政治コラム 太田の政界ぶちかましCOLUMN

NO.27 活動期に入った大地震に備えよ

2011年5月20日

「今、政治に求められているのは、非常事態の本質を過不足なく厳密に国民に伝え、貧弱な危機意識と過剰な危機意識の両方を防ぐことだ」――長年、日本の政治を見続けてきた岩見隆夫さんは、今年初め(3.11以前)に、そう指摘している。長引く景気・経済の低迷、外交・防衛の危うさ、財政の悪化、社会保障への不安と不満、政治の鈍感と怠慢、指導者の言語感覚の貧しさ、閉塞感のなかでも間のびした危機意識・・・・・。そこに東日本大震災が襲いかかった。今、非常事態の本質を過不足なく厳密に国民に伝えているか。原発も、被害実態も、放射能も否だ。政府の当事者意識のなさと危機意識のなさにはこの2ヶ月、憤りを感じてきたし、あいまいな過剰な危機意識が日本を覆う。風評被害はその一つの現われでもある。

思考の過程がブラックボックス
最も基礎的な問題――。活動期に入っている地震。今回、何が起き、今、どういう地震が起きる危機に直面しているか。浜岡原発を停止する菅総理の要請についても、「誰がどう議論したのかわからない。民主党政権は思考の過程がいつもブラックボックスで突然結論が出てくる」という批判。「政府・民主党は何事も責任をとらない。今回も命令ではなく要請としているが、命令のようなもの」「原発の賠償問題も、とにかく東京電力に責任をかぶせている」という声、そして「なぜ浜岡原発なのか」「原発をどうするのか。エネルギーをどう考えるのか」等、不安と不満の声があふれている。そこに最も基礎的な、今回どういう地震が起き、どういう地震が今後起きる危機に直面しているかという前提の議論があまりにも欠如している。

今回の地震――。じつは前日の3月10日、私は全国の公明党議員に「首都直下型地震が懸念され(M7が30年以内に70%の確率)、宮城県沖地震が30年以内に99%といわれる今、大地震への備えを強化しよう」と訴えた。3月11日のあの瞬間、私は揺れ方から「直下型ではない。宮城県沖地震か」と思ったが、そうではなかった。宮城県沖よりもはるかに巨大、牡鹿半島の東南東130km付近を震源とするM9.0、断層の長さは450km、幅150km、最大すべり量は約30m、破壊継続時間は約170秒、この余震はM7以上で5回、M6以上で73回という、すさまじいものであった。津波も、浸水高や遡上高において、想定(三陸沖北部、宮城県沖、明治三陸地震)をはるかに上回るものとなった。2ヶ月たった今も、緊迫した状況にある。「現場に行けば優先順位がわかる」と私は言い続けているが、現場からの危機突破対応を強めなければならない。

中央防災会議では「今後の海溝型大規模地震への備え」を課題としてあげているが、今回の東日本大震災を踏まえての具体化を急がなければならない。

首都直下型は火災
まず「首都直下地震」への対応だ。M7クラスの地震が30年以内に70%程度の確率で起きる。東京湾北部地震M7.3が、冬、18時、風速15m/sで発生した場合、「建物の全壊・焼失約85万棟」「死者数約11,000人」という。東日本大震災は津波被害、加えて原発事故だが、首都直下の場合はとにかく火災だ。私は東京では、今回の震災とは頭を切り替え、火災対策、建物の耐震化、救命ライフラインに力を注がなければならないと思う。さらに発災時の道路は消防・警察さらには自衛隊などの救命作業が進むよう(今回のひどい渋滞を教訓に)、また津波と液状化による石油タンク破損による火災への対策など、今回の東日本大震災で得た教訓を加えていくことが大切だ。

次に相模トラフだ。これは首都直下型のM7クラスではなく、海溝型のM8クラスの地震となる。関東大震災(1923年)型だ。歴史的にみて、200?300年周期といわれるために備えの緊要性がいわれていないが、今から準備を始めることだ。

東海・東南海・南海地震への対応
問題は、東海・東南海・南海地震だ。

東海地震は30年以内の地震発生確率は87%、東南海地震は70%程度、南海地震は60%程度の予測だ(いずれも平成15年)。

じつは、この南海トラフの3つの地震は、おおむね100~150年の間隔で発生しており、しかも1605年の慶長地震(M7.9)も、1707年の宝永地震(M8.6)も、1854年の安政地震(安政東海地震(M8.4)が起きて、32時間後に安政南海地震(M8.4)が起きている)もいっしょに起きた3連動地震という特徴を持つ。しかし、1944年に東南海地震(M7.9)が起き、1946年に南海地震(M8.0)が起きたのに、いまだ東海地震だけが起きていない。安政地震から数えると空白域156年であり、歪みが蓄積されている。東海地震(想定M8)が懸念される理由はここにある。それゆえに、とくにこの20年、中央防災会議をはじめとして、被害想定も出され、対策もとられてきた。

私は問題とすべきは、東海地震そのものを越え、M8.6の宝永地震のような巨大3連動地震だと思う。菅総理は「東海地震が30年で87%の可能性」と87%という数字で危機意識をあおっているが、そうではない。東日本大震災からみて、M8.6規模の3連動地震に備えようというのが、国を守るべき者の言うべき責任ではないのか。静岡県や高知県など地方自治体がこうした不安を払拭しようと、3連動の安政地震を考えて防災計画の見直しをしようとしているが、国が後手後手でどうするのだ。前提とすべき地震そのものが間違っている。しかも、大事なことは、そうした議論を丁寧に、科学的知見をもって、今回の東日本大震災を教訓として徹底的に行い、法治国家としての仕組みに基づいて断固たる対策に踏み出すことだ。「思い付き」「言いっ放し」のパフォーマンス政治はやめよ。そう強く思っている。

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