今まで予想してきた本とは全く違う。
巨大災害有事における復興の道筋を、災害対策基本法、武力攻撃事態法、災害救助法、被災者生活再建支援法、原子力災害対策特別措置法、さらには復興基金の仕組みなどをその定義と成り立ちから説明、どうすれば復旧・復興ができるかを示している。
私自身が携わり成立・改正してきた法律だ。
米国の9・11同時多発テロ、ハリケーン・カトリーナへの政府の対応とともに、林さん自身がかかわってきた阪神・淡路大震災の対応などを検証する。
民間の力の大切さ(民間主導)、常時からのインフラ整備、人口回復政策、復旧でなく産業構造の転換をめざす創造的復興、地域への愛着や未来への希望も含めた総合力のある経済復興の必要性など、阪神・淡路大震災の教訓を導き出す。
そして東日本大震災――。
グリーン・リカバリー、人的資本の回復、アジアの成長を取り込む戦略とそのための港湾をはじめとする公共事業・・・・・・。「大災害は、新しい歴史のスタートだ」として希望のもてる提言をしている。きわめて具体的、教訓的。
小惑星サンプルリターン計画を成功させ、イトカワの貴重な資料を与えてくれるとともに、夢や希望をも与えてくれた「はやぶさ」。
川口さんは、「減点法を止めて、加点法にしよう」「"失敗する"チャンスを与えよう」「迷うくらいなら、どっちでもよい」「背伸びするクセをつけよう」など、24の提言を示す。かなりギリギリの所での腹の決め方、つまらない方法論・枝葉をそぎ落とせ、スタッフが上目遣いでトップの顔色を見るような「ヒラメになるな」、挑戦しない限り未来はこない(悔いを残すな)・・・・・・。
JAXAiが事業仕分けで閉館したが、裾野を削りとったら偉大な業績は達成できない。50年後、100年後の日本を繁栄させるタネを播けと言う。
「その不易なるゆえんを尋ねて」と副題にある。昭和の時代はまさに激動・激変。そのなかで一貫して師父・指南役と仰がれ続けた安岡正篤先生とその教学。精神的主柱ともなっていたその思索と思想を荒井桂氏が全的に述べる。「よくぞ」というような大変な作業だったと思える。感謝。
「古人の跡をもとめず、古人のもとめたる所を求めよ」(南山大師の言、芭蕉が弟子に伝えたという)「どうも読めば読むほど、探れば探る程、自分の考えて居ること、欲すること、何もかも皆万事に古人が道破して居る。可笑しくもあり、癪でもあり、有難くもある。先生畏るべく、後世愛すべし」――安岡先生の息づかいが伝わる思いだ。
帝王学・宰相学(帝範・臣軌の古典を重視)、東洋アフォリズム(筒明が蔵する無限の味わいを尊ぶ)、和魂漢才(外来文化の受容と変容の伝統に立脚)――それぞれの系譜を荒井氏は語る。そして、道元、山鹿素行、熊澤蕃山、佐藤一齋を淵源として示す。勿論、「史記」から「貞観政要」「宋名臣言行録」「菜根譚」・・・・・・。東洋思想の集大成、人間学の結実ではあるが、本書を読むと日本とは、日本人とはと問いかけた時、誇りが浮かびあがってくる。
TPPと米国の戦略。それに比して戦略性なき日本。
グローバリゼーションとは何か。アメリカナイゼーションとは何か。グローバルスタンダードとは何か。日本型慣行、日本型経営とは何か。日本が守るべき文化とは、システムとは何か。何を守り、何を世界に、米国に合わせるのか。
この20年来――。85年のプラザ合意からBIS規制、労働法制の規制緩和、会計基準、食品の安全性、医療制度、公共事業(脆弱国土を誰がどう守るか)。1つ1つ検証してみたらどうかとの関岡さんの問いかけだ。
米国は、日本を開放させ、企業も農地も労働も「投資」「買収」の対象とし、従業員のリストラ、短期の株価上昇を担う。グローバリゼーションの真実、そして各国の文化・伝統・国土・人間観・安全観――違いがありながらグローバル展開する世界。
TPP論議の中身を剔抉する問題提起の書。
ポプラ社が出版した百年文庫。全部で100冊。この10月に100巻完結。全てに名短編が3つずつ並ぶ。「顔」では、ディケンズ、ボードレール、メリメ。「水」では伊藤整、横光利一、福永武彦。「肌」では丹羽文雄、舟橋聖一、古山高麗雄。「祈」「空」「域」「客」「嘘」・・・・・・。
全部で100冊、300短編だ。
いずれも人間の内面を、ひだを、生命空間を、素朴な人間関係を。またいずれも文章に切れとこくがある。そして、かつての時代が浮かびあがる。良き時代、貧しかったが、時間が人間を中心にゆったりと流れ、気取りもない。生活が、愛が、にじみ出る。
この喧噪の時代、人生と生命、生きるということを考える味わいのある良書ばかりだ。
ポプラ社に感謝したい。