2001年に発行された本だからもう10年になる。
経済や社会の諸現象を理論やイデオロギーで切り取って解釈してくれても、確かにワクワクはしない。逆に「それはユダヤ人による」などという切り口に飛びつく時の方がワクワクしたりするが、それば物語性があるからであろう。
しかし、そこにも違和感があるのは最初からマユにツバをつけているからかもしれない。また論者の独りよがりの思考が読者を呪縛し切れないのは、私たちが葛藤や矛盾をあふれんばかりに抱え込んでいる存在であるとともに、人間が主体性とともに人と人との間という関係性のなかに生きる存在であるという「間」への認識が欠けがちだということにもある。世界、広がりと奥行きへの認識だ。
温暖化ガス-25%の検証がされている。麻生政権で出した2005年比15%減(90年比-8%)、鳩山政権の90年比-25%を中心として、昨年来の中期目標の6つの選択肢(P35)を検証している。2050年、先進国80%減についても茅さんは「先進国半減、途上国ほぼ倍増が現実の限界か」ともいう。
中期目標も
(1)京都議定書目標との整合性
(2)長期目標との整合性
(3)他国、特に先進国との衡平性
(4)実行可能性
――などについて分析する。
国際的な公平性指標の考え方も種々ある。2050年には、電力に頼ることになるが、その時に原発は80%近くを担うことになる。
GDPへの負担、家計への負担・・・・・・。種々検討しているが、25%減はヒマラヤ登山、麻生目標でも国内の相当の山登りにも似たものだ。排出権取引も含めて、本書は判断の仕方を示してくれている。
雇用形態の激変、家族形態の激変のなかで従来からの社会保障は対応できなくなっている。足下が崩れているがゆえに生活不安は増大しているが、業界、職域、仕切りの縦割りを越えないと処方箋は見出し得ない。
宮本さんは社会保障と雇用を包括する生活保障という概念を提起し、スウェーデンの「就労原則」、イギリスの「福祉から就労へ」をはじめとして、スウェーデンなどの福祉改革の歴史と現状を示している。
ベーシックインカム的な制度の一部を取り入れながら雇用と社会保障について、アクティベーション(活性化)的な連携を追求する。
雇用と社会保障の新しい連携(〈1〉参加支援〈2〉働く見返り強化〈3〉持続可能な雇用創出〈4〉「雇用労働の時間短縮・一時休職)、参加支援を組み込んだ「交差点型」社会(〈1〉教育〈2〉家族〈3〉失業〈4〉体とこころの弱まり・退職――の四つの橋をかけ、雇用と家族・地域コミュニティを行き来できる条件をつくる)などを提起する。
安心社会の実現に向けて、日本を漸進的につくり直さないといけない。