いよいよ(東日本大震災をきっかけに)本物の大空洞化が始まっている。高い法人税、がんじがらみの規制、円高、電力不足・・・・・・。グローバル企業は日本脱出を狙い、ロイターの調査では日本の21%の企業がビジネス拠点を変えると答えた。
救済政策は「強きを助け、弱きをくじく」が本来だ。「弱きを助ける」のは救済原理に基づいて行なう社会福祉政策だ。そうしたことから「責任回避システムが 社会を壊す」「大空洞化時代がはじまる。開国を急げ」「電力産業はどうあるべきか(冨山さんは産業再生機構のCOOだっただけに東電賠償をはじめとしてリ アルな分析をしてみせる)」「東京の集積力を磨き上げよ」「フロンティアを目指し、イノベーションを(東北を課題最先進地域に)(アジアをフロンティア に)」等を示し、「若い人の台頭、世界に打って出よ」と結ぶ。政治・行政の中に入った二人だけに、リアル。
1850年以降の歴史を俯瞰している。しかも世界と日本、そして経済と文化と官僚という視点が常にある。「東日本大震災は"戦後日本"の"終わり"を告げ
る大災害である。・・・・・・まさしく戦後日本の敗戦だ」という。たんなる敗戦ではない。明治維新の時も、あの昭和の戦争の時も、20年にわたる「下り
坂」、低落と言う足掻きと苦闘の果てのもの。今度も20年にわたる下り坂の末の大震災、つまり「戦後日本の終わり」を告げる第三の敗戦だと指摘する。
この本は読んで楽しい。伊集院さんが、涙も喜びもやさしさもいっぱいため込んで、自分の気持ちのまま生きているからだろう。粋で他者にやさしい。言葉はビシッと厳しい。たとえば新成人の若者への「大人の仲間入りをする君たちへ」で8つ言っている。兄貴が愛情こめて言っているようでいい。「妻と死別した日のこと」が出てくる。生老病死の極みでとったとっさの行動、そして「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」と結んでいる
「"無縁死"3万2千人の衝撃」を追ったNHKスペシャルをはじめとした取材の集大成。
深刻な現実が水面下で進行している。社会が変質している。他人に興味を持たない社会。血縁が希薄化し、家族・親族という社会の最小単位、絆が崩れる。地域のつながりも喪失し、孤独と不安が深くしのび寄る社会。
「無 縁死=行旅死亡人」「広がる直葬」「急増する遺体の"引き取り拒否"」「単身化の時代」「都会に移る高齢者」「共同墓」――それらは借金の連帯保証人、離 婚、病気、生涯未婚、雇用の悪化など多くのきっかけがあるし、誰にでもあることだ。もっというと「誰にも迷惑をかけたくない」という日本人の心がある。
「つながりをつくろう」「迷惑なんかじゃない」「頼って頼られて、それでいいじゃないか」と行動を起こすなかで、「他人に興味を持たない社会」を「人、そして、"いのち"を思いやれる社会」に変えようと取材班は呼びかけている。
「暴走する資本主義」(2008年)のあのロバート・ライシュの最新作。ハーバード大教授やクリントン政権の労働長官をはじめ3つの政権に仕え、現在、カリフォルニア大学バークレー校教授。オバマ大統領のアドバイザーでもある。
近代米国資本主義の第一期(1870年?1929年)は、所得と富の集中が高まった時代であり、第二期(1947年?75年)は繁栄を広くみなで共有した時代、第三期(1980年?2010年) は、繁栄がまた富裕層に集中した時代。リーマン・ショックの激震をしのいだ今、その余震が始まったばかりである現実を直視し、第四期として、繁栄を幅広い 層で共有する時代をつくることだ。資本主義は富が集中する仕組まれたゲームであり、その暴走を止めなければならない。問題は、富裕層に富が集中している状 況を変え、中間層の購買力を増すことによって経済の好況を維持すること(米国人が自分の資力以上の生活をして不況がもたらされたのではない)。本書は大恐 慌に対してマリナー・エクルズがとった洞察に始まり、現在は中間層のための新しいニューディール政策が重要だとし、「給付つき税額控除(負の所得税)」 「炭素税」「富裕層の最高税率の引上げ」「失業対策よりも再雇用制度を」「教育バウチャーの発行」「メディアケア」などを提起する。あわせて、オバマ政権 とウォール街。政治とカネ、民衆の政治への怒り、などについて、現在のアメリカ政治と経済について率直な提言をしている。