激動の世を生きた大名・茶人・建築作庭家の小堀遠州が到達した境地と世界が描かれている。「茶とは何か」「人が生きる道とは」という根源的命題に貫かれた生涯が淡々と語られる。
小堀遠州(1579~1647)の生きた天正、文禄、慶長(1596~1615)、元和(1615~1624)、寛永(1624~1644)、そして正保の時代は激烈・苛烈な時代。
千利休――古田織部――小堀遠州と連なる大茶人の道。しかし、それぞれの生きる環境は激流であるがゆえにかなり異なる。遠州を取り巻く人間群はすさまじい。千利休、古田織部は勿論、豊臣秀吉、秀長、石田三成、徳川家康、秀忠、家光、後水尾天皇、藤堂高虎、伊達政宗等・・・・・・。それぞれとの出会いを振り返り、「茶とは」「人が生きるとは」を語っている。
「かつて利休が好んだ黒楽茶碗の傲然とした様が脳裏に浮かんできた。織部もまた、茶人としてのおのれを貫くために、天下人に抗おうとしているのではないだろうか」「天下太平の茶を点てたい」「天下ではなく、おのれの安寧のために天下人に媚びる茶を点てようというのか」「ひとは生きていく限り、この世の悲しみを負わねばならぬようです。わたしたちにできるのは、悲しみのあまりにこぼれた涙の一滴を、飲み干すことだけではないでしょうか」「この世の見栄や体裁、利欲の念を離れて、生きていることをただありがたしと思うのが茶だ(伊達政宗との対話)」「利休殿が言った、泰平の世の茶人とはそなたのことらしいな」「母に疎まれ、弟を殺した者はわし(政宗)や上様(家光)のみではない。・・・・・・そこがお主の茶が退屈なところよ」「利休殿は、罪業を背負った者が点てるのが茶なのだと思われていたのではないか」「利休殿と織部の茶にあって、お主に無いのは、罪業の深さだ」「平心はわたしが目指した茶の心でもある(遠州)」・・・・・・。
柱離宮、大徳寺に移設した孤篷庵の<忘筌>。庭にも茶にも遠州の境地が現れている。「怨みに報いるに思いを以てするのが茶の心だ」「わたしは、川を進む一艘の篷舟(とまぶね)であったと思う。・・・・・・されど、孤船ではなかった」・・・・・・。正保4年2月6日、遠州は逝去、大徳寺の孤篷庵に葬られた。
「まさか」が、常に起きる時代だ。気象も政治も経済も社会もだ。変化激しき時代、スピードの時代をどう乗り越えるか。未来を志向するには、そこで起きている変化を的確に分析、判断することだ。
5章から成る。「『Brexit』から始まるまさか」は、英のEU離脱の衝撃と明年のヨーロッパ主要国の選挙などの底流を分析する。「『ヘリマネ狂騒国』のまさか」は、バーナンキによるヘリコプターマネー政策と日本の金融政策。「『中国の脅威』のまさか」では、今年度の中国公船の尖閣諸島周辺への侵入にはじまり、中国と米、日、韓等の戦略。「『脱グローバル化』のまさか」ではトランプ、クリントン、アベノミクス。分析はトランプ大統領誕生となった今でも適格だ。「『課題先進国・日本』のまさか」で日本経済の国民意識、労働生産性の低下、第4次産業革命、働き方改革の意味等が語られる。
いずれも「まさかの時代」の今、世界で何が起きているかを生々しく分析している。
在宅医療の生々しい現場。嬉しいことも、驚いたことも。汚くて足を踏み入れるのも躊躇する家も、訳ありの家も、虐待や放置も、孤独で医者の顔が見たいという人や電話をする人もいる。看取りもする。訪問診療も介護サービスの一つと混同しやすく、文句も相当いわれる。「患者さんと会話のできる医者が在宅医療に向いている」「私たちは患者さんに寄り添っていたい」という。
在宅医療を専門にやっているクリニックがほとんどない頃に、在宅医療に特化した診療所にチャレンジした島田さん。凄い現場、しかし、血の通った温かい医療によって心が通い合い、喜びが生まれる。そして「在宅医療の現場は生き生きとしています」と語る。若い医師の明るさ、生命力、熱が伝わってきて、うれしくなる。
「霧の城」「満月の城」「湖上の城」の三編――。いずれも戦国の世を城を守るために仁王立ちして戦う女城主の姿、大事なものを守り抜く姿を描いている。
信長に逆らった女――岩村城主・遠山左衛門尉景任に嫁ぎ、後に飯田城主の秋山虎繁と夫婦として共に戦う珠子。戦乱に翻弄され、織田信長に振り回された珠子が、決然と自らの意志で立つ。「この霧が晴れた時には、織田勢も戦の世も消え失せていればいい」・・・・・・。
「満月の城」は、加賀、越中、能登を舞台に、畠山義綱の側室であった佐代が、上杉謙信、織田信長の狭間でわが子・義隆を守り毅然と立つ。
そして「湖上の城」。2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主・直虎」の奈美(次郎法師直虎)。奈美は井伊家22代直盛の長女として天文3年(1534)に生まれた。直盛の従弟直親(亀之丞)を婿に迎えて家を継ぐはずであったが、直満(父)、直親らが今川義元から謀叛の疑いありとされ、直親は信州に身を隠す。奈美は髪を下ろす。井伊領を狙う武田、今川、徳川の攻めぎ合い。井伊家の男たちが次々死ぬなかで、直親の嫡男・虎松の後見人として奈美は還俗。次郎法師直虎として男として生きる姿を描く。