政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.99 進めよ「ケア・コンパクトシティ」/激変の社会に新しい都市づくり

2016年11月24日

20140708柏の葉街路.jpg「国土のグランドデザイン2050――対流促進型国土の形成」――。私が国土交通大臣として2年前、提起したものだ。そこには日本の未来への危機感があった。急激な人口減少・少子化があり、異次元の高齢化の進展がある。2025年には、団塊の世代がついに75歳以上になる。世界的な都市間競争の激化、切迫する巨大災害、エネルギー制約と環境問題、ICTの劇的な進歩など、大きな変化を想定しての国土づくり、都市づくりが必須となる。国土を構造的にどう作り直していくかということだ。

基本コンセプトとして示したのは「コンパクト+ネットワーク」だ。経済活動とともに医療、介護、子育て、商業、行政など生活に不可欠なサービスがサスティナブルに供給される。そのためには都市構造は最低限の密度を備えているべきだという至極もっともな考え方だ。多くの県庁所在都市では、過去40年の間に人口が約2割ふえた。しかし都市の面積は2倍になり、密度としては薄まっている。その人口がこれから減っていくから、密度は更に減り、都市構造を支えきれなくなる。しかも高齢者が多くなり、2025年には75歳以上が約2200万人、認知症の人は約700万にもなる。当然、生活に不可欠なサービスは、身近な所で提供されることが求められる。急性期の病気よりも、慢性疾患を多く抱えた高齢者が多くなることを考えれば、コンパクトシティはより望まれるといってよい。それなくしては「2025年、高齢者が医療・介護難民になる」という指摘もある。

勿論、コンパクトシティといっても周辺部が切り捨てられるのではない。農業や林業も重要だし、そこでの生活を考えると、各種サービスが提供される「小さな拠点」を整えることが重要だ。まちなか相互や小さな拠点との間を公共交通中心のネットワークでつなげば、生活の利便性を確保しながらサスティナブルな地域構造を実現できる。これがコンパクト+ネットワークの本質だ。そして、"地方消滅"といわれる危機を脱するために、個性あるコンパクトシティと隣接の個性あるコンパクトシティの連携を図る。そこに違いがあるからこそ"対流"が起きる。地域が活性化するよう連携革命、交流革命がダイナミックに行われるようにしたい。それが「対流促進型国土形成」だ。

この「国土のグランドデザイン2050」を世に出して、2年以上経った。コンパクト+ネットワークのコンセプトへの理解が広がり、地方自治の現場で着実に仕事を進めてくれている。約300の市町村でコンパクトシティ構造に誘導するための計画づくりを進めていると聞く。

富山⑤1103.pngそのための支援ツールは、国土交通省だけでなく、医療・介護施設の立地誘導策を厚生労働省が、地方財政措置による支援策を総務省が、と政府あげて検討している。コンセプトの理解が広がっていることの証でもあり、提唱してきた者としてますます後押ししたい。

大事なことは、産業や医療・介護・子育て、商業等を含めたコンパクト+ネットワークへの強い意志、意識統合だ。従来は、地方都市の中心市街地活性化問題が大規模商業施設との関係で議論されてきたり、国交省が都市計画、経産省が中心市街地・商店街の活性化、厚労省が福祉政策からアプローチするという傾向が強かった。厚労省の地域包括ケアシステムだけだと、"立地"の視点が欠けると私は常々いってきた。今、これらが「コンパクト+ネットワーク」、財務省出身の経済学者・小黒一正氏が地域包括ケアシステムを含めた「ケア・コンパクトシティ」を提唱するようになったように、考え方は大きく前進し始めた。

都市構造を変えることは時間がかかる。しかし、成果が出るまで時間がかかるからこそ、すぐに始めることが大切だ。2025年まで考えてもそう時間がない。「コンパクト+ネットワーク」「ケア・コンパクトシティ」が進むよう力を注ぎたいと思う。

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