政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.25 地震・津波・原発事故の3つの危機――現実を直視し、大胆な対応を急げ

2011年4月 5日

東日本大震災は緊迫した状況が続いている。地震・津波・原発事故の三つの危機が列島を襲い、日本はかつてない打撃のなかにある。何としても克服し、日本再建・日本復興を果たさなければならない。

学生時代に耐震工学を専攻し、政治活動の柱の一つが防災であり、これまで地震・水害などの現場に直ちに入った私として、発災後、現地の視察を含め走り回ってきたが、今回、とくに踏まえねばならぬことがあると思う。ことの本質と現実を直視し、整理しないと対策は実らないと考えるからだ。

それは、「地震災害と津波災害は全く違う」ということ。そして、そもそも「直下型大地震とプレート型地震とは違う」ということだ。さらに「安全と安心は違う」ということ。「救済と復旧と復興は違う」ということ。「何事も政治主導を掲げることと、経験とノウハウのある官僚が働くこととは違う」ということ。「首相などの中枢リーダーの政治的決断・発言と技術的説明は違う(政治家の発言と官僚・技術者の説明は分けよ)」ということだ。政府の動きをみて、どうもこれらの違いがわかっていない。危機の時のそうした違いが身体でわかっていないと、混乱が生じ、対策は実らない。

地震と津波被害は違う
「地震と津波災害は違う」――地震災害の場合は、倒壊と火災。家が壊れても停電しても、インフラは残っている場合が多い。しかし津波は、町全体が、インフラ自体が根こそぎ奪われてしまう。ガソリン不足も、ガソリンスタンド自体が津波で打ち壊されていることに深刻さがある。仮設住宅を建設しようにも、土地自体が見つけられないという困難さがあり、海岸近くの町自体の再建コンセプト自体が根本から問われている。プレート変動による地震によって海岸の地盤自体が1m前後沈んで、いまだに水がはけない困難さなどはその一つの現われだ。

「安全と安心は違う」――安全と安心の両面にともに100%、全力かつシャープに手を打つことだ。まさに原発事故は今回起きた最大の問題だ。原発の安全は、「止める」「閉じ込める」「冷やす」の3つによって確保される。制御棒が直ちに入ったので「止める」ことはできており、チェルノブイリとは違う。

止める、冷やす、閉じ込める
原子炉格納容器も損傷がきわめて懸念されるが、「閉じ込める」も破壊とは次元を異にする。しかし今後、とくに深刻なのは放射能漏れだ。とにかく問題となったのは「冷やす」という点だ。非常用電源が津波によってと思われるが、働かないことが最大の問題。私は自衛隊も消防も全てをここに投入することを主張し、公明党として冷却用に58mのプッツマイスター社の"キリン"の投入を働きかけた。困難な現場で必死の戦いをしている人たちに心から感謝申し上げたい。とにかく、危機管理においては、今、ただちにやるべきことに全てを投入する決断がリーダーには求められるし、あわせて最も苦労している現場を信頼してバックアップすることが大事となる。今回のように上からの中途半端な口出しは厳禁だ。

安全を確保するとともに、安心を確保する。とくに日本人の場合は、安心がきわめて大切であり、不安に思っているのに、安全を強調してもすれ違う。放射能が多く、避難・退避指示が20?30km、そして野菜や水が基準値を超えるものがあり、不安が大きく広がった。自主避難というのもわかりずらい。「基準値を超えた。しかし身体には今のところすぐ影響するものではない」という会見等が繰り返された。私は南相馬市にも行ったが、人々は疑心暗鬼になり、不安になる。風評ということも十分視野に置いて、正しく、そして丁寧に説明を行うことだ。それがあまりにも欠けている。とくに重要なのは、避難であれ、屋内退避であれ、いったん指示を出したら、それで終わりではない。その指示・方針が国民に受け入れられ、それが可能になるように態勢を整備することこそ重要だし、義務がある。今回、そうした言いっ放しの政府・民主党の姿勢にはイラ立ちと怒りさえ感じる。国民がどうしたらいいのかわからず不安になり、生活が混乱するのは当然のことだ。

「救命・救済と復旧と復興は違う」――しかも津波災害の場合、街を覆い尽くすガレキがあり、どういう町に再建するかという根本問題がある。復興どころではない。まず生活が始まり、仕事があるという状況をつくり出すこと自体が大切であり、そのためにも異例の措置、国の全面的支援が不可欠だ。従来の震災対応の法制度自体を思い切って変えなくては進まない。そう思っている。地元の中小企業、商店、漁業、農業、――それぞれの困難・課題を具体的に大胆に除く政治決断、そして全国展開する大企業の工場の壊滅的被害にも大きなバックアップが必要だ。

現場への全面的支援
これだけのダメージを受け課題は山積している。停電の問題も、計画停電の問題もあるし、需要が多い夏場をどう乗り切るか。日本の電力・エネルギー供給自体の再建策、日本経済全体の再建策も相当の力がいる。じつは堤防も破壊されたり、亀裂が入っており、雪融け前、夏の降雨期の前に修復させなければならない。

政治の大胆な決断と実行、そして現場への具体的な対策への全面的バックアップ――そこに全力をあげ、この未曾有の国難を乗り越えなければならない。

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