政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.46 「新東名」の大きな防災的意義 インフラはストックとして語れ

2012年4月23日

4月14日、新東名高速道路の静岡県内区間162kmが開通した。5月には東京スカイツリーが開業、そして6月には東京駅のリニューアルなど話題は続く。閉塞感が漂う日本のなかで、心を明るくする話題であることは間違いない。これらは、地域振興に寄与し、日本全体の景気・経済の再建に資するだけでなく、新東名は東海大地震が想定される今、防災という観点からも大きな役割りを果たすことが期待される。

この10数年、「ムダな公共事業は削る」ということが、いつの間にか「公共事業はムダ」、ひいては"公共事業悪玉論"に日本は塗りつぶされた。勿論、ムダな公共事業は削る。私自身、90年代、徳島県の細川内ダムをはじめとする公共事業の中止・休止・ムダ削減を衆院予算委員会で要求し、これがきっかけとなって、公共事業272事業がストップ、2兆8000億円の削減となったこともある。しかし、私はあわせて空港・港湾等のハブが日本から離れ、空港・港湾・道路のネットワークが不備である現状に警告を発してきた。日本の経済的底力を失ってはならない、そして脆弱国土・日本の現実を直視し、真に安全・安心の国土を創るべきことを訴え続けてきた。

そして東日本大震災――発災後、ただちに動いた国交省東北整備局が、開通したばかりの三陸縦貫自動車道に並行した国道4号から展開した"くしの歯作戦"は生々しい。南北を貫くこの国道4号から太平洋沿岸部へと延びる国道は、まさに"くしの歯"のように実に16本。これを必死で開けた"啓開"の戦いによって、海岸線の救命作業は進んだ。

道路のネットワーク化、う回できるルート数(代替性)を増大させること――まさに災害においても、経済の活性化においても、生活の利便性においても、そのことが大事だ。数多くつながってこそ道路ということだ。

今回の新東名も、防災の視点からの意義は大きい。国道1号や東名高速の津波や地滑り被害の弱点箇所を補うことになる。しかも既存道路と南北に結ぶことを重視していることは、災害時に大きな力となる。

脆弱国土の上に日本が建っていることを自覚した、新たな安全国家へ本格的取り組みがスタートする本年にしなければならない。よく「世界に比べて日本の公共事業費は高い」などという批判があるが、脆弱国土、大災害頻発国である日本をどれだけ自覚しているのか。日本は、他国とは比較にならない国土の脆弱性をもっている。

安全な国を志向するならばインフラを見る角度を変えなければならない。大石久和京大大学院特命教授は、「インフラはストックとしてこそ意味をもつ。そのもたらす恩恵は広いものであり、単純には金額換算しにくいものだ。そのインフラが、単年度予算のなかでフローとしてしか語られないのは疑問」という趣旨の発言をしている。いつも交通量やコンクリート使用量などの狭い範囲での「B/C(費用便益比)」しか論議されてこない政治に私自身、強い違和感をもち続けてきた。

安全が確保された生活がある、経済の底力には強靭なインフラがある――そうしたことに、価値を求めたインフラ整備、国土の強靭化が重要だ。公明党が今、強く主張する「防災・減災ニューディール」には、そうした強い意志が込められている。

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