政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.103 世界に広がる"ポピュリズム"/現状打開への意欲もつ政治へ

2017年3月19日

世界の政治は激震のなかにある。英国のEU離脱、トランプ大統領の誕生・・・・。そこには移民・難民等に対する不満と怒り、格差の拡大、貧困の固定化など、欧米社会の共通した変化があり、中間層等の怒りがある。これまで築いてきた世界秩序や経済システムにほころびが出ていることを直視し、新たな秩序の地平を拓くという覚悟が問われている。振り回されることなく、歴史的時間と世界的広がりを踏まえた自らの戦略を前に進めることだと思う。

本会議答弁①.jpg政治について、民主主義について考えると、これら現象のなかで顕著なのは「ポピュリズム」ということだ。このところ寺島実郎氏が「反知性的ポピュリズムが跋扈しており、民主主義への失望に拍車をかけている」(「シルバー・デモクラシー」)といい、水島治郎氏が「ポピュリズムは民主主義の敵か、改革の希望か」(「ポピュリズムとは何か」)と、世界を揺さぶる"熱狂"の正体を解説しているように、社会の変化と民主政治のあり方を冷静に捉えることが不可欠だ。

水島氏が「ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる」(マーガレット・カノヴァン)を紹介しているように、波打つデモクラシーの波形が、時を経て世界的にある水準に至ったがゆえに、今日のポピュリズムが生起しているのだと感じる。

「大衆迎合主義」とも訳されるポピュリズムだが、世界的に「反エリート・反エスタブリッシュメント」「既得権益への反発と断罪」「代議制民主主義の機能不全傾向と草の根の直接民主主義への意思」「置き去りにされた人々への共感と標的への攻撃」「反移民・反難民・反イスラム、外国人流入への強い警戒感と排外主義」「メディア・ネットの活用と人民への直接の働きかけ」など、共通項目は多い。

背景はさまざまある。まず、グローバル化と格差の拡大がある。また、民主政治が成熟してくるなかで、既成政党の求心力の弱まりと、政党間での政策距離の狭まり、無党派層の増大がある。さらにもっとストレートかつ鋭角的に我々の声を聞けという民衆の不満や怒りが噴出していることは間違いない。そこに既成政党ではない"ポピュリズム勢力"台頭の舞台がある。しかし、その"熱狂"が危うさを内包し、民主主義の軽さをより助長し、国家主義等への誘惑に引っ張られるという懸念は、歴史的にも常に指摘されてきたところだ。

その歴史上の"熱狂"の最たるものは、第二次世界大戦を引き起こしたファシズムであった。ハンナ・アーレントの「全体主義の起原」、デイヴィッド・リースマンの「孤独の群衆」、ヨハン・ホイジンガのいう小児病というべき「ピュアリリズム」、オルテガ・イ・ガセットの「大衆の反逆」、エーリヒ・フロムの「自由からの逃走」・・・・。「全体主義は全体の中への個の埋没」「全体主義は、大衆迎合的な"プロパガンダ"によって巨大化していく」「全体主義運動は、全体主義運動を盛り上げるということ以外の目的を持ち合わせていない自己目的運動である」「大衆社会における凡庸な人々の思考停止」と指摘されるように、プロパガンダで喧伝し続けた主義・主張は、人々の潜在意識下にもっている願望に応えるものとして用意され、大衆迎合の帰結として準備されたものといってよい。それゆえに"熱狂"をもって迎えられたのだ。

委員会答弁①.jpgはたして21世紀はそれを克服しているであろうか。条件はむしろますます悪い。ほどほどの豊かさと、議会制民主主義が備えられてはいる。その一方で、インターネット、SNS、メディア等々の飛躍的発展は人々を情報の渦に巻き込んでいる。人も制度も鍛え続けないと濁流に飲み込まれること必定である。

成熟した民主国家はある意味で不断の挑戦ともいえる。また、移ろいやすい民意であればこそ、振り回されずリードする政治の役割は大きい。たんに民意をそのままつないでいく代表ではなく、代議者としての識見を持ち、未来を見つめて政策化していく、オピニオン・リーダーとしての質をもつ政党・政治家の役割りはきわめて大きい。国会論戦においても、質の高い議論が国民の前で繰り広げられてこそ、議会制民主主義は定置する。その意味で「ポピュリズムとは何か」を考えること自体、大切なことだと思う。そして常に現状打開への意欲をもつことだ。

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