政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.93 "地震列島"にハード、ソフトの備え/住宅、道路、鉄道等の課題へ対応

2016年4月28日

公明新聞 熊本③.jpg熊本地震から2週間が経過した。被害は甚大で、住宅やインフラなど、救援・復旧に全力をあげている。脱線した九州新幹線もやっと27日に全線再開、高速道路は通行止めになっていた九州自動車道の熊本・植木ICと嘉島JCTの間が29日に全線開通となる。大分自動車道は湯布院ICと日出JCTの間が通行止めになっているが、GW明けに開通する見通しとなった。物流も自動車メーカーや電機メーカーの工場も多い九州では、部品のサプライチェーン(供給網)が滞っていたが、少しずつ動き始めた。更なる応急対策が重要であり、公明党も総力をあげている。

熊本地震の特徴は震度7が2回、しかも激しい余震が続いたことだ。死者は49人に及び、建物の倒壊が多数発生、全壊は判明しているだけで、2103棟にもなる(4月27日現在)。とくに余震が類例のないほど多く、家に泊まるにも不安で泊まれず、避難所だけでなく、路上に車を出して寝ているという過酷な状況が続いた。エコノミークラス症候群で亡くなる関連死は、すでに16人となった。

21年前の「阪神淡路大震災」に続き、「新潟の中越、中越沖の2度の地震」や「能登半島地震」、そして2011年の「東日本大震災」・・・・・・。日本は5年に1度、大地震に襲われていることになる。まさに「脆弱国土・日本」「地震列島・日本」が如実となっている。

私は2012年、公明党として「防災・減災ニューディール」を打ち出し、この3年弱は国土交通大臣として「防災・減災、老朽化対策、メインテナンス、耐震化」を国交行政のメーンストリームに置き、その先頭に立った。首都直下地震や東海・東南海・南海地震も切迫しており、ハードとソフト両面にわたる対策を更に強化することが急務だ。

東日本大震災の内閣府復興構想会議議長を務めた五百旗頭真氏は、「災害が頻発するこの国で、防災・減災対策が国を挙げての最重要政策の一つに押し上げられることを望みたい」と述べている。全く同感だ。これほどの災害列島でありながら、日本のインフラ整備は"国を挙げての最重要政策"どころか、逆に"公共事業悪玉論""道路はもういらない""バラまき公共事業"などの風評にさらされてきた。インフラ整備は命を守る防災・減災においても、また道路、港湾などのストック効果が経済成長を促す"見落とされてきた成長のエンジン"としてもきわめて重要だ。経済・社会の下部構造をダイナミックに形成する「国を挙げての最重要政策」に位置づけるべきものだ。残念ながら、災害への危機意識も成長への意欲も稀薄という現状を今こそ打破し、「命を守る」「成長を促進する」インフラ整備を国を挙げて実行することが重要だと思う。

今回の熊本地震には明確な特徴と、浮き彫りになった課題がある。何といっても、震度7の地震が4月14日と16日に続けて起きたこと。そして余震が1時間に何回も続き、なかでも震度5強以上が10回を超えたことだ。こんな例は今までになかったことだ。

平成28年熊本地震災害対策本部.jpg見えてきた課題も多い。第1には、道路、橋梁、新幹線・鉄道など基幹インフラが寸断されたことだ。国道57号線の被災、阿蘇大橋の落橋、新幹線の脱線などだ。複数のルートによる交通網の整備、リダンダンシーを日頃から確保する思想が大切だ。新幹線の脱線防止・安全対策もより強化しなければならない。

第2は、今回の最大の課題となっている住宅・建物の耐震化・安全対策だ。マンションが度重なる余震によってダメージを受け、夜は恐くて家では眠らない、車内で泊まるということ。そして余震が止まっても、住み続けられるのか、建て直しが不可欠なのか判定が難しい。とくに高齢者はどうしたら今後の住まいを確保できるか。仮設住宅も緊急に必要だが、肝心なのはそのあと、住まいをどう確保するか。そこに住民の不安が募っていることに対応する対策だ。さらに宇土市役所や熊本の病院で使用不可能となったり、耐震化を施した学校施設等で、度重なる余震で使用不可となったものが現れたことだ。公共施設の耐震化をより強化させなくてはならないという課題だ。

第3には、被災者への配慮だ。避難所への避難者が多数発生し、それに加えて車内避難者がエコノミークラス症候群で死者まで出ていることだ。衛生管理、健康管理、プライバシー確保、そのための相談、時間とともに移り変わる支援物資等の的確な支援、高齢者や身障者への配慮......。高度先進国、災害列島日本で、災害のたび体育館に避難する、そうした状況を変えなくてはならない。日頃からどのように備えておくかということだ。

第4には、日常活動を取り戻すにはライフラインの復旧が1時間でも、半日でも早く行われていくことだ。水道、下水道、電気、ガス......。今回は水道が最も遅れるようだが、日頃からこの耐震化や老朽化対策を進めていくことが重要だ。

同じ地震でも東日本大震災は津波と原発。阪神・淡路大震災では交通網の分断と建物の倒壊と火災。それぞれ備えるべき優先順位は地域性もあって異なる。国としては「防災・減災対策を国を挙げての最重要政策の一つに押し上げること」、そして各個人は「各災害に自分はどう対応し、動くかを日常から考えること」――。やるべきことは明らかだ。地震への備えに全力をあげる決意だ。

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