kenju.jpg明暦の大火(振袖火事) (16571月、将軍家綱)は、江戸城をはじめ市中の6割を消失させ、死者は10万人にも及んだというが、「反幕浪人による放火ではないか」との噂はその後も残っていた。大火後も、浪人が跋扈し、火付盗賊、火事場泥棒、辻斬りが繰り返される江戸。しかも老中と御三家の緊張関係が続き、その中には振袖火事の真相をめぐる政争もあった。徳川の治世はこの時、まだ定まっていない。

その再建の任を受けたのが、若き頃は遊蕩狼藉で知られていた水戸光國。江戸の再建、学問の振興、治安にと情熱を注いでいた。幕府には捨て子を保護し、間諜として育てる隠密組織「拾人衆」なるものがあった。父を旗本奴に殺された無宿者の少年・ 六維了助は、それに加わり、光國からも目をかけられていた。そして、仲間とともに火付盗賊「極楽組」を追う。そんななか、父の死の真相について、光國が悪い仲間にそそのかされて手を下したという驚愕の事実を知る。了助のやりきれぬ心境、光國の深き悔恨の入り混じるなか、了助は、柳生列堂義仙(柳生の末子)とともに、極楽組を追い日光へと向かう。義仙と極楽組の激しい知恵比べだ。道中での各組織入り乱れる諜報と戦闘が繰り広げられる。


yogaakeru.jpg分断、格差が問題となる社会。貧困、虐待、想像絶する過重労働やハラスメント・・・・・・。眼前にある実態を極めてリアルに描き出すとともに、そのなかで生き、生き続けなければならなかった33歳になる男同士の友情と葛藤と戦い。残酷と悲惨、むごさのなかでの人間の宿業、哀しさ、弱さ・・・・・・。哲学を超えるような諦観のなかで生きる姿が、やるせないほど胸底に迫る。「どうしようもなく暗い夜も、必ず夜が明ける」「苦しかったら助けを求めろ」「自分には、困ったときにあらゆる人に助けてもらう権利がある。どんなクズでも、ダメな人間でも、生きてるから権利があるんじゃないの」「気張らず、正直に生きる。守るとか、言い返すとか、敵を作って、身内の悪いところは見えないようにする。それって不健康。勝つことが目的ではなく、続けることが目的なんだから」・・・・・・。

「お前はアキ・マケライネンだよ!」と「俺」はアキ(深沢暁)に声をかける。高校1年生の時だ。アキは身長191cm、頬には深く皺が刻まれ、3、4人は殺して埋めてきたような風貌で入学式に現れ、とんでもない暗い空気を発していたが、オドオドしていた。アキ・マケライネンは、映画「男たちの朝」に出たフィンランドの俳優だ。「俺」は普通の家庭に育ったが、父親が交通事故で死亡して貧しい家庭と転落し、アルバイト生活を余儀なくされる。アキは母子家庭、母親にネグレクト、虐待され、ひどい吃音で小中学校時代も身を隠すようにオドオド生きてきたが、「お前はアキ・マケライネンだよ!」の一言で人生は一転、勇気を持って級友の中に入っていった。2人はかけがえのない存在となったのだ。そして大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職、これが想像絶するパワハラ横行のブラック企業、心も体もズタズタになり、手首を何度も切るに至る。一方アキは、その異形ぶりから劇団に入るが、あまりにも理不尽な仕打ちに遭い、これも心身を壊していった。33歳の今に至るまで、苦労などと言うものではない、心身ともに疲れはて、社会から踏みつぶされ、はじき出されていく。そんななかで、幼き頃からアキは日記をつけていた。

「生きるとは」「生き続けることとは」「人が生きるために真に必要なものとは」「救いの手とは」を、絶妙な筆致と問いかけの深さで迫っていく。凄みのある力作。


koueki.jpg「英米型資本主義の終焉」が副題。「新しい資本主義」が論議となっているが、原さんは、もう20年も前から「公益資本主義」を提唱し続け、政権中枢でも具体的に提案を行っている。低成長と格差、新しいリーディング産業が日本の最重要課題となっている今こそ、本格的にこの提案を現実に展開する時だ。

