はやぶさ式思考法.jpg小惑星サンプルリターン計画を成功させ、イトカワの貴重な資料を与えてくれるとともに、夢や希望をも与えてくれた「はやぶさ」。

川口さんは、「減点法を止めて、加点法にしよう」「"失敗する"チャンスを与えよう」「迷うくらいなら、どっちでもよい」「背伸びするクセをつけよう」など、24の提言を示す。かなりギリギリの所での腹の決め方、つまらない方法論・枝葉をそぎ落とせ、スタッフが上目遣いでトップの顔色を見るような「ヒラメになるな」、挑戦しない限り未来はこない(悔いを残すな)・・・・・・。

JAXAiが事業仕分けで閉館したが、裾野を削りとったら偉大な業績は達成できない。50年後、100年後の日本を繁栄させるタネを播けと言う。


安岡教学の淵源.jpg「その不易なるゆえんを尋ねて」と副題にある。昭和の時代はまさに激動・激変。そのなかで一貫して師父・指南役と仰がれ続けた安岡正篤先生とその教学。精神的主柱ともなっていたその思索と思想を荒井桂氏が全的に述べる。「よくぞ」というような大変な作業だったと思える。感謝。

「古人の跡をもとめず、古人のもとめたる所を求めよ」(南山大師の言、芭蕉が弟子に伝えたという)「どうも読めば読むほど、探れば探る程、自分の考えて居ること、欲すること、何もかも皆万事に古人が道破して居る。可笑しくもあり、癪でもあり、有難くもある。先生畏るべく、後世愛すべし」――安岡先生の息づかいが伝わる思いだ。

帝王学・宰相学(帝範・臣軌の古典を重視)、東洋アフォリズム(筒明が蔵する無限の味わいを尊ぶ)、和魂漢才(外来文化の受容と変容の伝統に立脚)――それぞれの系譜を荒井氏は語る。そして、道元、山鹿素行、熊澤蕃山、佐藤一齋を淵源として示す。勿論、「史記」から「貞観政要」「宋名臣言行録」「菜根譚」・・・・・・。東洋思想の集大成、人間学の結実ではあるが、本書を読むと日本とは、日本人とはと問いかけた時、誇りが浮かびあがってくる。


国家の存亡.jpgTPPと米国の戦略。それに比して戦略性なき日本。

グローバリゼーションとは何か。アメリカナイゼーションとは何か。グローバルスタンダードとは何か。日本型慣行、日本型経営とは何か。日本が守るべき文化とは、システムとは何か。何を守り、何を世界に、米国に合わせるのか。

この20年来――。85年のプラザ合意からBIS規制、労働法制の規制緩和、会計基準、食品の安全性、医療制度、公共事業(脆弱国土を誰がどう守るか)。1つ1つ検証してみたらどうかとの関岡さんの問いかけだ。

米国は、日本を開放させ、企業も農地も労働も「投資」「買収」の対象とし、従業員のリストラ、短期の株価上昇を担う。グローバリゼーションの真実、そして各国の文化・伝統・国土・人間観・安全観――違いがありながらグローバル展開する世界。

TPP論議の中身を剔抉する問題提起の書。


20111111-book顔1.png20111111-book水2.png20111111-book肌3.png ポプラ社が出版した百年文庫。全部で100冊。この10月に100巻完結。全てに名短編が3つずつ並ぶ。「顔」では、ディケンズ、ボードレール、メリメ。「水」では伊藤整、横光利一、福永武彦。「肌」では丹羽文雄、舟橋聖一、古山高麗雄。「祈」「空」「域」「客」「嘘」・・・・・・。

全部で100冊、300短編だ。

いずれも人間の内面を、ひだを、生命空間を、素朴な人間関係を。またいずれも文章に切れとこくがある。そして、かつての時代が浮かびあがる。良き時代、貧しかったが、時間が人間を中心にゆったりと流れ、気取りもない。生活が、愛が、にじみ出る。

この喧噪の時代、人生と生命、生きるということを考える味わいのある良書ばかりだ。

ポプラ社に感謝したい。


20111107-book1.png20111107-book2.png話は戦国乱世、天正6年(1578)から始まり、慶長8年(1603)あたりまで。信長、秀吉、そして関ヶ原、家康へと進む大激動の時代――そこで生きた三人の二代目。上杉景勝、毛利輝元、宇喜多秀家の三人の生き残りをかけた苦悩・智慧・勇気が描かれる。

毛利元就の三本の矢、隆元・吉川元春・小早川隆景。その毛利を引き継いだ隆元の子・輝元は叔父の二川(吉川、小早川)と相談して事を進めるが、二川の考えも重なり、思うようにいかない。毛利家が大であるがゆえの苦闘でもある。その外交僧
安国寺恵瓊の動きも活発だ。

宇喜多八郎(秀家)は、したたかな宇喜多直家の悲願の子。ピタッと秀吉について、その意味では路線・姿勢に揺れはない。母親・お福の男まさりの智慧が描かれ、その発する言葉はじつに面白く、的確。

偉大な上杉謙信(妻をもたなかった)のあとを継ぎ、生き抜いた景勝。そこには2人、直江兼続と謙信の姉であり、景勝の母・仙桃院が支える。

お福と仙桃院の2人の女性が、この小説では際立つ。

「二代目は先代の苦しみを知るが、初代は二代目の苦労を知らない」――ダイナミックな歴史小説。

<<前の5件

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

私の読書録アーカイブ

上へ