政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.12 世界経済は晴れ・曇り・雨の3極化--間違いだらけの政府の経済政策

2010年6月16日

「GW明け東京株、300円超の急落、ギリシャ危機拡大を懸念」というニュースが駆け巡ったのは、5月6日のことだ。「ゴールデンウィーク明け6日の東京株式市場は、連休中にギリシャ危機の拡大で、ニューヨーク株式市場などが大幅に下落したことを受け、日経平均は急反落して取り引きが始まった。200円安で寄りついた後、下げ幅は300円超に拡大した」というニュースだ。それから1ヶ月余。ギリシャの危機は、ユーロ全体の弱点をあらわにし、押し寄せる波のように世界各国に大きな影響を与えている。

まず日本経済をしっかりさせよ
しかし、そのつど、「日本への影響はどうか」という論調ばかり語られ、正直言って私はもっと落ち着いて、巨視的な分析と、足元の日本経済をしっかりさせることに力を注ぐべきだと思う。なぜそういう論調にならないか、残念で仕方がない。

実はリーマン・ショックから1年9カ月、世界はAグループ、Bグループ、Cグループにはっきり3極分化している。「晴れ、曇り、雨」だ。G20を中心にして協調・結束してきたなか、出口戦略が焦点になっているのに、「日本経済は回復に遅れ」だ。

●「晴れのAグループ」――中国、インド、ベトナム、シンガポール、韓国、インドネシアなどアジア諸国、そしてブラジル、豪州などは、生産回復度が過去のピークを更新している。すでに金融引き締めに入っている国もある。
●「曇りのBグループ」――米国、EU(仏、英、独)、日本だ。回復しつつあるが、過去の水準以下の段階にある。
●「雨のCグループ」――ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアなど南欧です。落ちたまま、二番底という状況だ。

残念なのは、日本がBグループ、曇りの国であることだ。リーマン・ショックの震源地アメリカや、最もダメージを受けた英国などと同様であること自体がおかしい。昨年来の、第1次補正を削り取った民主政権の逆噴射政策、マクロ経済運営の失政にあることは明らかだ。

「政権は、この9カ月、何もしなかった。何も変わらなかった」という人がいるが、そうではない。「何もしない方がまだ良かった。やらなくてもいいことをやったから、こうなっている。経済も財政も。放漫な財政運営で、ギリシャのようにしてはならない」――私は、こう言っている。

経済危機の"余震やまず"
この一年半、私は非常時の経済政策を打て、そして早く景気を回復させた後、ノーマルな経済・財政運営を行えといい続けてきた。昨年5月の第一次補正予算15.4兆円はそれを実行したものだ。

現在の世界経済はリーマン・ショックの経済危機の出口戦略の模索のなかにある。しかし、まだまだ"余震やまず"というなかにあることの自覚が大事だ。あるエコノミストの試算によれば、国際金融危機によって12兆ドルの需給ギャップがあり、世界が打った金融・財政政策によって8兆ドルの浮揚効果をもたらしたが、なお4兆ドルの差引デフレ効果のなかにあるという。この穴があいたままであるがゆえに、ドバイ・ショックやギリシャ問題、ユーロ危機が噴き出している。危ない状況だ。だからこそ出口戦略は慎重でなければならない。

政府の経済政策は逆
日本にとって大事なのはショックのたびにキョロキョロすることではない。日本経済をしっかりさせる。必要な財政出動もする。グローバル経済のなかで、先端技術開発、イノベーションを応援し、法人税の税率引き下げなどの企業支援策も大切だ。アジアを内需とするアジア版ニューディール。環境、農業、公共事業の前倒し、雇用確保にもなる社会保障の充実などに力を注ぐべきだ。そして文化・芸術、教育に力を入れで明日に向けて走ることだ。

菅民主政権は、このタイミングで財政再建、それも増税による財政再建をいい、しかも経済政策は家計に手当を出して消費を盛り上げて景気を良くするのだと主張する。誤りであることは自明だ。今は投資がない、仕事がない、雇用がしぼむという状況だ。そこに手を入れる経済政策をとるべきなのに経済政策が逆転している。今必要な景気回復へのアクセル、財政再建をめざすタイミング、手当ではなく仕事・雇用など、現状を踏まえての適切な経済運営、そして経済に対する動体視力をもっと磨けといいたい。

政策の誤りを正し、「内向き、下向き、後ろ向き」の姿勢を変えねば日本は浮上しない。

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