政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

太田昭宏の政界ぶちかまし☆85

2009年6月24日

先月末、目と耳が不自由な盲ろう者の自立を支援する拠点「東京都盲ろう者支援センター」が開設された。私もセンターを訪問し、設立に熱心に取り組んできた盲ろう者である東大教授、福島智さんらと意見交換した。福島教授についてはこのところ、「爆笑問題のニッポンの教養」(NHK)などのテレビ出演や、「ゆびさきの宇宙」などの書物が新聞各紙の書評で紹介され、センター設立に努めてきた公明党としても大変うれしく思っている。

目が見えず耳も聞こえない。それはどんな世界であろうか―。無音漆黒の世界の中にたった一人。地球からひきはがされ、果てしなき宇宙に放り出されたような孤独と不安の中で、福島さんは生き抜いている。

「苦悩と絶望は違う。意味を見いだせば絶望ではない」「不便なことと不幸は違う。障がいの有無と幸、不幸とは本来関係ない」「能力は本質でなく属性。否定すべきは、能力の差とその人の存在の価値を連動させることだ」。自分自身や人間の存在を問い続けてきた福島さんの思索は深く、生き抜いている人生は重い。

その福島さんを絶望から救ったのは、支援する方々の心と、母親とともに考案した指先を点字タイプライターのキーに見立てて打つ「指点字」だ。福島さんと話をしていて、コミュニケーションを可能にした指点字の驚異的な早さと、福島さんのユーモアに富んだ発言に感動した。

今回開設した東京都盲ろう者支援センターは、米国の盲ろう者支援施設「ヘレン・ケラー・ナショナルセンター」の自治体レベルの日本版だ。センターでは指点字や手のひらに書く手書き文字の読み書きなどコミュニケーション方法のほか、生活訓練やパソコンなどの活用法の学習や、盲ろう者への通訳、介助者の派遣や養成も実施する。

福島教授は「東京の拠点をさらに全国的な広がりに」と語っていたが、私も努力したいと強く思っている。

最近、社会が薄く浅くなったともいう。それは制度を支える力が弱くなったことでもある。人を支え合う力の弱体化ともいえる。人間力、地域力ということがよく言われるが、日本は家族や地域、そして企業までが見えざる社会保障を形成してきたが、これが崩れてきた。支援センターは生き抜く意味を思索しつつ、最近の社会風土に助け合うことの大切さを示す拠点でもある。

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