脱落する。何をするにせよ、成長を止めてはならない。現状に満足してはならない。学び続ける癖をつけよう」「挑戦。高次元の自己にチャンスを与えよ」「成功者には、経験、人格、知識の共通項がある」「チャンピオンには、耐えてきた練習量、払ってきた犠牲・勇気がある。発想のスケールが大きい」「人生はアート、仕事はアートだ。私の仕事は、職人技と芸術の両方を兼ね備えており、絶対に妥協はしない」「物事を関連づけて考えられるようになろう」「恐怖心を忍び込ませるな。問題に対処し解決する姿勢を身につければ、成功の可能性は広がる」「ビジネスの成功は、適正、努力、運の総和だ」「短く、早く、単刀直入に事を成せ」「自分のエネルギーの流れを維持するには、勢いに気持ちを注げ」「打たれ強く、意志を強く持ち、学ぶことに貪欲であれ」「最高の人間を集めよ」「ポジティブに考えるとともに、現実も忘れるな」「目的を見出し、目的に生きよ」「用心を怠るな」「チームワーク。好きな人たちと仕事をしよう」・・・・・・。

トランプのエネルギー、アクティブ、合理性、不屈、スピード、学びへの貪欲、妥協しない、挑戦、チームワーク――いずれもすさまじい。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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