政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.98 洪水、防災対策の強化が急務/台風・降雨は明らかに変化

2016年10月19日

雨の降り方がおかしい。台風の動きがおかしい。雨は間違いなく局地化・集中化・激甚化しているが、今年は更におかしくなっている。台風7号、9号、10号、11号は、今まで太平洋から直撃したことのない北海道、東北(とくに岩手県)を暴風域を伴ったままで襲い、多くの死傷者、被害をもたらした。年に3つの台風が北海道に上陸することも、東北地方の太平洋側に上陸することも、気象庁の統計開始以来、初めての出来事だ。台風16号は九州に上陸して東に進み、太平洋沿いに大雨を降らした。地球温暖化が原因とは断定できないが、日本が気候変動に見舞われ、年間降水量の少ない北海道(オホーツク地域では全国平均1,600㎜に比して800㎜)でも、全国並みの水防災対策が必要となってきたと捉えるべきだろう。

常総②.jpg一昨年8月の広島の土砂災害や、昨年9月の関東・東北豪雨(鬼怒川等の氾濫)等を踏まえ、国土交通大臣であった私は、新たなステージに立っての一段と強い水防災対策に取り組んできた。

対策はハード対策とソフト対策の両方だ。ハード対策としては、堤防整備・河道掘削等の流下能力向上対策がまず大事になる。河川のコントロールは、「川幅を広げる」「川底を掘る」「堤防を上げる」「遊水池等に逃がす」「ダムで調節する」等の組み合わせによって行う。今回の北海道を見ても、これだけの豪雨が集中するとなると、堤防や遊水池整備など、従来とは違った対策が必要だ。さらに、浸透・パイピング対策、侵浸食・洗掘対策等を施すことだ。国土交通省は、こうしたハード対策として、優先的に対策が必要な国の河川約1,200kmについて、平成32年度を目途に、概ね5年間で整備することを決め、動いている。そして、「どこで何をやるか」を関係県市町村にも説明を行った。また、越水した場合に決壊までの時間を少しでも引き延ばし、避難の時間を確保するよう、堤防構造を工夫する対策を全国約1,800kmについて実施することとした。この対策も概ね5年間で実施する。私の地元にある荒川でも危機管理型ハード対策として堤防天端をアスファルト等で保護する保護対策や堤防裏法尻の補強の工事が開始されている。

次はソフト対策だ。考え方は「施設の能力には限界があり、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水氾濫に備えることだ。被害を軽減する、住民等の避難行動を支援する住民目線のソフト対策だ。まず、住民等の行動につながるリスク情報の周知が不可欠となる。各自治体のつくるハザードマップの改良や、立ち退き避難が必要となる家屋が流されるおそれが高い区域等の公表。さらに私が進めてきたタイムラインの策定だ。各関係機関とも連携して、「台風の3日前にはどう動く」「1日前にはどう動く」「12時間前にはどう動く」などという取り決めがタイムラインで、米国のハリケーン・サンディ以来、わが国でも取り入れてきたものだ。現在、国の河川の沿川730市町村のうち濃淡はあるにしろ589市町村で整備ができている。内容とスピードアップが大切だ。

伊豆大島③.JPGさらに避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供する試みが始まった。あの地震の際の緊急地震速報の洪水版だ。水害リスクの高い地域を中心にしてスマートフォンに配信する試みだが、この9月から鬼怒川と肱川で始まった。また避難勧告の出し方、連携は首長が最も悩むところだ。気象庁や国土交通省と連携しなければ、その責任の重さから、ひとり首長だけでは決断ができない。もっともっと磨き上げる必要がある。

防災・減災、ハード対策・ソフト対策――雨の降り方は新たなステージに入ったと認識し、覚悟を決めた対策に踏み込む時だ。

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