政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.17 「少女時代」とアジアの熱気

2010年10月23日

羽田空港に4本目の滑走路ができ、国際化へ動き出した。羽田には豊富な国内線網があり、訪日する外国人も増え(年間219万人の見込み)、経済効果も1.5兆円といわれている。私は「成田と羽田をリニアで結べば15分弱でいける」と提言してきたが、双方の発着枠の拡大と連携強化によって、羽田と成田がアジアの国際ハブ空港として脱皮するチャンスを迎えている。

「このままでは、空港も港湾もアジアのハブは全て中国、韓国になってしまう」「空港、港湾、高速道路、鉄道と一体的でメリハリのついた国土のグランド・デザインを描け」――私がずっと言い続けてきたことだ。しかし、「公共事業悪玉論」「コンクリートから人へ」などのスローガン政治がビジョン自体を放擲してきた。

アジアの熱気はすさまじい。先日も「韓国のIFEZに4億円投資した。すさまじい勢いが韓国にある」という生の声を企業人から聞いた。IFEZとは、仁川自由経済区域。ここを国家戦略として、世界の資本を取り込み、新産業の都市自体を誕生させる。ICTビジネス、環境、医療、教育、R&Dつまり先端技術開発拠点を築き上げる。そのプロモーション・ビデオを見たが、未来に向けて、世界の拠点を作り上げよう、世界の企業にどうぞ投資をしてください、都市そのものを創造するという意欲的挑戦だ。

この半年、サムソン、LG、現代の特集が月刊誌などで繰り返し成されている。リーマン・ショックから2年、韓国ウォンは最大45%安、日本円は最大40%以上の円高、これを利用しての戦略に、日本企業は大苦戦。グローバル経済の構造変化に韓国勢が明らかに踏み込んでいる状況だ。

人気沸騰の「少女時代」は、従来の「冬ソナ」とか「韓流ブーム」などではなく、明らかにグローバル市場への展開を戦略的に緻密に鍛え上げており、韓国は経済だけでなく、文化・芸術をも加えて攻勢をかけている。

もちろん中国もパワー全開だ。都市創造でいえば中国政府肝いりの省エネのスマート・シティ「天津生態城」など、アジアを巻き込んでの動きは急だ。明らかに都市自体を創り変えようとしている。

別の企業では、「韓国のIFEZは地理的に北すぎる。もっと中国南部、東南アジアの拠点づくりに自分の社は備えようとしている」という声も聞いた。アジアのパワー、中国のパワー、日本のエネルギーの無さ、政治の遅さと内向きに対して、日本の企業の苛立ちはギリギリの所まで来ている。

これに対して、「韓国も若年雇用問題を抱えているし、大企業優遇で不満がある。」とか、雇用、格差など中国経済の諸問題を指摘する声も当然ある。しかし、矛盾や問題を指摘しても、日本自体が動かないことには何にもならない。

グローバリゼーションという構造変化。世界の競争の激化。研究開発の拠点まで海外に移っている現実。そして、頼みの輸出も北米からアジアシフトへの流れのなかにある。日本の製造業も岐路にあり、円高とあいまってすそ野産業、下請け企業の移転も加速している。アジアの熱気を「アジアは内需」と大きな肺活量で取り込む気概と制度の設計・支援が不可欠だ。

「内向き、下向き、後ろ向き」の政治を変えないと、日本は立ち直れない。

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