プリズンブッククラブ.jpg「わたしは、老眼鏡をはずし、フランクの日記帳を脇のテーブルに置いた。この世界には、なんとさまざまな囚われびとがいることだろう。監獄の囚人、宗教の囚人、暴力の囚人。かつての私のような恐怖の囚人もいる。ただし、読書会への参加を重ねるたびに、その恐怖からも徐々に解放されてきた」――。

副題に「コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」とあるが、2011年から12年にかけて、2か所の刑務所読書会を友人のキャロル・フィンレイに誘われて務めたアン・ウォームズリーが、受刑者の生の声を交えて、小説風にまとめたもの。トロント在住。イギリスで強盗に襲われ命を落としかけたという傷が常に心奥にある。

選ばれた本はかなり深く、生々しい現実と格闘するものが多い。「ガーンジー島の読書会」「怒りの葡萄」「またの名をグレイス」「ユダヤ人を救った動物園」「第三帝国の愛人」「サラエボのチェリスト」・・・・・・。欧米社会に沈潜する戦争、分断、差別、虐待、銃、暴力、テロ。脅威、迫害、強迫観念。宗教や人種の対立・・・・・・。日本の自然、人間との融和社会との差異はあるが、世界共通の人間社会の亀裂を、受刑者たちが読書を通じて考え、重い口を開いていく。人生のギリギリを生きている人たちだけに、切実な思いとリアリズムが詰まっていると感ずる。

「うしろを振り向かず、将来のことも考えない。とにかく今日一日を生きなさい」「人生がちょっとばかりつらくても、おれたちは日々の暮らしを続けるだけだ」――。希望を捨て去って、絶望のなかに生を見る。読書に選ばれた最近の本を読んでないのに悔しい思いがした。


「持たざる国」からの脱却.jpg「日本経済は再生しうるか」が副題。「IT革命による世界の生産構造の激変」が、今、世界で起きている。それはIT技術による製造工程のモジュール化によってもたらされたものだという。個別企業固有ではなく、企業横断的に、しかも世界のどの地域でも可能となっている。部品のモジュール化により、製造工程を臨機応変に変え、大胆なアウトソーシングも可能となる。そして「米国の一人勝ち」となっているが、それは米国の生産の仕組みが元来、モジュール化しており、労働市場においてもレイオフは一般的だし、経営者も働く人も多くの企業を渡り歩いていく。流動性をもっている。そして、その過程でキャリアアップしていく。

日本は、かつては「一人勝ち」の時代があった。終身雇用があり、企業のなかに一生があって、そのなかで経験が生かされ、生産性も上がっていた。しかし今、その成功体験が硬直的な雇用慣行に縛られることになっている。全くモジュール化していない労働市場ということだ。不採算部門をかかえ、人はその能力を発揮できず(能力が追いつかず)、余剰人員となっていても、解雇は難しい。解雇されてしまった人は次の働き口が見えないから、ワーク・ライフ・バランスを欠いてもしがみつくことになる。日本では転職は大変高いリスクを伴うわけだ。非正規社員もキャリアを積めない。生産性が上がらず、国全体の付加価値が増えなくなり、日本型格差社会ともなる――そう指摘する。

だからこそ、「一億総活躍」「子育て支援」「雇用支援」「働き方改革」が大事となる。

ドイツとスウェーデンの取り組みを紹介し、今日的状況のなかで、ワーク・ライフ・バランスを回復して日本人の能力を解き放ち、人的資源をしっかり活用し、稼ぐ力を回復すれば、発展と幸せにつながることを説く。


西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークⅫ.jpg池袋ウエストゲートパークの第12弾。池袋の果物屋のマコト(真島誠)は、トラブルシュータ―。Gボーイズをたばねるキングのタカシ(安藤崇)と組んでの物語は今回も痛快に闇を切り裂く。池袋の街の緊迫したトラブルを次々と片づけてくれる。

「西池第二スクールギャラリー」「ユーチューバー@芸術劇場」「立教通り整形シンジケート」「西一番街ブラックバイト」の4話。現在の世相の暗部が噴き出す池袋でマコトとタカシが躍動する。池袋の近くに住む私としては、実感がある。


ルポ 難民追跡.jpg副題は「バルカンルートを行く」だ。欧州各国に押し寄せる大勢の「難民」。内戦が続くシリア、依然として政情が定まらないアフガンやイラク。大勢の難民が、トルコ、ギリシャからマケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニアと旧ユーゴスラビアを縦断、オーストリアを経て、ドイツをめざす。ハンガリーが越境防止フェンスでセルビア国境を封鎖(2015.9.14)、クロアチアとの国境でもフェンスで封鎖(2015.10.17)、人道危機を食い止めようという理念はあっても、欧州各国は圧倒的な人波を抱え込めない現実に直面している。その生々しい実情を、坂口記者がドイツをめざすアフガン人一家に寄り添って同行した渾身のルポ。

押し寄せる難民・移民、苦悩する欧州――ともに必死。かつこれは世界に広がる深刻な課題として進行中のものだ。あの穏やかで温かい坂口記者が、なんと厳しく激しい排戦ルポを断行したかと思うとともに、「あとがき」を読んで胸が詰まった。どんな思いで・・・・・・。


本物のおとな論.jpg「いつまでも一人前の人間にならない大きなこどもがふえた」「それは当り前である。学校は生活を停止して知識を教え」「家庭は豊かになり、ひとりっ子がふえ"ハコ入りこども"として大事に育てられ、生活がない」という。

「大人といわれる人はそれぞれのスタイルをもっている。スタイルのない生き方をしているのは大人ではない」「落ち着いた声で話すのが大人である」「ハダカのことば、むき出しのことばは・・・・・・よくないことばである。ことばを慎む――それが大人である」「大人にはたしなみが必要。敬語はことばのたしなみである」「ハコ入りはハコから出さなくてはいけないというのが大人の知恵である」「学校出は多く、苦労が足りない・・・・・・人間がわからない。心が冷たい。自己中心的で幼稚である。知識と智恵を混同している・・・・・・あわれな知性の貧困である」「エスカレーターでなく、階段が大人をつくる。いまの教育はエスカレーターのようなものである。知識(教育)だけでは人は育たない。苦労という月謝が人を育てる」「文化はウソ半分、である。ウソのうまくないのは、幼い文化、幼い人間である」「相手を大切にするのが大人である」「A級人間は試行錯誤する。模倣は易く、失敗は難し。知識は安く、生活は貴重。B級の優等生よりA級の劣等生の方がすぐれているのである」・・・・・・。

中年になっても大人になれない人が少なくないことが問題だと、静かに説く。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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