政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.18 断固たる成長戦略と雇用促進策を!

2010年11月16日

「大学生の就職内定率は10月1日時点で57.6%と過去最低」――こうした深刻なニュースが先日流れた。「就職氷河期」と呼ばれた平成15年の60.2%よりも更に低く、昨年同時期よりも4.9ポイント低い。希望に燃えてスタートを切ろうとする若者を、社会が迎えることができない。これほど情けないことはない。一方、労働者派遣法改正案は、今国会でも見送られる見込みだが、雇用情勢自体が、大きく変化。2年前に約399万人といわれた派遣労働者は現在約140万人と激減し、製造業も海外に拠点を移す、いわゆる空洞化が進んでいる。菅政権は「雇用、雇用、雇用」などといっているが、中身がなく"空きカン"状態。政治が迷走している間に、足元の雇用情勢はますます深刻化している。

雇用は全ての土台であり、要だ。景気回復といっても雇用、強い経済といっても雇用、国の財政運営といっても雇用なしでは始まらない。年金・医療・介護の社会保障といっても、雇用があってのものだし、生活を考えても雇用があってこそだ。だから私は今、「社会保障プラス雇用が大切」とする生活保障概念に立って政策を進めることが肝要だと主張している。

リーマン・ショックから2年――。公明党は雇用について「守る」と「創る」という両面に政策を集中してきた。

まず「守る」ということだ。企業として失業を回避していけるように助成をする「雇用調整助成金」を使い勝手のよいようにした。最大は253万人(昨年4月)がこの制度を受け、失業を免れた。今も9月では110万人と大きい。しかしこれは、あくまで止血、緊急対応措置だ。

一番のセーフティネットは「雇用保険」。これも金銭面だけでなく次の雇用に向けての訓練の充実に力を注いだ。さらに雇用保険に入っていない人に、7000億円の基金を積んで、最大月12万円支給して生活を支えつつ訓練をする「訓練・生活支援給付金制度」をつくった。非正規の人の雇用が深刻だということから知恵を出したもので、私たちは第2のセーフティネットと呼んでいる。民主党政権は、この扱いも迷走したが、雇用の不安定さからいって恒久化すべきである。

産業の空洞化が指摘されるが、とくに製造業の雇用の減少がめだつ(この2年で約127万人)。ドイツなどは、製造業が雇用の柱としてしっかりしている。空洞化ということでよく、人件費が高いので海外に出ていくという声があるが、製造業の人件費コストはそれほど高くはなく、大事なのは「モノづくり」を大切にし、付加価値をつけることを促進させる政策の集中だ。私たちは「モノづくり」に力を入れてきたが、どうも現政権からその意欲が感じられない。経済には「かせぐ」ことが不可欠で、削ることばかりでは雇用は失われるばかりだ。

「雇用を創る」ことは、景気・経済の活性化が大事だが、戦略的な雇用創出が何よりも大切となる。経済成長戦略だ。私は従来から「グローバル経済と共生できる日本を救う5つの処方箋として「環境」「社会保障(医療・介護等)」「農業」「必要な公共事業の前倒し」「教育」の5分野での投資を主張してきた(昨年の中央公論3月号など)。ブレることなく進まないと日本に未来はない。

さらに、雇用にはキメ細かな対応が不可欠だ。中小企業と若者との間のミスマッチ解消、どうも若者の目は大企業に向きがちだが、中小企業の求人は高いものがある。中小企業への支援は雇用という観点からも重要だ。また、NPOやソーシャルビジネスなどの活用により、新産業の創出や地域雇用の創出を強力に図る必要がある。

雇用政策は全般にわたる。GDPは資本と生産性と労働人口の3要素からなる。人口減少社会にあっても、「若者」「女性」「60代以上の高齢者」など、潜在的な国内労働力をもっともっと応援していくことが成長につながる。キメ細かなことから大きな政策に至るまで、戦略性が今ほど必要な時はない。「雇用、雇用、雇用」とただ言っているだけ、しかも先日の事業仕分けで、6月の新成長戦略で10年間に300万人との目標を掲げた「ジョブカード」を廃止にしてしまう現政権――ますます日本は沈んでしまうと危機感がつのる。

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