政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.47 許されぬ消費増税の先行―― 社会保障の全体像を示し、景気好転を図れ

2012年5月 5日

消費増税法案が連休後の衆院で審議入りする。遅い。法案提出に至るまで政府・民主党の議論は混乱を極め、「社会保障と税の一体改革」を言う前に、「政府・民主党の一体改革」が必要ではないかという指摘まであった。慎重かつ充実した論議が行われることが大切だ。

私は2009年当時、政権の一翼を担っていたが、消費増税については5つの前提・条件を提示した。そのことは2009年に成立した改正所得税法附則第104条に全て盛り込まれている。そこに書かれている5条件は、

①社会保障の全体像を示す
②3年以内の景気回復に向けた集中的取り組みにより経済状況を好転させることを前提(当時はリーマン・ショック直後で全治3年をめざした)
③不断に行政改革を推進し歳出のムダの排除を徹底する
④使途を社会保障に限定
⑤消費税を決め打ちせずに税制全体の一体的改革

――の5つだ。複数税率の検討や低所得者への配慮、給付付き税額控除の検討なども法律に書き込まれている。

少子高齢社会を迎え、また財政再建の緊要性もあり、消費増税をお願いしなければならなくなるが、その前に何よりも条件整備を急ぐことが大切だ。しかし問題は、今回の消費増税法案は、ただ8%、10%と税率を上げるだけ。まさに増税先行、増税一直線、欠陥だらけの法案だということだ。民主党の国会議員が地元で、「増税の前にやることがある」などと言っていたりするが、全く何にもわかっていない。政権を担ってから、これまでに何にもやっていないことが問題なのだ。

第1の「社会保障の全体像を示せ」と私たちはずっと言い続けてきた。ところが、年金も医療も介護も、民主党がこの数年、言い続けてきた改革案なるものは、最低保障年金7万円をはじめとして全く具体化されず、どういう案なのかいまだわからない。まず、全体像が示されて、やっと"財源がこれだけ必要です""消費税をこれだけお願いしたい"と言うべきなのに全くダメ。一体改革に全くなっていない。消費税を上げることしか主張していない。これでは理解が得られるはずがない。

第2の「景気・経済の好転」は更に重要だ。景気が悪い。デフレや円高のなかで、消費増税は景気の悪化を招く。だからこそ、景気・経済の好転が大事だ。政府・民主党は、3月のゴタゴタ論議の末、「名目3%、実質2%程度の成長を目標とする」とした。しかし、ただ単なる目標で、縛りのない妥協の産物だ。附則第104条には、「3年以内の景気回復に向けた集中的取り組みにより経済状況を好転させることを前提」とある。それは、消費税を上げるという前に、集中的な取り組みをして経済を好転させるという強い意志・行動・具体的取り組みをやろうということだ。ところがこの約3年、政府・民主党は、成長を犠牲にしてバラマキ政治を行ない、デフレにも手を打たず、全く反対の逆噴射政策を行なってきた。経済に無関心とも思われる姿勢をとってきている。現場の景気・経済への悲鳴に耳を貸さない。

野田政権はただ増税先行。条件整備は何もしない。「命を懸けて」「政治生命を懸ける」などと言っているが、民主党政権の約3年、努力する姿勢もみせてこなかった。情けないことだ。

5条件からいうと、行革も、税全体の一体改革も全く不十分。全く何もやらずに、とりあえずの増税先行は許されるものではない。究極するところ、国を担う責任感の欠如、コツコツと条件整備をする地道な努力が欠如しているといわざるを得ない。

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