政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.105 都市農業の振興、都市農地の保全を後押し/食の安全、食育、防災、景観、環境など多くの効果

2017年4月25日

都市農業③.jpg「都市農業はきわめて重要だ」と私は考え、行動してきた。その都市の中で営まれる都市農業を後押しする制度改正が今、進んでいる。

私が国土交通大臣だった平成27年4月、「都市農業振興基本法」が制定された。これは国土交通省と農林水産省が連携して、都市農業の振興策を打っていく枠組みを定めたもの。都市農業に注目した初めての法律だ。昨年5月には、具体策を盛り込んだ「都市農業振興基本計画」も閣議決定された。このような動きに、特に3大都市圏で都市農業を営む人々は、非常に勇気づけられていると思う。

しかし、これまでの経緯をみると、都市農業にとって厳しい状況が続いていた。高度経済成長期以降、3大都市圏へ人口が急激に流入する中で、住宅難解消のために都市農地はどんどん宅地化が進行。地価の上昇で税負担も増えた。

バブル経済による地価高騰を契機に、1991年、都市農地を保全するための生産緑地の制度改正が行われ、固定資産税の農地並み課税や相続税の納税猶予など税の軽減措置も設けられた。しかし、生産緑地では30年間という長期の建築制限が課せられ、相続税についても終身営農し続けなければ免除されないなど、制度の活用には厳しい制限も存在。農家の高齢化や後継者不足もあって、農業をやめてアパート経営を行うなど、農地の宅地化はその後も進んだ。その結果、3大都市圏の都市農地は、約20年間で半分近くにまで減少してしまった。

しかし近年、都市農業・都市農地が持つさまざまな効用、機能が注目されている。

まず、安全・安心な食の供給だ。「食の安全」への意識が高まる中で、身近な畑で採れた新鮮な野菜や果物に対する評価が高まっている。生産者の顔が見えるということも大事だ。最近では、農地のすぐ傍に"農家レストラン"を開業する取組みも始まっている。

都市農業公園②.JPG

そして、農業に対する理解を深める学習・交流の場としても重要だ。自分や家族が食べるものを自ら育てたいという都市住民のニーズに応える市民農園や、学校教育における農業体験の場としても、都市農地は多く利用されている。

私の地元の足立区では、地場産の新鮮な野菜を使った「おいしい給食」に力を入れており、給食を通して生産者への感謝、自然の恵み、調理してくれる人への感謝を育む食育にもつながっている。食べ残しも減り、"食品ロス"対策としても非常に有効だ。

さらに、災害時における避難場所や火災の延焼を止める防災空間としての機能や、都市における貴重な緑地空間として良好な景観を形成し、安らぎや潤いをもたらす機能もある。雨水の貯留・浸透や地下水の涵養、生物多様性の保全など、環境面での役割も大きい。

今通常国会では、この都市農業への支援がさらに進む。都市農業をさらに支援する法改正が提案されている。画期的なことだと私は思っている。生産緑地の面積要件(500㎡)を、市区町村の条例で300㎡まで引き下げられるようにし、小規模な農地でも保全できるようにする。生産緑地指定から30年経過後も、農家の意向に沿って保全が可能となる仕組みも設ける。また、生産緑地内に農産物直売所や農家レストランを建てられるようにして、利便性を高める内容だ。要件緩和後の生産緑地にも、引き続き固定資産税や相続税の特例措置を適用する税制改正も認められた。法律の成立後は、しっかり活用していかなければならない。

都市農業は、消費地に近いという立地条件を活かし、消費者のニーズが高い新鮮な農作物を直接販売するなど、収益性の高い農業経営が可能だ。

人口減少社会における都市のあり方は、コンパクトシティをめざす方向に重点を置いている。環境共生型の都市を形成していくためにも、農地は都市になくてはならない貴重な資源だ。
都市農業の持続的な振興を図り、都市農地を守っていくため、これからもしっかりと後押ししていきたい。

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