「新
興国が動かす世界経済の新ルール」と副題にあり、世界をめぐる4000兆円の「ホームレスマネー」が今、大挙して新興国(「BRICS」だけでなく
「VITAMIN」の時代)へと向かっている。大前さんのいうVITAMINとは、ヴェトナム、インドネシア、タイとトルコのT、アルゼンチンと南アフリ
カのA、メキシコ、イランとイラク、そしてナイジェリアだ。とくにインドネシアやトルコを紹介している
成熟経済では金利を下げて資金供給しても、経済自体が資金を必要としてないからそれを吸収しない。少子高齢化した先進国で、活性化した経済が持続することはない。だから金融緩和も財政出動も効果は出ない。
大 前さんは怒り、あきれて、それでも数多くの提言をする。「内向き、下向き、うしろ向き」の三拍子を捨てて、「外向き、上向き、前向き」に進め。国債暴落の 危機が迫っているではないか。日本にはそれでも1400兆円もの個人金融資産が手つかずで眠っているではないか。これが吹き飛ぶ前に、税金ではなくこの 1400兆円と世界にあふれる4000兆円のホームレス・マネーを使って経済を活性化する仕掛けをつくれ。しかも円高で、技術もあり、発展させた経験も使 えるではないか。世界に向けて、そして国内でも新しい都市そのものをつくり出すなど、投資家にとって無視できないほど魅力的な開発プランを発信せよ。きわ めて具体的。分析や論議ではなくもう動かなくてはだめだと言っている。
琉球王朝500年の末期。テンペスト――まさに世界も嵐、王朝も嵐、人心も嵐。アヘン戦争、列強が迫り、ペリー来航(浦賀より前に琉球へ)、そして大政奉
還、明治維新、廃藩置県――巨大であった清国の冊封(さっぽう)体制と薩摩藩との間のなかで、王朝国家の存続をかけて生き抜く主人公(父親の期待に応える
ために宦官と偽り、孫寧温として王宮入りを果たす天才美少女・真鶴=女性として王の側室ともなる)それを囲む愛憎からむ人々。
仲間由紀恵主演で舞台化されるが、この長編をどうやって演ずるのだろうか。
まず、南北朝時代を描いた、しかも村人の生活から時代の空気を描いたのは面白いし、あまり例がないのではなかろうか。しかも史実の裏付けがある。人物の配置と個性も鮮やか。黒澤明の「七人の侍」とはむしろ違っていて、これは悪党の襲来に備え、8人の侍を雇った村、弩を手にした因幡の百姓の物語だが、むしろその背景を描いている。
柿渋を特産とし、塩との交易によって豊かな村をつくるということも背景にあるし、南北朝時代、楠木正成の活躍と死も物語の背景にある。
新聞もテレビも出版も危機に瀕しているという。不況、IT、IPAD、キンドルなど社会の構造変化がその原因だといわれるが、内田さんは、そうではない、コミュニケーションの本質について理解しているかどうかだと深くえぐる。
「知性の劣化」「世論(責任なきみんなという言説)と知見」「教育と"買い物上手になる学生"」「著作権」 「電子書籍」「本棚の持つ欲望」「出版文化がまず照準とすべき相手は"消費者"ではなく"読書人"」「贈与と返礼、コミュニケーション」「ありがとうとい う言葉」を論じてくれているが、いつもながら内田さんは本質をえぐり出している。
「女性天皇論」を著した中野正志さんは「パンドラの箱をあけることになる」といったが、これは「天皇とは、天皇制とは、日本の文化とは、日本の伝統と
は、神道とは」という根源的な問いを発することになる。また「女性天皇というみちを残しつつ、臣籍降下した旧皇族の復帰で、男系による万世一系をはかるべ
きではないか」と主張する人もいる。