政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.20 辻つま合わせ・財源あさりの税制改正 予算編成は国家の基本を確立せよ!

2010年12月18日

政府・与党による予算編成作業が行われており、税制改正大綱が決定した。昨年暮れの22年度予算編成・税制改正では、一般会計92.3兆円、国債発行額は過去最悪の44.3兆円を組み、当初予算段階で戦後初めて国債発行額が税収を上回る異常な予算となった。「借金頼み歳出膨張」「マニフェスト失速」「財政規律危険水域に」などと酷評された。

今、行われているものは、これに「迷走」が加わり、どこをめざしているのかわからない。「浮遊」が加わってしまった。景気・経済を回復させ、国民生活を守り、国益を守る――その責任の欠如というほかない。

国家の大宗は租税なり
「国家の大宗は租税なり」――という言葉があるように、税制は国の形を決める(どういう国をつくるかのインセンティブでもある)、最も根源的・基本のものだ。整合性や次の国家への展望、時代の変化への鋭敏な対応が不可欠だ。ところが、今回の税制改正は「迷走の限りを尽くしたもの」であり、全体観を欠いた「場当たり」「辻つま合わせ」「財源探し、財源あさりだけ」「マニフェストの破たんを露呈したもの」であり、かつてないひどい代物となった。各紙で指摘、批判されるのも当然のことだ。

(1)まず指摘すべきは23年度予算総額が、この財源難のなか92兆円のバラまき予算としたこと(22年度の民主政権で92.3兆円、21年度はリーマン・ショックの対応があり88.5兆円、20年度はノーマルな内容で83兆円、19年度82.9兆円、18年度79.7兆円、17年度82.1兆円)――これを見ても、いかに民主党政権がバラまき予算を組んでいるかがわかる。

(2)基礎年金の国庫負担分を2分の1にするため2.5兆円の財源を必要とすることになった。さらに社会保障で1兆円の自然増への対応が必要となった。

(3)子ども手当は迷走を繰り返したあげく3歳未満を7000円増やし、2万円にしたが、新たに2400億円必要となった。しかも、この子ども手当は、マニフェストの2万6千円を早々にやめにして、公約の全額国庫負担ではなく、地方負担・企業負担をさせるという

"サギフェスト"の象徴でもある。そのうえ3歳未満2万円は来年より年少扶養控除が廃止されることによって実質的に手元に残る金額が減ることへの辻つま合わせで、子育てを充実させようとしたものではない。

(4)さらに法人税5%引き下げで、1.5兆円の国の減収が見込まれることとなった(この財源は減価償却の縮小・課税ベースの拡大などで8000億円を確保したに過ぎない)。また未だに法人税減税の財源メドは立たず、国債でという話まで出ている。

個人の増税5900億円
(5)これらの財源として所得税の給与所得控除の見直し(1500万円で頭打ち)、成年扶養控除を年収568万円超は縮小・廃止などとなった。相続税の最高税率を引き上げ、基礎控除を縮小して増税した。結局、高所得者を中心に負担を求めて個人は5900億円の増税となった。

(6)さらに地球温暖化対策の大綱を示さぬまま、11年10月から地球温暖化対策税(環境税)を導入することになった。企業が納めた環境税を小売価格に転嫁すると、一世帯当たりの負担増は年1100円となる。

(7)国債発行は22年度44兆円、21年度33挑円、20年度25兆円、19年度25兆円、18年度29.9兆円となっており、財政は極めて厳しい予算組みとなっている。来年度も44兆円の国債発行と言っている。またしても当初予算で国債発行額が税収を上回る異常を続けることとなる。

挙げればキリがないもので、税制改正の骨格はまことにひどいものとなっている。

「国家の大宗は租税なり」。しかも今、「この国は大丈夫か」「日本は沈没するのではないか」という声があふれている。「場当たり」「小手先」「理念なき財源あさり」は厳に戒める時ではないか。

デフレを脱却し、景気・経済を回復させること、バラまきの"サギフェスト"による予算自体にメスを入れること、"コンクリートから人へ"などというスローガン政治をやめること――国家の基本を責任をもって担い立つべきだ。

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