永遠の0書籍写真.JPGあの戦争はいかなるものであったのか。あの戦争の最前線はいかなるものだったのか。命がけの最前線を知らぬ者が、命令を下す側に立った時、いかに過ちを犯し、いかに逡巡し、支離滅裂なものになり果てるのか。現場を知らぬエリートとマスコミがいかに悲劇を生み出すか。百田尚樹さんの「永遠の0(ゼロ)」は、真珠湾、ミッドウェー、ラバウル、ガダルカナル、沖縄の戦いの最前線を、世界に轟く名戦闘機"零戦"に乗る「臆病者」「命を惜しむ男」「人間としての尊厳と愛を貫いた男」「妻子のために生きて帰ることを約束した倫たる男」である熟練の宮部久蔵の心中に迫ることによって描く。その男がなぜ特攻に身を捧げることになったのか。時代がいかなるものになっても、人間として死守しなければならないものとは何か――ギリギリの極限状況のなかで描く本格小説。


心.JPG姜尚中さんが亡くなった息子と感じた西山直広君とのメールのやりとりから成る小説。直広君は心友・与次郎君の生と死に導かれ、東日本大震災における遺体の引き上げという過酷なボランティア「デス・セービング」に取り組む。ゲーテの「親和力」が基調音を奏でる。
 
親友の死、裏切り、良心の呵責、募る恋、さまざまな親和力、大地震、デス・セービング、PTSD......。不可思議な人間関係、人と人との出会いのなかにこうした親和力や分離力が働くのは、宇宙広しといえども人間だけだ。諸法は実相であり、諸法の実相を如実知見せよ。無常の中にも常住を見よ。常住壊空のなかにも永遠性を信じ真面目に生き抜け――そういっているようだ。

最後は姜尚中さんの息子さんの最後の言葉「生きとし生けるもの、末永く元気で」で締めくくられている。この言葉があまりにも重いために、姜尚中さんは、ピュアで普通の小説にしたのだと私は思った。


人類哲学序説.jpg欲望、人間中心主義、自然との対立概念、科学技術優先――。そうした近代西洋文明批判、近代合理主義批判がなされて久しい。むしろ最近では、骨太の文明論は少なくなっている感すらある。しかし、梅原猛さんは、それに代わり人類文化を持続的に発展せしめる原理が、日本文化のなかに存在する。それは「草木国土悉皆成仏」だという。

文明と文化を全的に把握したうえで、真正面からナタを振り降ろすがごとき大きな肺活量の文明論だ。天台本覚思想、縄文文化、アイヌ文化。そして西洋のデカルト、ニーチェ、ハイデッガーの哲学。更にヘブライズムとヘレニズムという西洋近代文明の源を示しつつ、西洋哲学から人類哲学への転換を説く。「草木国土悉皆成仏」「森の思想」だ。

生命の尊厳、色心不二、草木成仏、一念三千論、五陰・衆生・国土の三世間・・・・・・。私はそうしたことを想いつつ読んだ。壮大な人類哲学は、想いがあふれなければ、とうてい書けるものではないと思った。


戦争の条件.JPG国際政治学の白熱授業を受けているようだ。「見方、考え方」を確立するには、分析する根拠、道具立てがいる。巻末に「ブックガイド」が載せられているが、それら全てを土台としたうえで、藤原さんは思考の道標を示してくれる。「"戦争の条件"には、戦争を避けるための条件と、それでも戦争に訴えなければいけないときに満たすべき条件という二つの意味を、込めている。暴力が国際政治の現実であることは否定できない。暴力に頼ることなく戦争を回避することもきわめて難しい。だが、その現実のなかには常に複数の選択が潜んでいることも見逃してはならない」「暴力への依存を最小限に留めながら平和を実現する方法を具体的な状況のなかで探ることであり、そこでは戦争の条件と平和の条件が裏表のように重なり合うのである」――。「戦争違法化と好戦国家の排除が平和の条件」「歴史問題は時が解決するという議論がある。だが事実は違う」......。「広島の語り、南京の語り、靖国の語り」などはきわめて印象的であったが、藤原さんは現実の問題の根源を剔抉してくれている。


七つの会議.JPG大手総合電機会社の小会社で起きた、ネジをめぐる重大な不祥事。なぜこうした事件が起きたのか。会議というが、物事が決まっていくのは、表の会議だけではなく、その場、その場の話し合いや都合、ごまかし、成り行きの連鎖だったりする。

 「サラリーマンって難しいね、お父さん」と万年係長の八角の妻にしみじみ言わせている。また「追い詰められたとき、ひとが変わる」とも。

 「偽装、隠蔽」「組織は人を追い詰める」「追い詰められて一線を越える人、踏みとどまる人」「道義と意思と現実の生活」「人が魂を売る時」「組織の危機管理」――。現在の社会にある人間心理を池井戸さんは巧みに描いている。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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