政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.108 民泊を制度づける新法成立!/安全・安心へ違法民泊を取り締まり
民泊を制度づける住宅宿泊事業法が成立した。外国人旅行客が急増し、ホテル不足が大きな課題となっているなかで、アンダーグランドでいつの間にかマンションの一室に外国人が宿泊するなど、いわゆる民泊問題が課題となっていた。これをきちっと制度づけ、住民の不安や問題を解消して新たな時代に対応しようとした制度である。私が国交大臣時代から慎重に検討してきたもので、これが制度化された意義は大きい。
「観光立国日本」を掲げて安倍政権がスタートし、私は観光庁を所管する役割を担った。最初の一年目(2013年)、それまで800万人台であったインバウンドの外国人観光客が、ついに1000万人を突破した。ビザの緩和や諸外国へのキャンペーン、WiFi環境の整備、多言語対応、そして後には免税店の拡大等々が結実したものだ。そして、2014年には1341万人、2015年には1974万人、そして昨年2016年には2404万人へと勢いを増した。「2000万人になれば景色が変わる」といい、「2020年、外国人観光客2000万人」を目標にしていたが、すでにそれを超えたわけだ。今年も、好調は続いており、2700万人を超えると見込まれている。経済効果も3.7兆円超と急増し、素晴らしい。「観光立国日本」にまっすぐに向かっている。
このなかで、ホテル不足は国内のビジネスマンにも影響を与える大きな問題となっている。そして、アンダーグランドでアメリカの企業がシェアリングエコノミーと称してマッチングをし、大きな不安要素ともなってきたのが現状だ。今回、そこに手を入れたのが、住宅宿泊事業法だ。
第一には、この法律は健全な民泊は認める一方で、違法民泊はきっちり取り締まっていくのが狙いだ。今実態が先行している民泊は、どこで、誰が営業しているのかが分からない。民泊仲介サイトには違法民泊が掲載されたままで、仮に摘発されても罰金3万円と軽微だから、やり得となってしまう。しかし、この法律が施行されると、民泊の営業には、行政への届け出と玄関での標識の掲示が必要となる。標識がないのに外国人旅行者が頻繁に出入りしている民泊は違法だから、行政に通報されて取り締まることになる。また、罰則も強化される。さらに、法律の施行後は、違法な民泊を載せている仲介サイト業者に対し、サイトからの削除も命令できるようになる。
第二に、健全な民泊が守るべきルールをこの法律は定めている。今、違法民泊で起きている近隣トラブルの防止のため、この法律では、宿泊者に対し、夜騒がないことやゴミ出しルールの遵守を説明することを義務付け、苦情が出た場合の解決も義務付けている。また、本人確認と宿泊者名簿の作成、火災時の円滑な避難のための非常用照明の設置等、ホテル・旅館業と同様の安全規制を課している。さらに、今回重要な点は、空き家活用、すなわち家主不在型の民泊の場合に、国の登録を受けたプロの管理業者に、管理運営を委託する義務を課した点だ。シェアリングエコノミーの問題点は、特に家主不在型の民泊の場合、誰に苦情相談をすればいいのか、分からなかった点だ。騒音等があった場合、標識に記載された管理業者の連絡先に苦情も言えるし、行政にも苦情相談ができる。
このように、①民泊に関わる提供者(家主等)、②民泊管理運営業者、③民泊仲介サイト業者・・・・・・それぞれに対し、行政への届出または登録を義務付け、必要な規制を課したうえで、行政の立入検査・報告徴収や行政処分、罰則を行えるようにした。これが今回成立した住宅宿泊事業である。
健全な民泊が普及すれば、日本の生活・文化の体験や、交流をしたい外国人旅行客の宿泊ニーズに対応するだけでなく、国内旅行者の農業体験やビジネスマンの出張等の宿泊も進む。さらに空き家の活用・適正な管理も期待できよう。
この住宅宿泊事業法により、違法な民泊が解消され、多様化する宿泊ニーズに対応した健全な民泊が普及するかどうか――。大切なのはこれからだ。法律の施行に向けた準備が滞りなく進むよう今後の動きを注視していきたい。