未曾有と想定外.JPG東日本大震災の津波――。三陸の大津波は、決して未曾有の出来事ではない。「自然は過去の習慣に忠実である」(寺田寅彦)といっているが、わかっているのに「人は忘れる」。津波に「対抗する」のではなく「備える」「逃げる」ことが重要だ。「自然を征服する」のではなく、「いなす」「すかす」のが先人の知恵だ。

そして「原発」と「想定外」。「基準を守ればいい」「マニュアルを守っているからいい」のではない。「何も考えない」ではなく、日頃から訓練をして想定外のことにも咄嗟にきちんと対応できるようにすることだ。「コンプライアンスが法令遵守と訳されるが、そうではなく、社会の要求に柔軟に対応するというのが本来の意味だ」「日本の組織はマニュアル偏重主義に陥りがちだが、人は"見たくないものは見えない""聞きたくないことは聞こえない"ものだ」――。

 「組織事故」「共同体事故」「多重防護の必要性」――「失敗」「事故」について、現場を歩いて何が大切かを示してくれている。


日本経済論の罪と罰.JPG「これ以上の経済成長は必要ない、という"脱成長論"は誤りで、経済成長は重要、経済成長は七難を隠す」「人口減少・市場縮小論は誤り」などに始まり、「公共投資と成長」「日本型雇用慣行と人口オーナスへの対応」「市場原理や格差など、小泉構造改革にまつわる誤解」「TPP問題」「アベノミクスと財政再建、社会保障改革」......。

誤った経済論、スローガンや枕詞でつくられる経済論を排さないと、危機にある日本の経済と財政は本当に危いと、小峰さんは危機感を訴える。


○に近い△を生きる.JPG「正論」や「正解」にだまされるな、と副題にある。もっといえば「正義」を囚われるとか、「ねばならない」と考えすぎず、どうしたら「別解」にたどりつけるか、どうすれば絶望を乗り越えられるか、ということだ。まさに「○と×」ではなく、「どう乗り越えるか」という別解だ。

政治でも「現場を基軸に△を探す」ということになる。鎌田さんの「がんばらない」をはじめとして多くの書に接し、感銘してきた。私は「頑張るが無理しない」と走りすぎを戒めてきたが、鎌田さんは「がんばらない」けど「あきらめない」だ。「自由」「とらわれない」「"がんばらない"けどあきらめない」「○か×かで生きるのはもうやめよう。もっと自由で創作的な別解、○に近い△を見つけよう」――具体的な例が数多く紹介されている。

自身が大変なことも乗り越えてたどり着いた「境地」「境涯」の世界だと思う。


歴史認識を問い直す.JPG「靖国、慰安婦、領土問題」と副題にある。以前の「日本の領土問題――北方四島、竹島、尖閣諸島」(保阪正康 東郷和彦)と「戦後日本が失ったもの――風景・人間・国家」(東郷和彦)の二つの著作が背景にある。「2012年は日本外交敗北の年」「左からの平和ボケと右からの平和ボケと決別を」「慰安婦問題に対する対外発信の誤り(鋭敏なアンテナの必要性)」「世界をリードする、開かれた、新しい日本文明の思想を」――など、重層的に問題を剔抉し、解決の方途を提起する。

相手が何に基づき、何を考えているか。「靖国と村山談話」「河野談話と慰安婦問題」を丁寧に解き明かす。根本的には、新しい日本の国家ビジョン、日本人と現代文明という深層から迫ることができるか否か――提起されている課題は表相ではない。


謎だらけの日本語.jpg最近、日本語の変化と正しい日本語、その意味するところや起源を解説する本や報道(番組)が多いように思う。

「オートバイ、二輪なのになぜ"単車"」「"大統領"の語源は大工の棟梁か」「"紅葉"と書いてなぜ"もみじ"?」がいきなり出てくる。そして「"奄美諸島"はもう存在しません」「存在しない青山一丁目」「墨田川と隅田川」「朝三暮四と朝令暮改」「"怒り心頭"の頭は"そば、あたり"を表す(達するものではなく発する)」「"オリンピック"を"五輪"と表記したのは誰?」......。

「『"全然"は本来否定を伴うべき副詞である』は"迷信"」――明治・大正期は「すべて」「すっかり」と肯定的表現にも用いられていたが、とくに昭和20年代後半に"否定"が広まったという。「"全然"は"荘子"にも見られる古くある言葉で必ず否定と呼応するわけではなかった」と解説している。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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