「年金・医療・介護・育児――借金日本で安心して暮らせるか?」がテーマだ。
鈴木さんは、年金・医療・介護・育児等に具体的にふれつつ、強い社会保障ではなく安易な公費投入をやめて「身の丈に合った社会保障」を訴える。
「日本一美味い豚肉をつくりたい」「美味しくて安心な食を提供したい」「故郷・酒田への恩返し」――地域・現場から元気の陽光を発信する平田牧場グループの新田嘉一会長の人間哲学。
「仕事をやめようと思ったことはなかったが、首を吊ろうと考えたことは何度となくあった」「自分の力だけでここまで来たとはとても思えない」「どん底に落 ちた者だけが扉を開けられる」「政治家はどこまで行っても当事者ではない。ましてや官僚、役人も・・・・・・農業に、養豚に対して(つきつめれば)愛着も 未練もない。他に頼って農業を良くしようなどという考えは一切捨てることだ。自分の生きる道は自分で切り拓くしかない」「地方にいる者は、中央や大手企業 を頼らなくてもやっていける道を模索すべきである。どうせ、潰されるなら、自分の手で潰した方が気分がいいだろう」――吹雪に胸張りいざや征け、一人立つ 精神だ。
「草食系と肉食系というごまかし」から、この本は始まる。「勝ち組、負け組」も同じ。流行する言葉は、ある事実や状況を正確に表現するものではなく、リアルな現実、この場合は「社会、個人の欲望の進化」を覆い隠すために考案され流通したものだという。
欲望のない、楽しいことがないような若者の背景に逃げる中高年がいる。しかし若者は怒らないし、黙って、素直で、良い子(年齢はいっているのに)でいる。 ストレスを話をして解消するかと思うが、相手を気づかってはっきりモノは言わず、「ビミョー」で済ます。スキルも知識も鍛えられず、社会に放り出される若 者。
言っていることはきわめて明確。ある意味では一つ。それがはっきりしているからこの本は話題の書となっているともいえる。
そして「高齢富裕層から若者への所得移転」「女性の就労と経営参加」「労働者ではなく、外国人観光客・短期定住者の受入」をいう。
その巨大な底流をしっかり踏まえて対応しつつ、労働集約型、発展途上国型の成長ではない日本の生きる道を探らなければならない。
船曳さんの100歳となった母親が、米寿を過ぎたころから子供の頃からの四季おりおりの暮らし(足利の高松村)について語るようになった、それをまとめたのがこの書だ。
私の母も明治45年 生まれ、故郷の子どもの頃を思い出し、苦労ばかりしてきた父母のことを想いつつ読んだ。当時は、貧しかったことは勿論だが、生活は自然とともに、季節とと もに、家族・親戚・村の人々とともにあったことを改めて気付かされた。人間と自然しかないかのように。素朴で誠実な語りのなかで、なつかしさや悲しみだけ でなく、船曳さんが意図したかどうかはわからないが、「人生とは」「生活とは」「人が生きるということは」という根源的な問いかけが重々しく迫ってくる。
こういう本に出会えてよかった。