政治コラム　太田の政界ぶちかましCOLUMN

木造建築で今、新しい動きが始まっている。私もその推進に力を入れている。役場の庁舎や学校、体育館などの公共建築物でも、商業施設や集合住宅などの民間建築物でも、大規模な木造建築が次々と建てられている。優れた公共建築物を表彰する「公共建築賞」で今年度の国土交通大臣賞を受賞したのは、高知県梼原（ゆすはら）町の総合庁舎。延べ面積3,000㎡、地上２階地下１階建てで、地元産の杉をふんだんに使った木造建築だ。しかも銀行や農協までその建物に入っており、文字どおり町の生活・活動の中心拠点になっている。

我が国は国土の７割を森林が占め、森林資源が豊富。木材は、我が国の住宅・建築物に使われてきた伝統的建材だ。内装に木材が使われた空間は落ち着いた安らぎを与え、心地よい。断熱性や除湿作用にも優れているため日本の気候・風土にも合っており、さらに地球温暖化防止に貢献する効果もある。地域活性化のためにも重要な資源であり、住宅だけでなく官民を問わず木材の活用を一層進めていかなければならない。

このような動きは、近年必要な制度改正を進めてきたことで加速してきているものだ。

まず、平成２２年１０月に施行された「公共建築物等における木材利用促進法」。これは、国や地方公共団体が建築する公共建築物について、木材利用の努力義務を課し、目標を定めて取り組むこととしたものだ。その結果平成２４年度では、公共建築物が４２棟、従来であれば鉄筋コンクリートで作られていたものが木造化された。これは前年度に比べて３５％増と、急速に増えてきている。

また私は今年、木造３階建ての学校を建てやすくする建築基準法の改正を提出し、６月に成立した。現在施行に向けて具体的な基準を策定中だが、制度がスタートすれば、全国で個性的な木造校舎が建てられていくことだろう。木の空間は人の健康や心理面によい影響を与えるという研究報告もあり、教育施設で木材利用を進める意義は大きい。

さらに今、私が注目しているのがＣＬＴ（Cross　Laminated　Timber：直交集成板）だ。これは、板材を繊維方向が直交するよう積層接着した集積パネルで、これまでにない強度、断熱性を持っていると言われている。ヨーロッパでは各国でアパートやビルでもＣＬＴの普及が進んでおり、９階建ての高層ビルも建てられているほどだ。我が国でＣＬＴを使って建築するには、現在は個別に行政庁の認定を受けなければならないが、高知県で３階建ての共同住宅１棟が今年３月に完成し、現在５棟が建築中と実績が上がってきている。現在は地震や火災に対する安全性検証の実験等を行っている段階で、平成２８年度には一般的な基準が策定される予定だ。この基準ができれば、ＣＬＴの利用は我が国でも飛躍的に進むことになるだろう。

今後は２０２０年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、木材利用を進めることが重要だ。整備される競技施設や宿泊施設などで木材を積極的に利用することにより、国内外から訪れる多くの方に、日本の伝統文化とも言える木造建築に触れあい、その快適さを実感してもらう絶好の機会となる。「和の空間」をアピールし、日本の建築技術、防災・安全技術を世界に示す機会にもなるだろう。

安全で快適な木造建築の一層の利活用、普及を促進していきたい。