政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.131 観光立国は新たなステージに!/キーワードは「質」の向上

2019年8月 8日

先日、2019年6月の訪日外国人旅行者数が公表され、上半期(1月~6月)として過去最高の1663.4万人(前年同期比4.6%増)を記録した。特に、韓国・中国・台湾・香港の4市場が6か月ぶりに揃って対前年同月比でプラスとなったことは、注目に値する。

昨今の外交面での不安定要素を乗り越えて訪日外国人旅行者数が伸びていることは、重要な意味を持つ。現場レベルの継続的な交流により、観光が対日感情の改善に果たしてきた役割りはきわめて大きい。私は、実際に日本を訪れた外国人観光客が「日本は素晴らしい」と発信してくれることが、相手国との関係改善に向けた大きな力となると確信している。 

観光1000万人 2013.JPG政府が「観光立国」を掲げてから数年間、当初目標の1000万人になかなか到達できない苦しい時期が続いた。そうしたなかの2012年12月、私は観光庁を所管する国土交通大臣に就任した。就任後、直ちに、安倍総理、菅官房長官とともに、思い切ったビザ緩和を実施するとともに、戦略的な訪日プロモーションを推進した結果、就任からわずか1年で、1036万人に到達できた。その時の喜びは、忘れることができない。

驚くべきことに、その勢いは加速度を増し、わずか5年後の2018年には3119万人を記録した。さらに注目すべきことは、同年の訪日外国人旅行消費額が、民主党政権時代の4倍以上の4.5兆円超となっていることである。地方の活性化という観点からも、観光はきわめて重要な役割りを果たしているのである。

このように、安倍自公政権の積極的な取組みにより、観光戦略は急スピードで成果を上げ、数多くの訪日外国人旅行者を呼び込み、観光を日本経済の成長エンジンとするに至った。しかしながら、私は成果を上げている今こそ、「観光立国」を次のステージに引き上げるべく、足腰を鍛え直すべきであると考える。

見落とされがちではあるが、躍進を遂げる我が国の観光にも、いくつかの変調の兆しが出てきている。ここで4つほど言及したい。

観光立国 0612.jpg1つ目は、訪日旅行者数の伸び率である。2018年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の3119万人となったが、伸び率でみると、前年比8.7%増となっている。その前年が20%程度の伸び率を記録していたことを踏まえれば、その状況・要因をしっかりと分析し、方針を立てていくことが必要だ。また、今後は、一人あたりの滞在日数などについても、いっそう重視していくべきである。

2つ目は、観光によって生じうる負の影響である。あまりにも急激に訪日観光客が増加したことにより、一部地域では、混雑やマナー違反などの問題が生じていると聞く。真の「観光立国」となるには、このようなマイナス面の影響についても、しっかりと対策を講じていかなければならない。

3つ目は、民泊である。違法民泊を解消し、多様化する宿泊ニーズに対応すべく、住宅宿泊事業法が制定された(2018年6月施行)。法に基づく住宅宿泊業の届出件数は、法の施行時点の約8.4倍となる18,512件(2019年7月時点)となり、順調に増加しているが、地域間の偏りは否めない。また、件数が多い地域でも需要に見合った普及ができているのか、違法とまではいかないが地域から迷惑施設の声が上がっている等、キメ細かな検証が必要だろう。

4つ目は、クルーズ観光である。2017年には、2013年比で14倍以上となる252.9万人を記録したが、2018年は前年比3%の減少となった。政府は過熱したマーケットが調整局面に入ったものと説明しているが、クルーズ観光については、これまでも、寄港地のせっかくの観光資源を素通りするような商品が提供されることにより満足度が低いこと、本来のクルーズ観光というより爆買いに近いという非難等が指摘されており、クルーズ観光の幅広い質の向上が求められている。

これまでの観光戦略は、まず「数」という目に見える成果を目指して、がむしゃらに走り続けてきた。それにより、観光は、我が国経済の成長エンジンとなった訳であるが、今後は、観光を持続的に地方の活性化に貢献できる、成熟した産業にまで育てあげる必要がある。それには、観光の「質」を高めていくことが不可欠だ。

例えば、地域の観光資源を活かした「コト消費」への移行は、「質」の高い観光の実現の重要な鍵となる。今ここでしか体験できない、付加価値の高い「コト消費」が花開くことにより、滞在日数が伸び、経済効果もよりいっそう大きくなる。

小木港0718.jpg今後は、観光の「質」を追求していくことだ。目の肥えた観光客の需要にも応え、幾度となくリピーターを惹きつけるような観光資源の磨き上げや、受入環境整備を進めていけば、我が国の観光は、持続的な地方の活性化に欠かせない産業になる。そうした努力のなか「数」が結果として付いてくると、私は確信している。

本年10月に北海道で開催されるG20観光大臣会合では、「SDGs(持続可能な開発目標)に対する観光の貢献」が、主要テーマの一つとなっており、議長国である日本は、世界に先駆けて取組みを進めてこととなる。

観光立国を新たなステージに引き上げるべく、私も、なおいっそう、力を尽くしていく決意である。

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