政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.9 憲法論争――評価される加憲の考え

2010年5月 2日

63回目の憲法記念日。2000年から憲法論議が衆参の憲法調査会を中心に活発に行なわれたが、安倍内閣の時代に国民投票法が成立して以降、論議はパッタリと止まったままだ。論議を深めるために法制化された憲法審査会も民主、社民等の抵抗にあって、全く進んでいない。憲法を論ずることは国の形を論ずるだけに、「日本が危ない」といわれるこの時に、論議自体が止まっていることは残念なことだ。

先日も、ある会合に出席したところ「日本が危機に瀕している今、最重要なのは憲法改正だ。政界再編して、3分の2を確保して改正を実現しないと、この国はダメだ。公明党は憲法改正をどう考えているか」という質問を受けた。私から、国家論を述べつつ、「公明党の加憲と国民投票法の中身」を説明し、理解していただいた。

公明党の憲法に対する加憲の考え方をわかりやすく整理すると次のようになる。

(1)現憲法は極めて優れており、定着している。
(2)公明党は護憲、改憲のイデオロギー論争を乗り越え、加憲という立場に立っている。
(3)加憲とは、憲法3原則を堅持し、時代の進展とともに提起されてきた環境権やプライバシー権などを現憲法に付け加えて補強する考え方で、アメリカのアメンドメント方式と同じ思考法に立つ。
(4)憲法改正を強引に衆院3分の2、参院3分の2で議決し、国民投票で2分の1を確保してやる、しかも全文一括でいっぺんにやってしまうというのはムリがある。

●国民からいくと、膨大な憲法全文をどう勉強し(ノイローゼになってしまいそう...)、どう賛否を○×の二者択一で投票するか決めることは、事実上ムリがある。
●たとえば前文の改正をするとしても、文言の違い、表現の違いで賛否が分かれるし、前文はこれで良くても9条はこれではダメ――というように意見が分かれるし、首相公選をはじめとする色々な領分でも意見が分かれるだろうし、全文一括で 改正することは事実上ムリがある。
●ムリと言うことは結局、政局的に3分の2、3分の2を衆参で強引に通過させても(できないと思うが...)、国民は「この部分は私は反対。だから変えないで今のままの方がまだいい」と否決が多くなると考えられ、結果として改正は否定される。

(5)加憲は部分修正的な方式であり、しかも今の憲法を残しつつ、それに付け加えるという極めて現実的、実現可能のものである。
(6)国民投票法は、こうした公明党の提起した「加憲」という方式を踏まえつつ出来上がっている。
(7)衆参それぞれで3分の2、3分の2で議決された場合、国民投票はどのように行なわれるのか。憲法担当だった当時の私としては、例えば「環境権」「9条関連(公明党は9条の1項2項を堅持し、自衛隊や国際貢献について加憲の論議の対象としている)」「私学助成に関係する89条」など、3つくらいを提起して、投票箱を3つ(3つのブース)くらいにすると、国民の賛否を問いやすいと考えた。
(8)だから、強引に3分の2、3分の2の勢力を衆参それぞれにつくるというのではない。与野党を超えて、これだけは賛成できるという項目を、加憲として実現していくということが、現実的だ。(勿論、国民投票法は前文一括でもできる形になっている)

以上のように整理して、国民投票法が出来上がっている。加憲の意義はきわめて大きいと私は思っている。この国が危機に陥り、未来への不安が広がっている今、与野党を超えて「国の形」を論ずる憲法論議の深まりが要請されている。

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