政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN
NO.132 時代の激変と政治のリーダーシップ/時間軸をもち先手を打つ政治を!
時代の進展は速い。社会の変化は激しい。だからこそ政治のリーダーシップ、政治家の構想力が不可欠だ。官僚機構に乗っかり、利害の調整に力を注ぐ時代ではない。「時間軸をもった政治」が求められるゆえんだ。
「2025年には団塊の世代が75歳以上になり、認知症700万人、全国の空家が1000万戸になる」――大変なことだ。いよいよラグビーワールドカップが始まり、即位の礼が行われると、明年2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ一直線となる。勢いをつけることは重要だが、2025年まで6年、2030年までわずか11年しかない。人口減少・少子高齢社会、AI・IoT・ロボットの急進展という構造変化にどうダッシュするか。喫緊の課題といってよい。
宮部みゆきの近著「さよならの儀式」は面白いが恐ろしい。短篇集だが、「被虐待児とその親を保護・育成するために"マザー法"なるものが成立し、親子のつながりに国が介入して遮断する」「汎用作業ロボットが各家庭に行き渡り、家族のようになる。廃棄する時の別れる辛さ、廃棄業者のあり方をどうするか」「いつの間にか街には防犯カメラ等が増え、監視されているが、どうもそのカメラ自体にモノが侵入し、意識的に操作が行われる」「ネット上にフェイクニュースがあふれ、知らないうちに自分が教祖のようになっていたというフェイクの暴走」「人間と人造擬体とが共存する村」・・・・・・。全くのSFとは思えなくなっているから恐ろしいのだ。同じく東野圭吾の新作「希望の糸」も「人工授精、卵子提供の取り違えが、殺人事件にまで発展してしまう"運命に操られる家族"」を描いている。
科学技術の進展はどこまで行き、人類に何をもたらすか。「サピエンス全史」「ホモ・デウス」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)、「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著)、「人工知能と経済の未来――2030年雇用大崩壊」(井上智洋著)、「AIが変えるお金の未来」(坂井隆之・宮川裕章+毎日新聞フィンテック取材班)、「5Gビジネス」(亀井卓也著)・・・・・・。あまりにも多くの著作が出され話題となっている。社会の隅々にまで、人間の深部まで浸透し激変する社会が目の前にあり、スピードを増している。世界の問題であり、社会の問題であり、人間の問題であり、生命の問題であり、「科学と哲学・宗教」の問題でもある。
「時間軸をもった政治」と私がいうのは時代への動体視力をもって「先手を打つ政治」ということだ。対応ならば官僚に任せれば一定の成果は得られる。しかし、官僚は自ら「先手を打つ」という行動には出ないし、出れない。よく「官僚主導か政治主導か」などという。私はその問題設定には全く違和感をもってきた。優秀な官僚を使えるか否か。「時間軸をもち、先手を打つ」――その政治を政治家ができるかどうかだろう。これまでの政治は三次元の空間とイデオロギーを視角に収めて戦うことだったといってよい。今は5G時時代、5次元を視座に置くことが不可欠だといえよう。"政治家の劣化"が指摘されるが、本質的には昔の政治家と比べて"劣化"しているのではない。今、求められている時代の要請に応えられる政治家かどうかということだ。その前提として、まず、現在置かれている現状に対する危機感を共有すること、そして見出した糸口から「先手を打つ」ことが大切だと私は思う。世界の外交も激変、各国も混迷、社会の急速度の進展・変化のなかで、2020年代を前にして、自公政権の意欲と意志、覚悟がますます求められている。