紅梅.jpg小説の形をとっているが、とてもとてもそんなものではない。

吉村昭氏の壮絶なガンとの闘い、そして夫人とその家族、医師たちが懸命になって支える。
つらくて息苦しくなるし、夫人が自分を責めているのもつらいし、吉村氏がギリギリまで気を配る姿にも言葉を失う。

言語絶する世界と情愛、無常と常住の十字路に人は立つ。


いよいよ最後の円高がやってきた.jpg超円高、中国・韓国の為替対応、それに比しての日本無策。

超円高に苦しみながらも今、世界的な商品価格高騰・物価上昇・インフレに対して円高が吸収している面があるが、浅井さんは「円高と空洞化」から「円安・インフレ」へ、そして日本経済が破産する最悪のシナリオを描く。

「先進国には財政危機懸念、新興国にはバブル・インフレ懸念がくすぶり、しかも金融市場が一体化しているがゆえにどこの震源地からでも財政インフレがもたらされる」ともいう。


いま戦争と平和を語る.jpg井上亮氏が聞き、半藤一利氏が答える。

平易に語れる(書ける)ということは、わかっているがゆえ。わかるには、文献を読み込むだけでなく、現場の肉声を聞いて実感することが加わっている。

たとえば半藤さんは、文春に入社して、いきなり坂口安吾に泊り込みで会う。「本当に常識的な見方」「ごくごく常識的な合理的な推理をするということは歴史を学ぶためにいちばん大事」「八紘一宇・・・・・・そんな馬鹿な話があるか」――。

永井荷風との出会いのなかから、永井荷風が語られる。

漱石の小説は、日露戦争後のいい気になって大国主義に走る日本への「文明批評」だと、漱石の内側から語ってもいる。軍人にも会って話を聞く。語る人と黙する人がいるが、その沈黙も言葉だろう。

日露戦争後、勝利で堕落した日本人。満州事変、2・26事件、三国同盟の昭和の3つの失敗。そのなかでの昭和天皇や各界のリーダーの思考と行動。司馬遼太郎と松本清張の近代史観。

何を国家の機軸とするのか。流されるな。戦争や軍というものを知れ。大切なのはリアリズムと常識。半藤さんの「歴史は人間学」は深い。


私の個人主義.jpg夏目漱石(1867-1916)の「現代日本の開化」「中身と形式」など明治44年の講演4篇と大正3年の「私の個人主義」。
明治44年には漱石は44歳、49歳で亡くなるから5年前ということになる。

時代の激変・西洋文明の激流と対峙し、苦闘する思想家・漱石が自己一身にそれを受けて考えを確立する。

「現代日本の開花は皮相上滑りの開花である」「西洋の開花は内発的であって、日本の現代の開花は外発的である」「上滑りと評するより致し方ない。しかしそれが悪いからお止しなさいというのではない。事実已むを得ない、涙を呑んで上滑りに滑って行かなければならないというのです」といい、「私には名案も何もない。ただ出来るだけ神経衰弱に罹らない程度において、内発的に変化して行くのが好かろう・・・・・・」――。

「私の個人主義」では、ロンドンにおいて苦悩を突き抜け、他人本位を脱して「自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなった」と語る。「私の他人本位というのは、自分の酒を人に飲んで貰って、後からその品評を聴いて、それを理が非でもそうだとしてしまういわゆる人真似を指すのです」といわゆるわかったような学者・知識人にも厳しい。安心立命や「是の法法位に住して世間の相常住なり」を想起する。

「中身と形式」も「文芸と道徳」も、「道楽と職業」も、究極まで自己を追いつめたところの新たな論理を開示している。


大災害の経済学.jpg今まで予想してきた本とは全く違う。

巨大災害有事における復興の道筋を、災害対策基本法、武力攻撃事態法、災害救助法、被災者生活再建支援法、原子力災害対策特別措置法、さらには復興基金の仕組みなどをその定義と成り立ちから説明、どうすれば復旧・復興ができるかを示している。
私自身が携わり成立・改正してきた法律だ。

米国の9・11同時多発テロ、ハリケーン・カトリーナへの政府の対応とともに、林さん自身がかかわってきた阪神・淡路大震災の対応などを検証する。

民間の力の大切さ(民間主導)、常時からのインフラ整備、人口回復政策、復旧でなく産業構造の転換をめざす創造的復興、地域への愛着や未来への希望も含めた総合力のある経済復興の必要性など、阪神・淡路大震災の教訓を導き出す。

そして東日本大震災――。
グリーン・リカバリー、人的資本の回復、アジアの成長を取り込む戦略とそのための港湾をはじめとする公共事業・・・・・・。「大災害は、新しい歴史のスタートだ」として希望のもてる提言をしている。きわめて具体的、教訓的。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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