政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.48 地域からの防災・減災ニューディール 危機管理は現場力、実務だ
「災害は現場で起きている」「危機管理は実務である」――災害対策、防災対策の鉄則だ。安全保障は中央の指揮の一元化、情報の一元化が急所だが、災害対策は何といっても現場力が問われる。自助があり、共助があり、公助のシステムを強化することが大事だが、自助、共助の間に、私は近助、まさに数軒の助け合い、防災隣り組が大切だと思っている。
地震は活動期に入ったとみられ、首都直下地震、東海・東南海・南海の三連動地震、そして全国の活断層による直下地震などが懸念される。私は日本が今まずやるべきことは、景気・経済の再建・活性化と防災・減災への積極的取り組みだと思う。そこで公明党が打ち出したのが、防災・減災ニューディールだ。
それには3つの角度がある。
第一には、高度成長期に建造された橋梁・道路・建築物などが、建造後50年近くになり、劣化を起こしていること。早い段階でのメンテナンスが大切となる。それは、単なる公共事業の復活とは異なり、住民の命を守るための公共投資だ。
第二には、首都直下地震をはじめ、日本列島が地震の活動期の渦のなかにあることを正視し、対応が急務であるということだ。特に首都直下地震の最大のポイントは震度6強としてきた予測が、震度7もあるという大変更をもたらしたこと、そして三連動地震では太平洋岸をはじめとして巨大津波への対応が不可欠となったことだ。
第三にはこれに加えて、需要を創出することによって需給ギャップの大きいデフレ下の日本経済を活性化させ、今日本で最も重要な景気・経済の再建にも大いに資すること。デフレ克服の突破口にすることだ。
まさに、防災も減災も、災害の救命・救援も現場であり、現場力が問われ、実務が問われる。
4月25日、党の首都直下地震対策本部の総合本部長である私は、首相官邸に行き、地震対策の緊急提言を行なった。こうした提言は、総合的、網羅的になりがちだが、あくまで現場に立ってズバッと主張するものにした。例えば、密集市街地の火災――。再開発等は大事だが、狭い道路に入って行って消火できる「消防バイク」の導入やスタンドパイプの設置を急げという提言だ。人命救助でも、ヘリが着陸できるよう屋上などに空から見てもわかる○○小学校などの表示を進めるほか、自衛隊などが拠点とできる空間の確保だ。
5月18日には、文科大臣に「学校施設の非構造部材の耐震強化を急げ」との申し入れを行った。私は学校の耐震化にこれまでずっと力を注いできたが、本年度には全国で90%近くできるところまでこぎつけた。そこでこれから大切なのは天井や照明、内壁や外壁などのいわゆる非構造部材の耐震化・老朽化対策だ。現在、全国で29.7%しかできていない。国として、地域でしっかり対応できるよう予算も含め、進めなければならない。
荒川や隅田川など、首都の街中を流れる多くの河川の堤防、水門の耐震化、その河川敷や隣接地の液状化対策も多くが避難場所にもなっており、急務だ。
5月23日には、首都高速道路の耐震強化工事を視察した。東京オリンピックを前にして、50年前に最も早く造った高速道路。総延長約300キロ、しかも高架のところが8割にも及ぶ。高速道路が倒れた阪神・淡路大震災後、橋脚を帯鉄筋で補強したが、私は最も心配される橋桁と橋脚の接点である支承部分の耐震強化を訴えてきた。工事は今、急ピッチで進んでいる。全国的には県市町村の一般道の橋梁や道路、建築物の劣化が懸念されており、対策は急務だ。
防災・減災ニューディールは、こうした現場の課題を足でかせいで具体的に提起し、それを積み上げること。住民が望み、その住民の命を守る――まさに現場からの防災・減災対策が基本だ。