冒頭の「そう、これは個人的な復讐ではない・・・・・・むしろ善意の告発というべきだ・・・・・・カタストロフィを引き起こすには二つの条件が必要だ・・・・・・ひとつは対象の本質に精通していること・・・・・・いまひとつは現象を再現する手段があること・・・・・・私は今、その両方を手にしている」――。読み終えればここに全てがあることがわかる。
防衛省技術研究本部が開発し、四星工業が設計、製造したTF-1が、侵入機にスクランブルをかけている途中、墜落する。それも2度、そして3度とそれぞれ別の要因で墜落、あるいは危機にさらされる。当初、パイロットの操縦ミスとされたことに疑問をもった四星工業の空力制御班主任・永田昌彦、そしてその部下の元気で探究心旺盛な女性・沢本由佳(主人公)。四星を去った永田の同期・倉崎、元自衛隊員・山岸光昭、そして自衛隊の後藤、岩谷、井口、事故当事者の波江一尉・・・・・・。真相に迫るこれらの人の連携、技術的知見は現場感覚もあって、臨場感、緊迫感が横溢する。面白い。本当に悪い奴は犯罪者となることを免れるようだ。
航空機の専門家でなければ到底書けない作品。興味深かった。第21回松本清張賞受賞作品。
中村元、1912年(大正元年で元と命名)~1999年。昏睡状態での45分の"最終講義"。植木さんは中村元は何を語りたかったのであろうか、と考える。「やはり中村自身が"夢"としていた普遍的思想史についてであり、東洋思想の積極的な評価を打ち出すことであったのではないか」――。「西洋においては絶対者としての神は人間から断絶しているが、仏教においては絶対者(=仏)は人間の内に存し、いな、人間そのものなのである」(中村元「原始仏教の社会思想」)。「人間の平等」の東西比較だ。
「80歳を過ぎると、やはり徹夜はこたえますね」「人生において、遅いとか早いとかということはございません。思いついた時、気がついた時、その時が常にスタートですよ。("今まさにその時"の生き方)」「慈悲、慈しみの崇高な境地」「『諸法』は『たもつもの』を意味するダルマの複数形ダルマーハの漢訳で『もろもろのことがら、事象、現象』を意味する。いかなる事象にも、その背景において『たもつもの』があると考えているのです。その『たもつもの』によって事象が成り立っていると仏教では考えました」「仏教は、無我ではなく非我を説いて真の自己に目覚めることを強調した」・・・・・・。
生涯かけての情熱と求道の姿勢を「佛教語大辞典の原稿(200字詰め)4万枚、3万語の行方不明事件を乗り越え」「佛教語大辞典と中村元選集の刊行」「比較思想の提唱」「東方研究会を母体として1973年公開講座=東方学院の開始」「足利学校の24代目の校長にも」など、息づかいが聞こえてくるように、植木さんはエピソードも交えて描いている。
時は流れるのではない。積み重ねられていく。そして"歴史を画する"衝撃的な事件や出来事も因となり、縁となり、結果となって連鎖によって時は経過する。
「客観的な事実などはない。あるのは1人1人の解釈だけ」とニーチェは言ったが、そこまで突き詰めない日常が"流れ"として続く。思考停止といわれればそうだが、むしろ考えもしないということだ。
本書を読むと、赤坂さんの勢いに連れられて時代と日常に入り込む。
「昭和の戦争と昭和天皇」「憲法の憲の意味」「漢字と日本語」「消えた空き地とガキ大将」「安保闘争とは何だったのか」「連合赤軍事件、三島由紀夫」「ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』」「1980年の断絶(暴力の残り香、戦争の残照が消えた)」「漫才ブーム、お笑いタレント(コメディアンでもなく場の調停者)」「オウムはなぜ語りにくいか」「この国を覆う閉塞感の正体」「保守派という改革派」「東日本大震災」・・・・・・。
問いを発すること、問い続けることなしに、"古い物語"が生き続ける。経済発展とGDPが至上の価値として続く。東日本大震災(津波、原発事故)において、"新しい物語"が可能であったはずなのに、なかなか紡げなかったし、日本社会は"古い物語"にしがみつこうとした。「人は物語に縛られ、逆に物語に操られてしまう存在だ」「物語のつくりかたは、神のつくりかたに似ている。神とは、物語、フィクションの最たるものかもしれない」という。
戦後は私自身の歴史そのもので、生々しい。思い出しながら、考えながら読んだ。
半沢直樹シリーズの最新作。経営危機に瀕する帝国航空をどう再建するか。劇的な政権交代で国交大臣となった若き白井亜希子は、前政権の有識者会議の出した再建案を覆し、突如、タスクフォースを立ち上げる。そして、巨額な債権放棄を銀行に迫る。半沢のいる東京中央銀行も500億円という巨額になる。旧産業中央銀行と旧東京第一銀行の合併した東京中央銀行は、いまだに様々な場面で旧行の鍔迫りあいがあるうえ、過去の隠蔽してきた乱脈融資・問題融資が隠されていた。
帝国航空タスクフォースは、白井の辞任、その後ろ立ての進政党重鎮の箕部啓治の失脚によって空中分解する。いかにも巨悪と戦う半沢直樹で、現実とは当然違うが、物語としては面白い。