「株主資本主義や金融資本主義に代わる新しい資本主義こそ、公益資本主義だ」「トランプ誕生を見ても、その背景には生活に対する一般大衆の不満や不信がある。富裕層がより豊かになり、中間層は貧困層に転落し、産業を衰退させ、給与を低下させるのが英米型資本主義のゼロサムゲームだ」「会社は株主のものという英米流株主資本主義では、経営陣は短期利益を、短期決算ということもあって迫られ、中長期投資は軽視される。株主とCEOなど一部が極端に潤い会社は従業員の賃金を下げ、会社の資金は奪われ、中長期の研究開発力への投資も削られる」「株価を上げるために人員は削減され、ROE(自己資本比率利益率)のために、分母である資産を縮小し研究開発をしなくなる。それで、自社で育てるのでなく、M&Aで既存の技術を買い、また捨てる。新しい産業や技術は生まれなくなる」「こんなマネーゲームの資本主義を続けていたら、格差は広がり、真の成長産業は生まれない」「日本こそ新しい資本主義のモデルに」と強く訴える。

「公益資本主義の三原則(3本の矢)は、社中分配(社員、顧客、取引先、地域社会そして株主のステークホルダー)と、中長期投資と、起業家精神による絶え間なき改良改善だ」「株主への1株当たりの配当額を数円減らすだけでも、従業員への分配額は一気に上がり、新事業への投資額も増える」「株価優先から生ずる粉飾決算(エンロン、東芝)」「自社株買い、時価総額至上主義は間違っている」「四半期決算重視が生み出した不正会計」「社外取締役は健全な企業経営の番人というより、株主利益の番人となりかねない。株主の代理人ではいけない」「ウォールストリートのトレーダーのマネーゲームにしてはならない」「市場万能主義が健全な市場を壊す」「レーガン政権で始まった市場原理重視、規制緩和、富裕層への減税の株主資本主義(新自由主義と結びつく)」「シリコンバレーに真のベンチャーはいなくなった」「公益資本主義は日本の文化や伝統にあった資本主義のあり方だ」・・・・・・。

公益資本主義の理念で、株式市場、会計制度、法制度、税制等のルールを改めて、新しい投資の仕組みを考えよう。日本が新しい公益資本主義の先頭に立とう。日本にはできると熱く語る。公益資本主義の12のポイント(ルール)を示し、「会社は社会の公器」と提起する。


yasasikunai.jpg「日本人は困っている人を助けないのか」が副題。日本は「思いやりの国ニッポン」「助け合いの国ニッポン」「おもてなしの国日本ニッポン」と思っていたが、どうもそうではないようだ。「国は貧しい人を助けるべきか」と言う問いに、賛成する日本人の割合は世界で最低。イギリス財団による「世界人助け指数」では、日本は126カ国中107 位。「世界価値観調査」で「他国の人は信頼できる」と答えた人は、オランダ15.4%、アメリカ8.1%に対して、日本はわずか0.2%。つまり、日本は他人にも他国にも「優しくない国」などだと言う。自己責任の論理が前面に出て、弱肉強食の世界が進んでいるからなのか。長期デフレに沈んで、貧すれば鈍するとなっているのか。ユニークな角度で、エビデンスを調査し問題提起をしている。

調査結果はまず認めなければならないだろう。日本の特徴はいくつもある。「デフレで多くの日本国民の所得が下がっている(他人を助ける余裕がなくなってきている)」「相対的貧困、6人に1人は貧困状態にある」「日本は相互監視と制裁の社会制度によって『よそ者』を排除し、信頼に頼らない安心社会を築いてきた(社会制度頼みの日本人の思いやり)」「地縁組織やPTA等への参加が減少傾向にあり、信頼や社会参加が人助けを促すならその土壌がますますなくなってきている」「日本人は日本人と言う自集団への帰属意識や連帯意識が低くなっている。自分のことは自分ですべきという自己責任の意識が強く、公助への合意形成を難しくしている可能性がある」「生活保護を受けられるのに、受けない人が他国より圧倒的に多い。他人に迷惑をかけたくない、かけるのは恥であるというスティグマ(汚名)意識がある」「ベーシック・インカムはスティグマを軽減する」・・・・・・。

デフレに沈んだ。高度成長のなか、家族も地域も会社も助け合い意識が崩れ、こうした見えざる社会保障の崩壊が進んだ。他人様に迷惑をかけない「恥の文化」がある。根強い政治不信もあって、社会参加へのシステム作りが進まない。これらは現実だが、「日本人の約6割の人が社会に貢献したいと潜在的に思っている」という調査も示しており、「他人に優しくないニッポン像」は表層的なイメージにすぎないという時代をつくりたい。


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コロナ禍のなか、29日、元大関・豪栄道(武隈親方)の断髪式が両国国技館で行われました。徹底した感染対策と行事縮小の断髪式となりました。私の地元・足立に境川部屋があり、長く親しい付き合いもあり、支援もいただきました。全勝優勝の喜びも共にしましたが、満身創痍のなか、歯を食いしばっての土俵生活であったことを思い起こします。多くの方々とお会いし、挨拶できました。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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